新撰朗詠集

新撰朗詠集について

新撰朗詠集（しんせんろうえいしゅう）は、日本の朗詠や詩歌に関する重要な歌集であり、平安時代の文化を反映した作品です。本書は上下2巻から成り、藤原基俊（1060年 - 1142年）の撰によるもので、成立時期は不明ですが、鳥羽天皇在位中の1107年から1123年の間に編纂されたと考えられています。成立年は1135年以前であると確実視されています。

構成と特徴

この歌集は、藤原公任の『和漢朗詠集』（1013年頃成立）を参考にして編纂されており、収載された作品は和歌と漢詩から成り立っています。特に和歌と漢詩の配列や編成に関して、藤原公任の影響が見受けられます。全体的に、朗詠に供された作品は様々な四季や雑題に基づいて分類され、上巻は春、夏、秋、冬の四時部、下巻は雑題部の5部に分かれています。各部はさらに細かく分けられ、それぞれに相応しい漢詩の優れた句や和歌が収められています。

収載された漢詩は540句、和歌は203首に及び、特に『文選』や『千載佳句』、『和漢朗詠集』から多くの影響を受けています。和歌については、特に『後拾遺和歌集』が多く参照されています。収録されている詩歌の中では、白居易や源順、菅原道真といった著名な詩人の作品が多く見られます。

詩歌の傾向

新撰朗詠集に収載されている詩歌は、多くが一条天皇時代の穏やかで洗練された作風を反映しています。ただし、中国詩人による作品は減少し、日本の詩人による作品が増加していることが特徴です。そのため、新撰朗詠集の文学的価値は高いものの、編者である藤原基俊の権威や知名度は藤原公任に及ばず、影響力も公任が編纂した『和漢朗詠集』には及びません。

この書集は、中世の軍記物や謡曲などさまざまな場面で引用され、吟唱の題材として広く親しまれています。次第に、和漢の詩歌を取り入れた文化が成熟し、後世に大きな影響を与えました。

書跡と刊行

藤原基俊自らが手書きで仕上げた巻子本の形式を持ち、その装飾には雲紙に金銀の切箔を撒き、銀泥で花鳥を描いています。このような仕上げは、彼の個性的な書風を示すものであり、当時の詩歌収集の方法や意識を反映するものです。

本書は1984年に二玄社から『日本名跡叢刊 新撰朗詠集 巻上・下』として刊行され、また、2011年には佐藤道生と柳澤良一による注解付きの『和漢朗詠集／新撰朗詠集 和歌文学大系47』が明治書院から出版されています。

参考文献

読者が新撰朗詠集のさらなる理解を深めるためには、岩橋小弥太の著書「朗詠」や『日本歴史大辞典第9巻 み-わ』などを参照することが有益です。また、「日本と中国の書史」を通じても、平安時代の書の文化を学ぶことができるでしょう。

新撰朗詠集は、ただの歌集ではなく、当時の文化や価値観を知るための貴重な資料であり、文学愛好家や研究者にとって興味深い存在です。

もう一度検索