本庄川

本庄川：宮崎の自然と歴史を育む清流

本庄川は、宮崎県を流れる一級河川で、大淀川に注ぐその姿は、豊かな自然と歴史を今に伝えています。小林市に源を発し、東諸県郡綾町、国富町、そして宮崎市へと流れ下る本庄川は、上流域では綾南川とも呼ばれ、その流域は美しい景観と貴重な生態系を誇ります。

豊かな自然環境：原生照葉樹林と多様な生態系

本庄川上流域は、日本有数の原生照葉樹林帯が広がり、多様な動植物が生息する豊かな生態系を形成しています。特に、大淀川との合流点より上流では、川幅が広く蛇行した河川が、河跡湖やワンドなどの止水域を作り出しています。

これらの水辺には、ミズキンバイなどの絶滅危惧種を含む様々な水生植物が生育し、ヨシやツルヨシ、オギなどの群落も見られます。また、オオカナダモの群落も確認されており、多様な魚類や鳥類の生息地となっています。川底は浮石が多く、アユの産卵場としても重要な役割を果たしています。瀬や早瀬、淵が複雑に組み合わさった流れは、生き物たちの多様な生息環境を支えています。

綾の照葉樹林と綾川湧水群：水源の恵み

本庄川流域、特に綾北川を挟む国有林には広大な照葉樹林が広がり、水源涵養林として重要な役割を担っています。この照葉樹林地帯からは無数の湧水が湧き出し、本庄川と綾北川へと流れ込んでいます。

これらの湧水群は、1985年に「綾川湧水群」として名水百選に選定され、本庄川の清流を育む源となっています。この豊かな水環境は、周辺地域に潤いを与え、人々の生活を支えています。

歴史と文化：水運と交易の中心地

本庄川は古くから水運を利用した交通路として重要な役割を果たしてきました。中流域の綾町までは帆掛け舟が遡上可能であり、大正時代まで盛んに水運が行われていました。

綾町や国富町には船着場（勘場）が設けられ、物資の集散地として栄えました。特に国富町本庄は天領として栄え、江戸時代後期には日向国内の米価を左右するほどの影響力を持つようになり、多くの豪商が輩出されました。

しかし、1869年の「本庄商会所崩れ」によって、これらの豪商は倒産しました。それでもなお、1880年時点においても国富町本庄は「富豪が多く、貧しい人が少ない」と評されるほど裕福な地域であったと言われています。

本庄川と人々の暮らし：ダムと河川プール

本庄川流域では、洪水調節や灌漑、上水道供給などを目的とした綾南ダムが建設されています。また、昭和61年度には「本庄川河川プール」が手づくり郷土賞（ふれあいの水辺）を受賞しており、地域住民にとって憩いの場ともなっています。

まとめ：未来へつなぐ本庄川

本庄川は、豊かな自然と歴史、そして人々の暮らしが一体となった、かけがえのない地域資源です。その美しい景観と貴重な生態系は、未来世代へと受け継いでいくべき大切な財産です。本庄川とその周辺地域を訪れることで、自然の恵みと歴史の重みを感じることができるでしょう。

参考文献

平部嶠南『日向地誌』1884年
綾郷土誌編纂委員会・編 『綾郷土誌』 綾町、1982年
榎本章 『国富の歴史』 国富町教育委員会、2001年
国富町郷土史編さん委員会・編 『国富町郷土史 上巻』 国富町、2001年

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