水前寺成趣園

水前寺成趣園：歴史と自然が織りなす熊本の大名庭園

熊本県熊本市中央区に位置する水前寺成趣園は、江戸時代に熊本藩主・細川氏によって造られた大名庭園です。通称・水前寺公園として親しまれ、約7万3000平方メートルの広大な敷地を誇ります。園内には、築山やそれに続く平坦地が広がり、これらの地形が富士山や東海道の景勝地を模しているという説もあります。

歴史：細川氏の庇護と時代の変遷

水前寺成趣園の歴史は、細川忠利が寛永13年（1636年）11月に国分の御茶屋の作事を開始したことに始まります。当初は、忠利に随従した僧・玄宅のために建てられた堂宇が「水前寺」と呼ばれていました。しかし、『肥後国志』によると、水前寺は寛文5年（1665年頃）に廃寺となり、寺領と御茶屋は熊本藩に没収されました。その後、看司宗悦が替地を賜り、玄宅寺が開創されています。

細川綱利の時代には、大規模な作庭が行われ、寛文10年（1670年）から寛文11年（1671年）にかけて水前寺御普請が進められました。完成した庭園は、桃山式の回遊式庭園で、陶淵明の詩『帰去来辞』の一節「園日渉以成趣」から「成趣園」と名付けられました。江戸時代中期には、「酔月亭」と呼ばれる御茶屋や馬場が造られ、園内の景観をさらに豊かにしました。

明治時代の廃藩置県後、官有地となった水前寺成趣園は、西南戦争で「酔月亭」が焼失し、園内も荒廃しました。しかし、旧藩士らの努力により、出水神社が園内に創建され、庭園は出水神社の社地として払い下げを受けることとなり、保存されることとなりました。

大正元年（1912年）には、酔月亭の跡地に「古今伝授の間」が移築されました。そして、昭和4年（1929年）12月17日には、国の名勝及び史跡に指定され、その歴史的価値が認められました。

園内：歴史と芸術の融合

園内には、歴史的建造物である「古今伝授の間」があります。これは、細川幽斎が後陽成天皇の弟・八条宮智仁親王に『古今和歌集』の奥義を伝授したとされる建物です。狩野永徳や海北友松の筆と伝えられる、貴重な装飾が見どころです。

観光情報：アクセスとイベント

水前寺成趣園は、熊本市電A系統・B系統水前寺公園停留場から徒歩6分、熊本桜町バスターミナルからもアクセス可能です。開園時間は季節によって異なります。入園料金は、大人400円、子供200円です。

毎年8月第1土曜日には、出水神社夏祭りの御神事として薪能が、春秋例大祭には武田流騎射流鏑馬が催されます。これらのイベントは、水前寺成趣園の魅力をさらに高める要素となっています。

関連情報：水前寺にまつわるもの

水前寺の名前は、歌手の水前寺清子さんの芸名や、園内の池で発見されたスイゼンジノリなど、様々なものに用いられています。また、くまもとアートポリス'92既存選定建築物にも選定されており、歴史的、文化的にも重要な場所であることが分かります。

水前寺成趣園は、歴史と自然、そして芸術が融合した、熊本を代表する観光地です。訪れる人々に、豊かな時間と感動を提供し続けています。

もう一度検索