天野康景

天野康景

天野康景（あまの やすかげ）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将・大名であり、徳川氏の家臣として活躍しました。駿河国興国寺藩の初代藩主としても知られています。

生涯

天文6年（1537年）に天野景隆の子として生まれました。幼少の頃より徳川家康の小姓として仕え、家康が人質となっていた時期も行動を共にしました。永禄6年（1563年）の三河一向一揆では、一向宗門徒である天野一族の中にも一揆に加担する者がいましたが、康景は家康方として忠義を尽くし、その功績を認められました。

本多重次、高力清長と共に三河三奉行と称され、その中でも康景は「どちへんなきは天野三郎兵衛」と評されました。これは、清長が寛大、重次が剛毅であるのに対し、康景は慎重でそつがない人物であったことを示しています。天正14年（1586年）には甲賀忍者の統率を任され、2,200貫の所領を与えられました。

家康が関東に移封されると、康景は江戸町奉行に任じられ、下総国内に3,000石を与えられました。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは江戸城の留守居役を務め、その功により7,000石を加増され、1万石の所領を有する興国寺藩主となりました。藩主としては、領内の農政や治水工事に尽力しました。

しかし、慶長11年（1607年）に領民が康景の貯えていた竹木を窃取した事件が発生します。家臣が盗人を殺傷したことが問題となり、本多正純が家康の命を受け康景と交渉しましたが、正純が下手人の引き渡しを求めたことに康景は激怒、慶長12年（1607年）に城地を放棄し、一族と共に出奔するという事態に発展し、改易処分となりました。

その後、小田原領の西念寺に入り、慶長18年（1613年）に77歳で死去しました。子・康宗は後に赦免され、天野家は1,000石を知行する旗本として存続を許されました。

登場作品

江〜姫たちの戦国〜（2011年、演：鶴田忍）

参考文献

新井白石『新編藩翰譜』 第5巻、人物往来社、1968年。
煎本増夫『戦国時代の徳川氏』新人物往来社、1998年。ISBN 4-404-02676-5。
本多隆成『定本 徳川家康』吉川弘文館、2010年。
三浦俊明 著「三河三奉行について―本多作左衛門を中心として―」、高柳光寿博士頌寿記念会 編『戦乱と人物』吉川弘文館、1968年。
宮本義己「三河三奉行の実像に迫る」『歴史読本』第52巻、第3号、新人物往来社、2007年。
村上直「徳川家臣団事典」『歴史読本』第27巻第1号、新人物往来社、1982年。
渡辺誠「家康を支えた戦略集団I」『徳川家康―四海統一への大武略』学習研究社〈歴史群像シリーズ11〉、1990年。ISBN 4-05-105148-X。

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