長崎港駅

長崎港駅

長崎港駅は、かつて長崎県長崎市出島町に位置していた、日本国有鉄道（国鉄）長崎本線の駅です。この駅は、長崎本線の終着駅として、その歴史を刻みました。しかし、時代の流れとともに、その役割を終え、現在は廃駅となっています。

開業の背景と役割

長崎港駅は、1930年（昭和5年）3月19日に、上海航路との連絡を主な目的として開業しました。当時、中国への航路は重要な交通手段であり、長崎港駅は、その玄関口としての役割を担っていました。門司駅（現在の門司港駅）からの航路連絡列車（ボート・トレイン）が当駅まで乗り入れ、上海航路との接続を円滑に行うための重要な拠点でした。

長崎駅からの路線は、長崎港の海岸沿いを走り、出島岸壁（現在の長崎出島ワーフ付近）に位置する長崎港駅に到着しました。隣接する埠頭では、上海航路の船に乗り換えることができ、多くの人々や物資が行き交いました。

戦時下の変遷

1942年（昭和17年）11月、関門トンネルが開通すると、ダイヤ改正が行われ、特別急行列車「富士」が、航路運航日に限り、上り列車のみ当駅始発となりました。しかし、戦況が悪化するにつれて、「富士」は博多駅までに短縮され、上海航路も1943年（昭和18年）10月に事実上終焉を迎えました。

戦後、長崎港駅は旅客と貨物の両方を扱う一般駅として存続しましたが、旅客は「上海航路連絡列車によるものに限る」とされ、1946年（昭和21年）以降、時刻表への掲載はなくなりました。その後、実質的には貨物駅として運用され、一時的には工場勤務者向けの通勤列車が運行されたという記録も残っています。

1949年（昭和24年）には、当駅から南側の大浦川河口まで引き込み線が延長されました。将来的には、小ヶ倉や深堀方面への延伸計画もありましたが、実現には至りませんでした。

廃止とその後

貨物取扱量の減少に伴い、1982年（昭和57年）に当駅に発着する貨物列車が全廃されました。そして、国鉄分割民営化前日の1987年（昭和62年）3月31日、長崎港駅はついに廃止となりました。廃止時まで、長崎駅 - 当駅間は電化されることはありませんでした。

現在、長崎港駅の跡地および廃線跡は、遊歩道や公園として整備され、かつての面影を偲ぶことができます。

歴史

1930年（昭和5年）3月19日：開業。
1949年（昭和24年）11月25日：当駅より南側の大浦川河口まで引込線が延長。
1982年（昭和57年）11月14日：休止。
1987年（昭和62年）3月31日：廃止。

利用状況

旅客

1930年（昭和5年）：乗車2,846人、降車1,274人

貨物

1948年（昭和23年）：発送57,068トン、到着5,213トン
1949年（昭和24年）：発送70,654トン、到着70,704トン

駅周辺

長崎税関
出島
長崎電気軌道本線出島停留所

隣の駅

日本国有鉄道
長崎本線：長崎駅 - 長崎港駅

脚注

[参考文献]

長崎市役所総務部統計調査課 編『長崎市制六十五年史』長崎市、1959年3月。
川崎孝夫 編『鉄輪の轟き　九州の鉄道100年記念誌』九州旅客鉄道、1989年10月。
岡林隆敏『上海航路の時代』長崎文献社、2006年10月。ISBN 4888510350。
長崎市史編さん委員会 編『新長崎市史　第四巻現代編』長崎市、2014年3月。

[関連項目]

日本の鉄道駅一覧
ボート・トレイン

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