延年

延年とは

延年（えんねん）とは、寺院における大法会の後、僧侶や稚児によって演じられた日本の伝統芸[[能]]です。単一の芸能ではなく、舞楽、散楽、台詞のやり取りがある風流、地方色豊かな歌舞音曲、猿楽、白拍子、小歌など、貴族的な芸能と庶民的な芸能が混ざり合った複合的な芸能を指します。

歴史

正確な起源は不明ですが、平安時代中期頃から行われていたとされています。能の原型である猿楽とは深い関わりがあり、互いに影響を与え合いましたが、どちらが先に発生したかについては諸説あります。初期には、下級僧侶や稚児が法会や貴族の来訪の際の余興として演じていたと考えられています。次第に寺院での催しとして人気を博すようになり、観客を楽しませるために様々な芸能を取り入れるようになりました。演者も芸に熟達した僧侶が中心となっていき、彼らは「遊僧」や「狂僧」と呼ばれました。

「延年」という言葉は、室町時代の書物『庭訓往来』に「詩歌管弦者遐齢延年方也」とあることに由来し、長寿を祈る意味合いが根底にあるとされています。

鎌倉時代から室町時代にかけて盛んに行われ、特に祭礼における延年は大規模化していきました。演劇的な要素を持つ「延年風流」では、二階建ての舞台装置や移動可能な山車のようなものが使われることもあり、その舞台装置は後の歌舞伎にも影響を与えたとする説もあります。

室町時代以降は徐々に衰退し、江戸時代にはほとんど行われなくなりました。この背景には、武家階級が能を手厚く保護したことなどが挙げられます。現在では、岩手県や栃木県など一部の寺社でわずかに残るのみとなっています。現存する延年の曲は44曲です。

延年の舞

延年で演じられた舞は「延年の舞」と呼ばれ、他の芸能に取り入れられることもあり、そこから当時の延年の様子を窺い知ることができます。例えば、謡曲『安宅』では、弁慶が男舞として延年の舞を踊る場面があり、この『安宅』を基にした歌舞伎十八番の『勧進帳』でも、弁慶役が延年の舞を舞う場面が見どころの一つとなっています。

現在延年が行われている寺社・地域 (2012年3月時点)

毛越寺（毛越寺の延年） - 岩手県西磐井郡平泉町（国の重要無形民俗文化財）
白山神社（小迫の延年） - 宮城県栗原市（国の重要無形民俗文化財）
安久津八幡神社 - 山形県東置賜郡高畠町
輪王寺 - 栃木県日光市
箱根神社 - 神奈川県足柄下郡箱根町（2007年復活）
日吉神社（根知山寺の延年） - 新潟県糸魚川市（国の重要無形民俗文化財）
長滝白山神社（長滝の延年） - 岐阜県郡上市（国の重要無形民俗文化財）
厳島神社 - 広島県廿日市市

関連項目

portal:舞台芸術
稚児

もう一度検索