桃川

桃川株式会社（ももかわかぶしきがいしゃ）は、青森県上北郡おいらせ町に本社を構える、酒類の製造・販売を手がける企業である。その歴史は古く、江戸時代に百石地域の有力者であった三浦家が営んでいた清酒製造業を起源とする。明治時代に入り、1889年（明治22年）に村井倉松によって村井酒造店として本格的に酒造りを開始し、清酒「桃川」の製造・販売が始められた。

社名の「桃川」は、創業当時に酒造りの水として利用していた百石川（現在の奥入瀬川）の水に由来している。百石川の「百」の字を「桃」に変えて名づけられたとされ、現在も百石川の清らかな伏流水が仕込み水として用いられている。また、「いい酒は朝が知っている」というキャッチコピーを掲げ、品質へのこだわりを示している。製品の商標ラベルに記されている「桃川」の文字は、著名な洋画家であり日本画家でもあった小杉放庵の筆によるものである。

同社は長い歴史の中で組織再編も経験している。1944年（昭和19年）には、村井酒造店を含む地域の13の蔵元が統合され、二北酒造株式会社が設立された。その後、1984年（昭和59年）には、二北酒造が製造していた5つの銘柄のうち、「桃川」を除く4銘柄（鳩正宗など）が新たな会社として独立・分離し、二北酒造は現在の桃川株式会社へと社名を変更した経緯を持つ。

桃川株式会社の代表的な銘柄としては、大吟醸の「桃川」、大吟醸純米の「ねぶた」、そして吟醸純米の「杉玉」が挙げられる。これらの銘柄は、かつてのCMで「コクの桃川、キレのねぶた、うまさの杉玉」というフレーズで紹介され、それぞれの味わいの特徴が表現されている。

近年、同社の経営体制にも変化が見られた。2011年（平成23年）7月には、韓国の企業グループの傘下に入り、新会社に移行したことが明らかになった。さらに、2014年（平成26年）12月には、兵庫県灘五郷を代表する大手酒造メーカーである白鶴酒造が、桃川株式会社の株式を100%取得し、現在は白鶴酒造の完全子会社となっている。

品質の高さは、全国新酒鑑評会での多数の受賞歴によって証明されている。特に平成14酒造年度から平成29酒造年度にかけて、多くの金賞を受賞しており、平成29年には代表銘柄である「桃川」が大吟醸部門で金賞に輝いている。

桃川のCMは、特にその特徴的なCMソングで知られている。「♪it's so nice… 桃川〜♪」というフレーズで始まるCMソング「It's so nice Momokawa」は、ブレイク前のミュージシャン織田哲郎が作詞・作曲・歌唱を手がけたものである。この曲は1981年（昭和56年）から使用されており、現在も同社のCMで流れている。かつては織田哲郎バージョンに加え、異なる歌手や曲調のバージョンも存在した。近年主流の15秒CMではサビや最後のフレーズしか聴く機会は少ないが、桃川がスポンサーを務める青森放送のラジオ番組「魅惑のヒットパレード」内のCMでは、30秒のフルサイズ版が使用されている。織田哲郎自身、2019年のライブ配信でこの曲を披露し、当時のレコーディング以来歌っていなかったことや、30秒版がフルサイズであることを明かしている。過去には千昌夫や、1980年代後半には桜井真理亜が歌う別のCMソングも存在した。また、北海道のHBCラジオで放送されていた番組「ベストテンほっかいどう」内で流れた桃川のCMでは、当初吉田拓郎の「旅の宿」をアレンジしたCMソングが使われていたが、後に織田哲郎バージョンに変更されている。かつては、青森県観光物産館アスパムに設けられたブースで、桃川の過去のCMを視聴できた時期もあった。

同社は現在、青森放送のラジオ番組「魅惑のヒットパレード」の提供を行っている。過去には、青森放送テレビの「東奥日報ニュース」、青森テレビの「JNNフラッシュニュース」、青森朝日放送の「ABAニュース」といったテレビ番組も提供していた。

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