敦賀港駅

概要

敦賀港駅は、福井県敦賀市金ヶ崎町に位置していた日本貨物鉄道（JR貨物）の貨物駅です。かつては北陸本線から分岐する貨物支線、通称「敦賀港線」の終着駅として機能していました。特に戦前は、敦賀港に寄港する船舶との接続を目的とした「ボート・トレイン」と呼ばれる旅客列車も運行され、国際連絡運輸の重要な役割を担った歴史を持っています。時代の変遷とともに貨物輸送に特化し、2009年には貨物列車の運行が終了。その後はオフレールステーションを経て、2019年に鉄道駅としては正式に廃止されました。関連する貨物取扱施設も、2025年3月をもってその役目を終える予定です。

歴史

この地の駅は、明治15年（1882年）3月10日に「金ヶ崎駅」として開業しました。当初は旅客・貨物両方の扱いがありましたが、明治30年（1897年）9月20日には旅客営業を廃止し、金ヶ崎貨物取扱所に降格となります。その後、明治41年（1908年）3月25日に再び駅に昇格。特に明治45年（1912年）6月15日からは、ウラジオストク航路の発着に合わせて限定的に旅客輸送を再開し、国際連絡運輸の拠点としての性格を強めました。大正8年（1919年）1月11日には、名称が「敦賀港駅」と改められます。

昭和に入ると、昭和7年（1932年）9月20日に敦賀新港駅までの貨物支線が開通。昭和14年（1939年）11月15日には、日満連絡船「はるびん丸」に接続する国際列車が運行を開始するなど、大陸との重要な結節点として機能しました。しかし、昭和15年（1940年）頃からは第二次世界大戦の影響などを受け、旅客列車の運行は廃止されていきました。昭和18年（1943年）4月1日には、敦賀新港駅を当駅に併合しています（敦賀新港駅の設備自体は、構内側線扱いとして昭和55年頃まで残存していました）。

戦後、正式な旅客営業は昭和62年（1987年）3月31日に廃止されました。翌日の国鉄分割民営化に伴い、当駅は日本貨物鉄道（JR貨物）が継承します。平成期には、観光イベントが開催される際に臨時で旅客列車が運行されることもありました。

平成21年（2009年）4月1日、貨物列車の運行が終了（前日限り）。駅設備の一部は、鉄道輸送に代わるトラック輸送拠点である敦賀港オフレールステーション（後に敦賀港新営業所と改称）として活用が図られました。しかし、平成31年（2019年）4月1日には敦賀港線自体が正式に廃線となり、駅としては廃駅となります。敦賀港新営業所はその後も存続しましたが、令和7年（2025年）3月15日のダイヤ改正をもって廃止されることが決定し、これにより敦賀港におけるJR貨物の貨物取扱は全て終了することとなります。

駅構造と取扱貨物

鉄道駅としての最晩年は、1面のコンテナホームと、列車運行時に使用された荷役線1本、その他側線などが存在する構造でした。かつては、駅の北側にあった金ヶ崎山を抜けて、敦賀セメント敦賀工場へと至る専用線があり、セメントの発送が行われていました。また、昭和18年に併合された敦賀新港駅への側線跡も、昭和55年頃まで残っていましたが、周辺の再開発により現在はほとんど痕跡がありません。児屋川を渡っていた橋台の一部が残っているのみです。

敦賀港駅が貨物駅として運用されていた末期には、12ftコンテナや20ft大型コンテナなどのコンテナ貨物を取り扱っていました。また、産業廃棄物や特別産業廃棄物の取扱許可も得ていました。昭和期には、車扱貨物も扱っていた時期があります。列車の運行には、最後の運行日までタブレット閉塞が採用されていました。

貨物列車廃止後、敦賀港新営業所（旧オフレールステーション）は、南福井駅との間でトラック便を運行し、敦賀地域と鉄道貨物網を結んでいました。末期には、一日あたり10本以上のトラック便が往復していました。

廃止後の状況と再活用への模索

貨物列車の休止後、敦賀港周辺では港湾機能の拡充が進み、平成22年（2010年）秋に多目的国際ターミナルが開港するなど、コンテナ貨物の取扱量が増加しました。これを受けて、敦賀市は既存設備の改修によるモーダルシフトの推進や、関西・中京に近い立地を活かした物流拠点としての可能性を模索してきました。また、周辺に点在する観光資源との連携や、市民広場の整備にあわせた敦賀港線の跡地活用についても検討が進められています。

特に、鉄道遺産を活用した観光振興の動きが見られます。敦賀市は、かつて敦賀駅で使用されていた転車台を中心とした鉄道遺産整備計画の原案を示しており、福井県も敦賀港駅周辺での調査を行い、転車台の移設や太陽光パネルの設置により、蒸気機関車牽引の客車を約330メートルの距離で運行可能であるとの構想を明らかにしています。整備検討エリアはJR貨物所有の土地が大部分を占め、静態保存されているSL（C58形212号機）の活用や、人道の港 敦賀ムゼウムの機能移転拡充、さらに保存されている気動車（キハ28形）との連携、そして将来的な北陸新幹線の車庫との連携まで視野に入れた検討が行われています。

しかし、これらの再活用計画は、JR貨物が敦賀港線全線の鉄道用地の買取りを求めているのに対し、福井県と敦賀市が購入費用を問題視しており、計画の具体的な進展を阻む要因となっています。また、既に一部の踏切設備が撤去されたり、線路跡地に北陸新幹線の橋脚が建設されたりしており、鉄道としての復活は困難な状況です。

駅周辺と鉄道記念館

敦賀港駅周辺は現在、港湾観光エリアとして整備されており、周辺にはきらめきみなと館、金崎宮、旧敦賀港駅舎を復元した敦賀鉄道記念館などがあります。敦賀鉄道記念館は、昭和期の国際連絡運輸時代に使用された駅舎を平成11年（1999年）の博覧会に合わせて復元したもので、実際の敦賀港駅の跡地とは異なる場所に建設されていますが、敦賀港と鉄道の歴史を紹介する施設として一般公開されています。駅の南側には敦賀海上保安部が位置しています。なお、現在のフェリーターミナル（敦賀新港）は、当駅からやや北に離れた場所にあります。

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