芍薬甘草湯

芍薬甘草湯（シャクヤクカンゾウトウ）

芍薬甘草湯は、漢方医学において筋肉の痙攣や痛みを緩和するために用いられる代表的な方剤の一つです。出典は、中国後漢時代の医学書である『傷寒論』に遡ります。

効果と効能

芍薬甘草湯は、主に以下の症状に効果を発揮します。

下肢の痙攣性疼痛（こむら返り）: ふくらはぎなどの筋肉が急に痙攣し、激しい痛みを伴う状態。
胃腸の激しい痛み: 胃や腸の筋肉が痙攣することで起こる急な痛み。

この漢方薬の大きな特徴は、速効性があることです。服用後、平均して6分程度で効果が現れ始め、その効果は4〜6時間持続するとされています。そのため、急な痛みを和らげたい場合に適しています。また、人工透析を受けている患者さんのこむら返りにも用いられることがあります。透析中に足がつる場合は、透析前に服用することで症状を緩和できる場合があります。

臨床試験

肝硬変症患者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験において、芍薬甘草湯が筋痙攣の頻度や痙攣持続時間、痛みの程度を有意に改善することが確認されています。この結果は、芍薬甘草湯が特定の条件下での筋痙攣に対して有効であることを示唆しています。

組成

芍薬甘草湯は、以下の2つの生薬から構成されています。

芍薬（シャクヤク）: 4.0g
甘草（カンゾウ）: 4.0g

これらの生薬を一定の割合で混合し、煎じて服用します。

方解（名前の由来）

芍薬甘草湯の名前は、構成する2つの生薬、芍薬と甘草に由来します。このシンプルな構成が、この方剤の特徴を表しています。

禁忌・慎重投与

芍薬甘草湯には、以下のような禁忌事項があります。

アルドステロン症のある患者
ミオパチーのある患者
低カリウム血症のある患者

また、高齢者には慎重に投与する必要があります。

相互作用

以下の薬剤との併用には注意が必要です。

甘草含有製剤
グリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤
ループ系利尿剤
チアジド系利尿剤

これらの薬剤との併用により、偽アルドステロン症やミオパチーのリスクが高まる可能性があります。

副作用

芍薬甘草湯の服用により、以下のような副作用が現れることがあります。

重大な副作用: 間質性肺炎、偽アルドステロン症、鬱血性心不全、心室細動、心室頻拍、ミオパチー、肝機能障害、黄疸
その他の副作用: 発疹、発赤、瘙痒、悪心、嘔吐、下痢

特に、長期服用（60歳以上が30日を超える服用）により、低カリウム血症や偽アルドステロン症のリスクが高まるため、注意が必要です。

注意事項

高齢者、妊産婦、小児への投与は、安全性が確立されていないため、慎重に行う必要があります。

関連処方

芍薬甘草附子湯: 芍薬甘草湯に附子を加えたもので、体を温める作用が強化されています。

市販薬

芍薬甘草湯は、多くの製薬会社から一般用医薬品としても販売されています。

大正製薬: 大正漢方胃腸薬
ツムラ: 68番 芍薬甘草湯エキス顆粒
クラシエ: KB-68 芍薬甘草湯エキス顆粒
小林製薬: コムレケア
小太郎漢方製薬: コムロン
ロート製薬: 和漢箋 ツラレス

これらの市販薬は、こむら返りなどの症状緩和に利用されています。

芍薬甘草湯は、適切に使用すれば効果的な漢方薬ですが、副作用や禁忌事項も存在します。服用前に医師や薬剤師に相談し、指示に従って使用することが重要です。

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