道路橋示方書

道路橋示方書について

道路橋示方書は、日本における橋や高架道路などの構造に関する技術基準を定めたものです。国土交通省がその基準を定め、社団法人日本道路協会が解説を加えて「道路橋示方書・同解説」として発行しています。一般的に「道示」と略されることもあります。

概要

この示方書は、道路法および道路構造令に基づき、橋や高架道路の構造に関する技術基準を定めています。道路法第30条第2項では、主要な構造物について、その構造強度に関する技術的基準を定めることができるとされており、道路構造令第35条第4項では、国土交通省令で構造の基準を定めることが規定されています。道路橋示方書は、これらの法令に基づいた「技術基準」であり、国土交通省の通達によって示されています。

道路法は、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道に適用されますが、道路法上の道路に該当しない林道や農道にも、実用上の観点から道路橋示方書が適用されています。最新版は2017年（平成29年）に改訂されました。

適用の範囲

道路橋示方書は、原則として支間200m以下の橋の設計と施工を対象としています。それ以上の規模の橋については、必要に応じて補正を行い準用することが可能です。また、横断歩道[[橋]]は適用範囲外であり、別途「立体横断施設技術基準」が定められています。

構成

道路橋示方書は、以下の5編で構成されています。

1. 共通編: 総則、設計に用いる荷重、材料、支承、伸縮装置、橋の記録などに関する規定。
2. 鋼橋編: 主に鋼で構成される橋梁の上部構造に関する規定。鋼とコンクリートを組み合わせた合成桁も対象。
3. コンクリート橋編: 主にコンクリートで構成される橋梁の上部構造に関する規定。
4. 下部構造編: 橋台、橋脚、基礎構造に関する規定。
5. 耐震設計編: 地震時における橋の安全性を確保するための規定。

平成29年の改訂では、以下の構成に見直されました。

1. 共通編
2. 鋼橋・鋼部材編
3. コンクリート橋・コンクリート部材編
4. 下部構造編
5. 耐震設計編

これにより、一部の記述が旧来とは異なる編に移動しました。また、入札制度改革に伴い、海外の設計・施工会社にも受注機会を与えるため、英語版（Specifications For Highway Bridges）も発行されています。

歴史

道路橋の基準整備は、1886年の「道路築造保存方法」制定に始まり、車両荷重が規定されました。その後、関東大震災を契機に、1926年に「道路構造に関する細則案」が制定され、橋の構造や設計方法、許容値などが規定されました。これが道路橋示方書の原型です。

1939年には、鋼橋を対象とした「鋼道路橋設計示方書案」が制定され、自動車荷重や前輪と後輪の荷重比率が定められました。この1:4の荷重比率は現在の示方書にも引き継がれています。

第二次世界大戦後の1956年には「鋼道路橋設計示方書」が制定され、自動車荷重が引き上げられました。その後、コンクリート橋や下部構造に関する基準も制定され、1972年に「共通編・鋼橋編」、1978年に「コンクリート橋編」、1980年に「下部構造編」「耐震設計編」が制定され、現在の道路橋示方書の体系が確立しました。

その後の改訂

道路橋示方書は、技術の進歩や社会状況を考慮し、おおむね7～8年ごとに改訂されます。しかし、車両制限令の改訂や阪神・淡路大震災などが発生した1990年代には、短期間で改訂が繰り返されました。

主な改訂内容:

1990年: 耐震設計手法として保有水平耐力法を導入。
1994年: 大型車の荷重を25tに引き上げ、活荷重をA活荷重とB活荷重に区分。
1996年: 兵庫県南部[[地震]]の被害を受け、耐震設計法を全面改定。
2002年: 性能規定への移行、耐久性に関する記述を追加。
2012年: 維持管理の配慮、東北地方太平洋沖地震の被災を踏まえた見直し。
2017年: 100年を標準とする設計供用期間を設定し、維持管理を規定。

道路橋示方書は、日本の道路網を支える上で不可欠な技術基準であり、橋の安全性と耐久性を確保するための重要な役割を担っています。

関連項目

橋
道路法
道路構造令
活荷重

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