月の輪古墳

月の輪古墳の概要

月の輪古墳（つきのわこふん）は、岡山県美咲町飯岡の標高320メートルに位置する大平山山頂に、5世紀前半に築かれた円墳です。直径約60メートル、高さ10メートルのこの古墳は、地域集団の首長の墓であると考えられています。中腹には1メートルの段が設けられており、北側には造り出しがあります。また、墳頂の平坦部は直径17メートルで、ここには木棺が2基も存在しました。

古墳の斜面は角ばった石で葺石が敷かれており、墳頂や段上、そして裾の周囲には、円筒埴輪や朝顔形の埴輪が配置されていました。1953年8月から12月にかけて、岡山大学の近藤義郎助手を中心に地元の住民や教師、学生たちによってこの古墳の発掘調査が行われました。調査は周辺地域の古墳と月の輪古墳の全面的な発掘を目的とし、弥生時代以降の生産力の高まりや、前期古墳の歴史的な性格について理論的に立証するための重要なステップとなりました。

この発掘活動は「月の輪方式」として注目され、学術的、教育的、そして地域の運動としても名を馳せました。調査結果は1954年にスライドや記録映画としてまとめられ、『月の輪教室』という文集に記録されています。また、月の輪古墳は1959年に岡山県指定史跡に選ばれました。

発掘によって、墳頂部に位置した2基の木棺のうち、中央の木棺からは、全長565センチメートルの男性とされる遺骸や、首飾り、鏡、鉄製短甲、革製の草摺、刀、剣、鉄と銅の鏃といった副葬品が出土しました。もう1基の南側の木棺からは、全長310センチメートルの女性の遺骸や、同様に首飾り、漆塗り竹櫛、鏡、刀、剣、鉄針、石釧が見つかりました。さらに北側裾の造り出しからも木棺粘土槨が見つかりましたが、中は空でした。

出土品は1974年に飯岡地区に建設された文化財収蔵庫（月の輪郷土資料館）に保管され、1984年に岡山県指定重要文化財に指定されました。地域では毎年8月15日の頃に「月の輪踊りの夕べ」が行われ、月の輪古墳の発掘調査を記念する行事として親しまれています。

所在地と歴史的背景

月の輪古墳は岡山県久米郡美咲町の飯岡に位置しています。この地域は岡山県の中東部にあり、吉井川と吉野川の合流地点付近が中心です。弥生時代中期以降、開拓が進み、人々が定住する地域が広がりました。特に扇状地や約300メートルの吉備高原などには、多くの弥生時代の遺物が発見されています。

後期には、特に湿地帯の水田化が始まりました。この月の輪古墳が位置する飯岡上地区は、山塊や丘陵地、扇状地に囲まれており、古墳時代の集落遺跡も数多く見つかっています。古墳時代では、平地の開墾が進められ、人々の集団を強固にする役割があったとされ、月の輪古墳のような首長の墳墓が築かれる背景となりました。

地域に集中して存在する古墳群の中には、既知のものだけで22基があります。その中には、弥生時代後期の小規模な古墳から、月の輪古墳や釜の上古墳のような大型古墳までが存在します。月の輪古墳は、地域の歴史を物語る重要な文化財として、今後も多くの人々に語り継がれていくことでしょう。

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