神明神社

神明神社：伊勢信仰と太陽神の光

神明神社は、日本の各地に点在する神社で、主祭神として天照大御神（あまてらすおおみかみ）を祀っています。伊勢神宮内宮（三重県伊勢市）を総本社とし、神明社、神明宮、皇大神社、天祖神社など、様々な名称で呼ばれています。「お伊勢さん」という通称も広く知られています。

全国に広がる神明神社：その歴史と信仰

神社本庁の統計によると、全国には約5000社もの神明神社があるとされていますが、中には約1万8000社という説もあります。祭神による分類では、全国の神社の中で伊勢信仰に分類される神社は2番目に多いとされています。

天照大御神は太陽を神格化した神であり、皇室の祖神とされていることから、古くから広く信仰を集めてきました。特に農耕儀礼と密接に結びついており、古代においては国家祭祀の斎場として、天皇のみが奉幣を許される重要な場所でした。

しかし、平安時代中期以降、朝廷の衰微や荘園制の成立によって、伊勢神宮を支えていた経済基盤が揺らぎ始めます。そこで、伊勢神宮の神主たちは、御師となって荘園の在地領主層に働きかけ、神宮への祈願を取り次いだり、神威を説いたりすることで、在地領主からの神領（御厨）の寄進を得るようになりました。

御厨として寄進された土地には、伊勢神宮の祭神が勧請されることが多く、神明神社はこのようにして各地に分布を広げていきました。仁科神明宮（仁科御厨）、神明社（榛谷御厨）、天津神明宮（東条御厨）などは、御厨に勧請された代表的な神明神社です。しかし、芝大神宮のように、御厨成立以前から存在していた神明神社もあり、これらは御師の活動拠点となっていた場所に成立したと考えられています。また、御師が東国へ配布した神宮大麻（お払い）を一時的に安置した場所が、宗教的な意義を持つようになり、神明社へと発展したケースもありました。

中世後期になると、御師の檀那は上級武士層から庶民層へと広がり、伊勢信仰は全国的に浸透していきます。特に京都では、「伊勢の神が飛来した」などとして、神領ではない場所にも伊勢神宮が勧請されるようになり、「今神明」「飛神明」などと呼ばれる神明神社が増加しました。

近世には伊勢信仰はさらに盛んになり、農民層にも広く浸透しました。天照大御神が太陽神であること、御師が檀那に農業に関連の深い神宮暦を配ったことなどもあって、国家鎮守の役割に加え、農業神としても信仰されるようになりました。そのため、新田開発の際には、その地の鎮守神として伊勢神宮が勧請されることが増え、神明神社の数はさらに増加していったのです。

神明神社の特徴：祭事、建築、名称

神明神社の祭事は、ほぼ伊勢神宮と同じです。神使は鶏であり、鳥居は主に直線的な神明鳥居が用いられます。建築様式は神明造であることが多いです。

「神明」という言葉は、天照大御神を指す場合と、単に「神」という意味で使われる場合があります。「天地神明に誓う」の「神明」は後者の意味です。明治時代の神社調査では、氏子が祭神を知らなかったり、「神」という意味で「神明」と答えた結果、天照大御神を祀る神明神社とされた例も多いとされています。また、明治時代には「神明宮」という名称を避けて、「天祖神社」や「神明社」などに改称した神社も多くありました。

全国各地の神明神社：代表的な例

岡田荘司らの研究によると、伊勢信仰に分類される神社は中部地方に多く、鎌倉時代の伊勢神宮の所領とほぼ一致する地域に集中しています。この記事では、全国各地の代表的な神明神社をいくつか挙げましたが、これはほんの一部です。北海道から九州、そして海外にまで、多くの神明神社が人々の信仰を集めています。それぞれの神社には、地域の歴史や文化が反映されており、それぞれの神明神社の持つ独自の趣や歴史を探るのも興味深いでしょう。

各地の神明神社は、天照大御神への信仰を伝え、人々の生活に深く根差した存在として、現在もその役割を担い続けています。 それぞれの地域の文化や歴史と結びついた神明神社を訪れ、その歴史と信仰について学ぶことで、日本の宗教文化の一端に触れることができるでしょう。

もう一度検索