海の見える杜美術館

海の見える杜美術館：宗教と美術、そして絶景の調和

広島県廿日市市大野地区、瀬戸内海に面した丘陵地にある「海の見える杜美術館」。1981年、宗教法人「平等大慧会」の設立者である梅本禮暉譽氏（本名：梅本武）が、長年にわたる収集活動の成果を公開する場として開館しました。

多彩なコレクション：日本美術の粋を集めて

同館のコレクションは、中世から近代にいたる日本美術を幅広く網羅しています。特に、梅本氏とゆかりの深かった京都画壇の巨匠、竹内栖鳳とその門下生たちの作品群は、美術館の大きな魅力です。1985年には、思文閣から栖鳳関連資料を一括購入。これには、数千点にも及ぶ粉本、スケッチ、写真などが含まれ、作品制作の裏側を知る貴重な資料となっています。

日本画以外にも、歌川広重の花鳥版画をはじめとする浮世絵作品や、浮世絵に影響を与えた中国版画、古代から現代にいたる香水瓶コレクションなど、多岐にわたる分野の美術品が所蔵されています。

また、歴史的にも貴重な資料も数多く収蔵されています。『宋版 大般若波羅蜜多経』（600冊）、岩佐又兵衛工房の作品と伝わる『松村物語絵巻』（12巻）、『奈良絵本・源平盛衰記』（50冊）、与謝蕪村の『名士言行図』、『奥の細道画巻』といった国宝級の作品に加え、岩倉具視関係資料（1707点）は国の重要文化財に指定されています。

美術館の沿革と平等大慧会

美術館の前身は、1981年に開館した「王舎城美術寶物館」です。2005年に全面改装の上、「海の見える杜美術館」と改称されました。

美術館を運営する平等大慧会は、梅本武志氏（梅本禮暉譽氏）が1954年に姫路市で設立した宗教団体です。梅本氏は、幼少期より宗教に関心を抱き、神道、仏教など様々な宗教を学んだ後、法華経の大衆皆平等の大義に基づいて平等大慧会を設立しました。実業家としても成功を収め、梅本機械製作所を経営。戦時中には軍需産業にも携わっていました。

梅本武志氏の死後、現在は、氏の娘婿である梅本道生氏が教団の会長と美術館の館長を務めています。美術館周辺には、平等大慧会の関連施設である王舎城宝殿、本部道場、私塾の平等修学院などが所在し、鹿児島県には多宝佛塔、涅槃城といった施設もあります。

絶景と議論：瀬戸内海の眺望と景観問題

美術館のカフェからは、対岸の宮島や瀬戸内海を見渡すことができます。厳島神社の赤い鳥居もはるか彼方に望めます。しかし、この立地が問題視されているのも事実です。厳島神社の鳥居と海を挟んで位置していることから、鳥居の景観を損なうとの意見が多数寄せられています。

利用情報

所在地: 広島県廿日市市大野亀ヶ岡10701
開館時間: 10:00～17:00（入館は16:30まで）
休館日: 月曜日（祝日の場合は開館し、翌火曜日休館）、展示替え期間中、2月11日、5月7日、11月11日
入館料: 一般1000円、高校生・大学生500円、中学生以下無料（障がい者手帳をお持ちの方は半額、介添えの方は1名無料、20名以上の団体は200円引き）
駐車場: 無料（自家用車100台、バス10台）
レストラン: 敷地内にフレンチレストラン「SEIHO OMBRAGE」とお食事処「杜の休憩所」あり
アクセス: 山陽本線「宮島口駅」または広島電鉄宮島線「広電宮島口駅」からタクシーで約10分、山陽自動車道「大野インターチェンジ」から車で約10分

参考文献

田中日佐夫「現代宗教家の美術収集 梅本禮暉譽と王舎城美術寶物館」『現代の美術コレクター』日本経済新聞社、1995年
『聚美』編集部「美術館案内vol.7 海の見える杜美術館 名品と絶景を併せて鑑賞」『聚美』vol.7、青月社、2013年4月

図録

田中日佐夫監修『近代日本画の巨匠 竹内栖鳳とその門下生たち』海の見える杜美術館企画・発行、2005年9月
『浮世絵 江戸人自らの心と姿を写した万華鏡』海の見える杜美術館企画・発行、2007年9月
『海の見える杜美術館至宝展 The STORY 異彩のコレクター梅本禮暉譽の軌跡』海の見える杜美術館企画・発行、2009年

外部リンク

美術館公式サイト
教団公式サイト

もう一度検索