浅野駅

浅野駅（あさのえき）

浅野駅は、神奈川県横浜市鶴見区末広町に位置する東日本旅客鉄道（JR東日本）鶴見線の駅です。JRの定める特定都区市内制度において「横浜市内」に含まれており、駅には「JI 05」という駅番号が付与されています。この駅の大きな特徴は、鶴見駅と扇町駅を結ぶ鶴見線の主要ルートから、海芝浦駅へ向かう支線（通称「海芝浦支線」）が分岐している点にあります。

歴史

浅野駅の歴史は、臨海部の産業発展とともに歩んできました。始まりは1926年（大正15年）3月10日、鶴見臨港鉄道が浜川崎駅から弁天橋駅までの区間を開通させた際、貨物専門の駅として開設されたことに遡ります。その後、地域住民の利便性向上に応える形で、1930年（昭和5年）10月28日には旅客の取り扱いも開始されました。

太平洋戦争中の1943年（昭和18年）7月1日、鶴見臨港鉄道は戦時体制下の「私鉄買収」により国有化され、鉄道省（後の日本国有鉄道）鶴見線の駅となりました。この国有化と同時期に、弁天橋駅から分岐していた鶴見川口駅への貨物支線が、浅野駅からの分岐に変更されています。

時代の流れとともに駅の形態も変化します。1971年（昭和46年）3月1日には無人駅化が実施され、利用者は自動券売機で切符を購入する形態となりました。貨物輸送についても見直しが進み、1982年（昭和57年）11月15日には鶴見川口駅への貨物支線が正式に廃止されました（ただし、側線としては1986年まで存続）。そして1986年（昭和61年）11月1日をもって、浅野駅での貨物取り扱いは完全に終了しました。かつては駅周辺にあったJFEエンジニアリング鶴見事業所や、隣駅である弁天橋駅近くの旭硝子京浜工場へ続く専用線が浅野駅から分岐しており、貨物輸送の拠点として重要な役割を担っていた時期もありました。

国鉄分割民営化に伴い、1987年（昭和62年）4月1日からは東日本旅客鉄道（JR東日本）の運営する駅となりました。その後、ICカード乗車券の普及に対応し、2002年（平成14年）3月22日にはSuicaが利用可能になりました。近年の変化としては、自動券売機の老朽化などを受け、2022年（令和4年）2月28日限りでその営業を終了しています。

駅名の由来

浅野駅という名称は、この地にかつて鉄道を敷設した鶴見臨港鉄道の設立者であり、浅野財閥の創設者としても知られる浅野総一郎氏の姓にちなんで命名されたものです。

駅構造

浅野駅は地上駅であり、鶴見線本線（扇町方面）と海芝浦支線の線路が駅の直前で分岐する構造となっています。ホームの配置は、扇町方面が島式ホーム1面2線、海芝浦方面が相対式ホーム2面2線という構成です。鶴見方面へ向かう列車は、扇町方面から来る列車と海芝浦方面から来る列車とで発車するホームが異なるため、乗り間違えには注意が必要です。ホームの幅にも違いが見られ、扇町方面のホームは比較的狭いですが、海芝浦方面のホーム、特に下り列車が使用するホームは非常に広々としています。

駅構内には、鶴見線本線に並行するように非電化の側線が設置されています。この側線は、不定期ながら新芝浦（東芝エネルギーシステムズ京浜事業所）を発着する貨物列車の機関車が方向転換を行うための機回し線として利用されています。

駅舎は、本線と支線のホーム間に挟まれるような形で位置しています。駅舎内にはJR東日本労働組合横浜地方本部が入居していますが、駅自体はJR東日本の直営駅ではなく、他の多くの鶴見線駅と同様に無人駅として運営されています。駅への入出場は簡易Suica改札機を利用します。駅舎は海芝浦方面の3番線ホームに直接接続しています。ホーム同士の移動は、全て構内に設置された複数の踏切を経由します。駅舎内には男女別のトイレが設けられており、浄化槽を用いた水洗式となっています。

国鉄時代には、3番線ホームに鳥小屋が設置されていたという珍しい過去があります。また、改札の外には駅周辺の工場に勤務する人々の退勤時間に合わせて短時間だけ営業する売店が存在しましたが、こちらは1990年頃に営業を終え、現在は撤去されています。

利用状況

浅野駅は鶴見線の中では比較的利用者の少ない駅の一つです。記録が公表されている最後の年である2008年度のデータによると、1日の平均乗車人員は894人でした。鶴見線本線に限ると、昭和駅、扇町駅に次いで3番目に利用客数が少ない駅となっています。無人駅であるため、2009年度以降の詳しい乗車人員に関するデータはJR東日本からは公表されていません。

駅周辺

浅野駅周辺は、工業地帯と住宅地が混在するエリアです。駅のすぐ近くにはJFEエンジニアリング鶴見事業所があり、かつては専用線が通じていました。また、広大な敷地を持つ入船公園は、地域住民の憩いの場となっています。工場跡地を改装して作られた撮影スタジオ、パイロッツ スタジオ ZONE IDも駅近くに位置しています。幹線道路である神奈川県道6号線（産業道路）が駅周辺を通り、車でのアクセスも可能です。その他、防災関連施設として横浜市鶴見消防署入船消防出張所も存在します。駅周辺にはバス路線も運行されており、公共交通機関の利用を補完しています。

隣の駅

東日本旅客鉄道（JR東日本）
鶴見線（本線）：弁天橋駅 (JI 04) - 浅野駅 (JI 05) - 安善駅 (JI 06)
鶴見線（海芝浦支線）：（弁天橋駅） - 浅野駅 (JI 05) - 新芝浦駅 (JI 51)

※海芝浦支線は弁天橋駅を起点としていますが、浅野駅以遠の区間を指すことが一般的で、運転系統上は浅野駅で本線と分岐します。

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