竹内眉山

竹内眉山（たけのうち びざん）は、江戸時代後期の文化・文政期から嘉永期にかけて活躍した版元であり、浮世絵師としても知られています。天明元年（1781年）に生まれ、嘉永7年7月21日（1854年8月14日）に74歳で没しました。幼名は孫八といい、東一、竹孫、万宝などの号も使用していました。

江戸で質屋を営む竹内孫七の次男として生まれた眉山は、霊巌島塩町に住んでいました。当初は竹内孫八の名で地本錦絵問屋「保永堂」を経営しており、小さな版元でしたが、天保4年（1833年）から天保5年（1834年）にかけて、初代歌川広重の横大判錦絵揃物「東海道五十三次之内」を版行したことで一躍名を馳せました。この成功により、他にも広重の「近江八景」や、広重と渓斎英泉の合作である「木曽海道六十九次」など、数々の名作を世に送り出しました。

版元としての活動の傍ら、眉山は自らも絵筆をとり、四条派の影響を受けた人物画や風景画を制作しました。天保年間頃には、大判錦絵のほか、狂歌本や合巻の挿絵も手掛けています。

眉山の作品には、以下のようなものがあります。

『俳諧歌六々画像集』：天保3年（1832年）刊行の狂歌本。挿絵を担当。
『戯劇百人一首闇夜礫』：天保4年刊行の狂歌本。挿絵を担当。
『御大相志目多発鬻』：天保4年刊行の合巻。全四巻で、挿絵を担当。
『三国太郎再来伝』：天保6年（1835年）刊行の合巻。全六巻で、歌川国直、歌川国芳と共に挿絵を担当。
『職人尽花月集』：天保8年（1837年）刊行の絵本。挿絵を担当。
「江戸名所の内　隅田堤のさくら」：大判3枚続の錦絵で、広重風の風景画です。
「天竺美人図」：紙本着色の美人画。

これらの作品を通じて、眉山の多才な才能と、版元としての力量、そして絵師としての創造性が伺えます。特に「東海道五十三次」の成功は、彼の版元としての評価を不動のものとしました。また、自らも絵筆をとり、様々なジャンルの作品を手掛けたことは、彼の芸術に対する情熱と、その多岐にわたる関心を示すものでしょう。

竹内眉山の業績は、江戸後期の浮世絵界において重要な位置を占めており、彼の作品は、当時の人々の生活や文化を今に伝える貴重な資料となっています。

参考文献

日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）大修館書店、1982年
吉田漱『浮世絵の基礎知識』雄山閣、1987年
小林忠、大久保純一『浮世絵の鑑賞基礎知識』至文堂、1994年

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