護法

護法（ごほう）について

護法（ダルマパーラ、530年 - 561年）は、古代インドにおいて大乗仏教の発展に寄与した僧侶であり、特に唯識派の重要な学者として知られています。彼は南インドのパッラヴァ朝の大臣の家庭に生まれ、幼少期から優れた才能を発揮しました。

若き日の護法

護法は、その知識と能力が評価され、若くしてナーランダ僧院の学長に就任しました。この重要な仏教教育機関での役割は、彼の学問的な根基を形成し、多くの弟子たちを育てる場となりました。しかし、彼は29歳の若さで隠退を選び、その後の人生を静かに過ごしました。最終的にはブッダガヤで亡くなることになりますが、彼の学問は決して無に帰することはありませんでした。

唯識派の足跡

護法が特に注目されるのは、彼が唯識派の学者として重要な役割を果たした点です。唯識派は、心の働きや意識の本質に焦点を当てた思想であり、護法自身は世親（vasubandhu）の『唯識三十頌』への注釈を通じてその教えを広めました。この注釈により、護法の思想は後の世代に受け継がれることとなります。

伝承の流れ

護法の学説は弟子のシーラバドラ（戒賢）によってさらに発展しました。彼は護法の教えを受け継ぎ、次世代にも伝えることに尽力しました。シーラバドラの学問は最終的に玄奘を通じて、中国に伝わり、そこから慈恩大師基の『成唯識論』へと繋がっていきます。このように護法の影響は、インドを越えてアジアの広範な地域に波及し、唯識派の思想を深く根付かせました。

護法の意義

護法の生涯と業績は、唯識における理論の発展を支えただけでなく、仏教哲学全体に与えた影響も計り知れません。彼の思想は、心の働きや認識の仕組みに対する理解を深めるための重要な基盤を提供しました。彼の教えは現代においても、多くの学者や修行者によって探求され続けています。

護法の業績を知ることは、大乗仏教の発展の一端を理解する上で非常に重要です。彼の学問は、後に続く多くの仏教者たちに影響を与え、唯識派が持つ深い洞察は、現在でも多くの人々に支持されています。護法が描いた思想の道筋は、今なお多くの心に響き続けているのです。

参考文献

• - 『新版 インド仏教史』上・下（春秋社、2011年）

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