特殊警備隊

海上保安庁特殊警備隊(SST)



特殊警備隊(Special Security Team, SST)は、海上保安庁に所属する特殊部隊です。シージャック、毒ガス事案、テロなど、高度な専門知識と技術を必要とする特殊な海上警備事案に対処することを任務としています。

来歴



SSTの創設は、関西国際空港の建設と、それに伴う警備体制の強化が背景にあります。1980年代後半、関西国際空港の建設が進む中、過激派によるテロやゲリラ事件が頻発していました。そのため、1985年10月1日関西国際空港海上警備隊(海警隊)が設置されました。海警隊は、大阪府警察機動隊と連携し、海上からの警備を担当していました。1989年には、プルトニウム輸送船の護衛のため、プルトニウム輸送船警乗隊(警乗隊)が組織されました。この部隊には、海警隊からも隊員が参加し、アメリカ海軍Navy SEALsから特殊部隊としての訓練を受けました。1996年5月11日、海警隊と警乗隊が統合され、大阪特殊警備基地にSSTが発足しました。

編制



所掌



SSTの主な任務は、シージャック、化学兵器テロ、海賊行為、工作船事案、船内における爆発物処理密航麻薬密輸船の摘発などです。また、NBCテロ(核兵器、生物兵器、化学兵器)への対応も担当しており、特に西日本ではその中心的な役割を担っています。SSTは、警察のNBC対策部隊、爆発物処理班、刑事部突入班、特殊部隊(SAT)の機能を併せ持ち、海上での広範囲な任務を遂行します。

組織



SSTは、第五管区海上保安本部の大阪特殊警備基地に設置されており、運用は海上保安庁本庁警備課特殊警備対策室が行います。第一特殊警備隊から第七特殊警備隊までの7個隊で編成され、各隊は8名で構成されています。隊員は、救急救命士や危険物取扱の資格を持つ者もいます。また、7個隊のうち2個隊は爆発物処理・化学防護能力を備えています。SSTは、ヘリコプターからのリペリング降下、巡視艇による強行接舷、潜水による接近など、多様な方法で対象船舶に乗り込み、犯人を制圧します。突入時は自動小銃と拳銃で武装した4名ずつの編成が基本ですが、任務に応じて特別警備隊の支援を受けることもあります。SSTの隊員は、機密保持のため、海上保安庁職員名簿にも掲載されず、人事記録からも名前が消される措置が取られています。

装備



海警隊発足当初はS&W M19回転式拳銃を使用していましたが、Navy SEALsの訓練を経てシグ・ザウエルP228自動式拳銃が導入されました。また、H&K MP5A5/SD6短機関銃89式5.56mm小銃も装備しています。狙撃銃としては、64式7.62mm小銃や豊和M1500が使用されていましたが、後にマクミラン社製の対物ライフルが導入されました。SSTの装備ではありませんが、関西空港海上保安航空基地に配備されているサーブ340BやEC225LPヘリコプターは、SSTの移送も考慮した装備となっています。

活動史



SSTは、国内外で数多くの事案に対応しています。

1988年:ソウルオリンピック期間中、カーフェリーに警乗
1989年東シナ海で発生した船員暴動を鎮圧
1990年プルトニウム輸送船護衛のため、Navy SEALsから訓練
1992年プルトニウム輸送船「あかつき丸」を護衛
1996年:ハワイ沖で発生したマグロ漁船殺人事件に出動
1998年:東京晴海埠頭での観閲式で訓練展示
1999年:能登半島沖不審船事件で臨検準備
1999年マラッカ海峡で行方不明となった貨物船を捜索
2000年東シナ海で発生した船員暴動に対応
2001年:アメリカ同時多発テロ発生後、アメリカ空母の警備
2001年九州南西海域工作船事件に出動
2002年:江の島虚偽通報事件に出動
2002年:FIFAワールドカップ開催前に韓国海洋警察と合同訓練
2003年:PSI加盟国合同臨検演習で容疑船の制圧を担当
2008年:洞爺湖サミット開催前のテロ対策訓練に参加
2008年:シーシェパードによる妨害事件に対応
2009年高知県沖での覚醒剤密輸事件に対応
2010年海上保安庁観閲式で武装船を想定した訓練を初公開
2013年福島第二原子力発電所でのテロ対策訓練に参加
2014年小笠原諸島沖でのサンゴ密漁船に対応
2019年:大阪湾での化学テロを想定した訓練に参加

登場作品



SSTは、映画、テレビドラマ、アニメ、漫画、小説など、様々なフィクション作品にも登場しています。

映画・テレビドラマ:救命病棟24時
アニメ・漫画:S -最後の警官-』、『海猿
小説: 『感染捜査』、『交戦規則 ROE』

まとめ



海上保安庁特殊警備隊(SST)は、高度な訓練と装備を備え、日本の海を守るために様々な活動を行っています。国内外の事案に対応し、テロや犯罪から国民を守る重要な役割を担っています。

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