箕子陵

箕子陵（きしりょう）について

箕子陵は、朝鮮民主主義人民共和国の平壌直轄市、牡丹峰区域にあった墓で、かつては朝鮮の重要な歴史的遺跡の一つとして位置付けられていました。箕子は、中国の殷王朝において政治家として活躍しており、特に紂王の叔父にあたることで知られています。彼は、自身の国、箕国（現在の山西省晋中市太谷区）に封じられたため、この名前がつけられました。

箕子の歴史と影響力

周王朝を創始した武王は、殷王朝を滅ぼした後、箕子を招いてその知識を重んじました。箕子の知識の広さに感嘆した武王は、彼を家臣として迎えることはせず、彼を朝鮮に封じる決定をしました。これにより、朝鮮侯として箕子は殷王朝の遺民を引き連れ東方へと旅立ちました。彼は、礼儀作法や農業、養蚕、機織りの技術を朝鮮に広め、その後、犯禁八条を実施することによって民の教育にも尽力しました。このように箕子が朝鮮に与えた影響から、彼は箕子朝鮮を築くことになります。

高麗や李氏朝鮮時代の箕子信仰

高麗以降、特に李氏朝鮮時代において、箕子は多くの尊崇を集めました。儒教を信奉する両班たちは、彼を朝鮮を教化した偉人として称え、平壌には彼にまつわる遺跡がいくつか建立されました。その中の一つが箕子陵であり、彼の偉業を称える象徴的な存在として機能していました。しかし、時代は変わり、日本の統治が行われることになると、朝鮮民族の間に民族主義的思潮が高まり、建国の神話が檀君にシフトするようになりました。これにより、古代中国にルーツを持つ箕子信仰は徐々に衰退していきました。それでも、箕子陵は当時の平壌府において観光地としての重要性を保ち、多くの人々が訪れる場所でした。

箕子陵の終焉

1959年、北朝鮮の政府は箕子陵について、「封建的支配階級の事大主義の産物であり、朝鮮民族への侮辱である」との理由から、金日成の指示に基づいてこの墓を破壊することとなりました。その跡地は後に凱旋青年公園として整備され、箕子陵は歴史の中で消え去ることとなっています。箕子陵の破壊は、民族の歴史を見直すことを促す一面もありましたが、同時に朝鮮民族が持つ多様な歴史と伝統を考慮する機会も失われました。

箕子陵は、古代から現代にかけて朝鮮民族の精神や文化を象徴する重要な遺跡であっただけでなく、歴史的な対立や衝突の世界をも反映しています。

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