月報

月報：多様な情報源としての役割

月報とは、1か月を単位として定期的に作成・発行される報告書、あるいは報告書的な性格を持つ出版物を指します。発行頻度から見ると、1年単位の年報、四半期単位の四季報、1週間単位の週報、毎日発行の日報などとの対比で理解できます。特に、データ集のような性格を持つ出版物でこの名称がよく用いられます。企業においては、月次報告書を「月報」と呼ぶケースも見られます。

多様な月報の形態

月報は、その発行主体や内容によって様々な形態を取ります。

1. 政府機関等の公式報告書:
政府やそれに準ずる組織が発行する統計データや政策に関する報告書が多く含まれます。例えば、『司法統計月報』（最高裁判所）、『人口動態統計月報』、経済産業省発行の『化学工業統計月報』などが挙げられます。かつて存在した『満鉄調査月報』なども、このカテゴリーに含まれます。

2. 判例集や専門誌:
裁判関連の判例集として、『行政裁判月報』『刑事裁判月報』『家庭裁判月報』『訟務月報』などがあります。特定の組織が発行する機関誌や会報も月報と呼ばれる場合があります。例えば、『出版月報』（全国出版協会）、『天文月報』（日本天文学会）、『化繊月報』（日本化学繊維協会）などが該当します。その他、新聞業界関連の『新聞月報』、経済情報誌の『酒類食品統計月報』など、多様な分野で月報が発行されています。

3. 文学全集の付録:
月報という名称は、文学全集などの書籍に付属する別冊小冊子に対しても用いられます。これは、1920年代後半、改造社や春陽堂が企画した文学全集で始まったとされています。これらの出版社は、購読者獲得のため、毎巻に付録として小冊子（「改造社文学月報」「春陽堂月報」など）を同梱し、作家に関する逸話や研究ノートなどを掲載しました。その後、岩波書店漱石全集にも月報が添付されたことから、この慣習は日本の出版界に定着しました。

しかし、必ずしも月刊で発行されるわけではなく、「付録」「栞」など、別の名称が用いられる場合もあります。「新釈漢文大系季報」や「史料纂集会報」のように、季刊や機関紙としての役割を果たすものもあります。また、「決定版梶井基次郎全集」の「檸檬通信」や「水木しげる漫画大全集」の「茂鐵新報」のように、独立したタイトルを持つ月報も存在します。

月報の内容と意義

月報には、その巻や叢書に関連した様々な資料が掲載されます。研究ノート、学術的随筆、年譜、目録、伝記的回想、編集ノート、執筆者紹介、正誤表、総目次、他の巻の広告などが含まれます。これらの情報の中には、他に収録されない貴重な研究成果が含まれることも多く、研究者にとって必読書とされるものもあります。しかし、図書館では紛失や破棄されるケースも少なくありません。

月報に掲載された長編記事が、後に単行本として出版されるケースも少なくありません。例えば、石川淳が岩波書店版鴎外全集に掲載したエッセイが『前賢余韻』としてまとめられたり、平凡社が中国古典文学大系の月報記事から『中国古典文学への招待』を編纂したりした例があります。近年でも、講談社文芸文庫や新潮文庫が、個人全集の月報記事を集めた書籍を発行しています。

このように、月報は多様な形態と内容を持つ重要な情報源であり、その歴史や役割を理解することは、それぞれの分野の研究に役立つでしょう。しかし、専用の索引などが存在しないため、アクセスや情報の整理には課題が残されています。

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