黄福

黄福（こう ふく）

黄福（1363年 - 1440年）は、明代に活躍した官僚です。字は如錫、号は後楽と称しました。彼の生涯は、明朝の成立から最盛期にかけての激動の時代と深く関わっています。

初期の官歴

1384年、郷挙により太学に入学し、官僚としての道を歩み始めました。洪武帝の時代には、項城県主簿、清源県主簿、金吾前衛知事、龍江左衛知事、龍江左衛経歴などの地方官を歴任し、着実に実務経験を積みました。

1398年、黄福は国家の大計について上書し、洪武帝にその見識を認められ、工部左侍郎に抜擢されました。その後、工部右侍郎に転じ、中央官僚としての地位を確立しました。

建文帝時代と永楽帝への帰順

建文帝の時代には、その信任を得ていましたが、燕王朱棣（後の永楽帝）が挙兵すると、奸党の一人として名指しされてしまいます。1402年、朱棣が南京に入城すると、黄福は降伏し、李景隆から奸党として非難されましたが、朱棣は不問に付し、工部右侍郎に復帰させました。その後、工部尚書に昇進し、永楽帝の時代も引き続き重用されることになります。

交趾（ベトナム）での活躍

1405年、工匠に対する非情な扱いを弾劾され、北京行部尚書に転出しましたが、後に事件に連座して一時的に降格しました。しかし、すぐに尚書の職に復帰し、ベトナム胡朝に対する遠征軍の糧食輸送を任されることになりました。

1407年、遠征軍が胡朝を滅ぼすと、黄福は交趾（ベトナム）の布政使司と按察使司の事務を管掌するよう命じられました。彼は、現地の税制が不公平であることを認識し、実情に合わせた減税を上奏しました。また、インフラ整備にも尽力し、衛所の設置や駅站の設置を提言し、交通の便を図りました。

さらに、開中法による塩の取引を通じて、商人に穀物を輸送させ、軍糧を確保しました。広西からの食糧輸送には、陸路の険しさを考慮して、広東からの海運を提案するなど、合理的な政策を実行しました。黄福は、交趾で戸籍を記録し、賦税を定め、学校を建て、官軍を置くなど、行政基盤の整備に大きく貢献しました。また、鎮守中官の馬騏が民衆を虐待した際には、これを抑え、不正を正そうとしました。馬騏から謀反の疑いをかけられましたが、永楽帝は黄福の忠誠心を疑いませんでした。

晩年

1424年、洪熙帝が即位すると、黄福は工部尚書として北京に召還され、皇太子朱瞻基（後の宣徳帝）の補佐を任されました。洪熙帝が死去すると、献陵の工事を監督しました。

1426年、馬騏がベトナム人を扇動して再び反乱を起こさせると、黄福は再び交趾に派遣され、行政を任されました。しかし、安遠侯柳升が敗死すると、黄福は交趾からの逃亡を図ります。反乱軍に捕らえられましたが、黎利の配慮により帰国を許されました。帰国後は、行在工部尚書となりました。

1429年、平江伯陳瑄とともに運河の水運の事務にあたり、1430年には戸部尚書に転じました。1432年には、その進言が宣徳帝に認められ、南京戸部尚書に転じました。1433年には、南京兵部を兼掌し、1435年には少保の位を加えられ、南京守備の襄城伯李隆を補佐しました。1440年1月5日、78歳でこの世を去りました。死後、太保の位を追贈され、諡は忠宣とされました。著書に『安南事宜』、『安南水程日記』、『黄福家集』などがあります。

黄福は、明代の激動期を生き抜き、官僚としてその手腕を発揮しました。特に、ベトナムにおける行政手腕は高く評価されています。彼の功績は、後の世にも語り継がれています。

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