あげまつ大橋

あげまつ大橋

あげまつ大橋は、長野県木曽郡上松町の木曽川に架かる、全長199メートルの美しいアーチ橋です。この橋は、国道19号の桟改良事業の一環として建設され、その特徴的なデザインと高度な技術が注目されています。

概要

この橋は、桟改良の起点部に位置し、かつては「桟1号橋」という仮称で呼ばれていました。桟改良は、国道19号の旧道区間が急峻な山間部を通過するため、落石の危険性が常に指摘されていました。1999年には実際に落石事故が発生し、通行止めを余儀なくされたため、抜本的な対策が必要と判断され、事業化されました。この改良事業では、上松町上松から木曽町福島下条に至る全長2.7キロメートルのバイパスが建設され、その中で、あげまつ大橋は木曽川を渡る重要な役割を担っています。

あげまつ大橋の建設地は、木曽川の急峻な地形のため、河川内に橋脚を設置することが困難でした。そのため、支間長が150メートルを超える曲線橋となりました。この建設難易度の高さから、中部地方整備局で初めてデザインビルド方式が採用されました。三井住友建設は、基本コンセプトとして「100年橋梁」と「自然との調和」を掲げ、耐久性、維持管理性、景観性に優れたコンクリートアーチ橋を採用しました。

詳細

橋の形式は、上路鉄筋コンクリートアーチ橋で、補剛桁にはプレキャストコンクリートの水平リブとプレキャストパネルによる上床版を持つPC箱桁が用いられています。この橋は、平面曲線が直線からクロソイド曲線を挟み、曲率半径335メートルの曲線へと変化する複雑な構造をしています。曲線の補剛桁を支持するために、アーチリブを平面的に曲線にするか、アーチリブの幅を広げるかの選択肢がありましたが、構造上の脆弱性や経済性の問題から、ねじり剛性が高く、鉛直材を削減できるPC箱桁が採用されました。また、曲線部分では、アーチクラウン部で張り出し床版が5メートルを超えるため、2.5メートル間隔でプレキャスト水平リブを設置し、その上にプレキャストPC板を敷設して、場所打ちコンクリートと一体化させることで、支保工が不要となり、施工性が向上しました。

架設工法には、通常長大アーチ橋で用いられる斜吊り工法ではなく、新メラン工法が採用されました。これは、国道19号が近接しているため、バックスティアンカーの本数が制限されるという制約があったためです。新メラン工法は、箱桁を横構・対傾構の撤去を必要としないため、工期の短縮に貢献しました。さらに、アーチ拱台とメラン材の接合部にはピン支承を採用し、アーチリブへの負担を軽減しました。

アーチ拱台は両岸で地盤が異なり、左岸は硬岩、右岸は古期崖錐堆積物でした。左岸側では直接基礎が問題なく採用されましたが、右岸側でも地盤の強度が高かったため、直接基礎の採用が可能となり、工期と費用の削減に繋がりました。

橋梁データ

形式: RC固定アーチ橋
活荷重: B活荷重
道路規格: 第3種第2級
設計速度: 60 km/h
橋長: 199.000 m
支間割: (162.800 m + 33.800 m)
アーチ支間: 155.000 m
アーチライズ: 18.500 m
幅員:
総幅員: 13.000 m - 16.16 m
有効幅員: 2 x 10.750 m
車道: 9.500 m
歩道: 片側2.500 m
平面曲線: 直線 - 曲率半径335 m
アーチ拱台: 直接基礎
A2橋台: 深礎杭基礎
床版: 鉄筋コンクリート
設計: 三井住友建設
施工: 三井住友建設（上下部工）
架設工法: 新メラン工法（アーチリブ）、支柱およびくさび式支保工架設工法（補剛桁）

歴史

1999年度に桟改良事業が開始され、あげまつ大橋は2009年2月に着工、2013年3月に竣工しました。その優れた技術とデザインは高く評価され、2013年度のプレストレストコンクリート工学会賞作品部門を受賞しました。あげまつ大橋を含む桟改良区間は、2014年3月29日に全線開通しました。

参考文献

秋田修、中嶋光祥、玉置一清、内堀裕之「桟1号橋の設計・施工 —曲線桁を有する上路式RC固定アーチ橋—」『プレストレストコンクリート』第55巻第3号、プレストレストコンクリート技術協会、2013年5月、23-30頁。
内堀裕之、玉置一清、永元直樹、小幡敏幸「急曲線補剛桁を有するコンクリートアーチ橋の設計と施工 —桟1号橋—」『プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム論文集』第21巻、プレストレストコンクリート技術協会、2012年10月、335-338頁。
三井住友建設「桟1号橋」（PDF）『PC設計NEWS』第175号、三井住友建設、2014年。

関連項目

かけはし大橋
木曽の桟

外部リンク

国土交通省中部地方整備局飯田国道事務所 - 橋梁管理者

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