猫騙し

猫騙し（ねこだまし）

猫騙しは、相撲における奇襲戦法として知られています。この技術は、力士が立合いの瞬間に相手の目の前で両手を突き出し、掌を合わせて叩くことで相手の視界を奪い、予期しない隙を生じさせることを目的としています。相手力士に驚きを与え、自らが有利な体勢を確保するために用いるこの戦法は、特に通常の立合いでは対抗できない強大な相手に対して、一か八かの勝負として使われることがあります。

しかし、猫騙しにはリスクが伴います。成功すれば相手を圧倒できますが、失敗すると逆に大きな不利を被る可能性が高いのです。年配の力士や上位力士によっても試みられたことがあり、その実績は数多く存在しますが、これはあくまで相撲の戦法の一つであり、明確な決まり手とはみなされていません。つまり、猫騙しによって相手が倒れた場合でも、その結果は「つきひざ」や「腰砕け」として扱われます。

歴史的な使用例

猫騙しが歴史の中でどのように使用されてきたのか、その具体的な取組を見てみましょう。

• - 1899年5月場所：前頭四枚目の大見嵜が関脇梅ノ谷（後の横綱二代目梅ヶ谷）に対して猫騙しを試みました。
• - 1943年1月場所：前頭四枚目九州山が大関名寄岩に対して猫騙しを仕掛けました。
• - 1962年11月場所：前頭四枚目出羽錦が横綱大鵬に対して猫騙しを行いました。

平成に入ってからも、数人の力士がこの技を取り入れました。

• - 舞の海：1991年9月場所の前頭5枚目琴ヶ梅戦や、同年11月場所の千秋楽で前頭二枚目水戸泉戦などで実際に猫騙しを使用しました。
• - 皇司：2001年7月場所9日目に横綱武蔵丸戦においてこの戦法を使っています。

上位力士の中でも猫騙しが試された例がありますが、結果として成功には至らなかったケースも多いです。特に、三重ノ海や貴景勝が大関時代にこの技を使って横綱北の湖や照ノ富士に挑みましたが、いずれも敗北しました。このように、猫騙しには成功の喜びと失敗の痛みが共存しているのです。

近年の注目

2015年11月場所では、横綱白鵬が関脇栃煌山に対して猫騙しを2度試み、その勝利を収めました。この時、藤島審判長は「まさかという感じ、普通は小兵が奇襲でやるもの」と発言し、北の湖理事長からも苦言が呈されました。この発言は、猫騙しがあくまで特別な手段であることを示しています。

まとめ

猫騙しは、相撲界における独特の戦法であり、そのリスクとリターンが際立った技術です。歴史を通じて数回の成功や注目を集めてきましたが、決して常用される技ではなく、特殊な状況下での驚きの一手として位置付けられています。相撲の中での猫騙しの語源や背景を知ることで、より深くこの競技を楽しむことができるでしょう。

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