おもちゃの交響曲

おもちゃの交響曲

『おもちゃの交響曲』（英: Toy Symphony）は、18世紀にオーストリアの作曲家エトムント・アンゲラーによって作曲されたと考えられている、全3楽章から構成される小交響曲です。親しみやすい旋律と、おもちゃの楽器が用いられている点が特徴で、『こどもの交響曲』（独: Kindersinphonie）とも呼ばれています。

作曲者判明までの経緯

この交響曲は、当初フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作品として出版されていました。ハイドンの作品目録であるホーボーケン番号では「Hob. ll:47」の番号が与えられていたほどです。しかし、ハイドンによる自筆譜や成立に関する資料が存在せず、曲の単純さから偽作説が有力でした。

その後、ハイドンの弟ミヒャエル・ハイドンや、一時的にはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品であるという説も浮上しましたが、いずれも確証は得られませんでした。

1951年、レオポルト・モーツァルトの作品とされるカッサシオンの一部が『おもちゃの交響曲』と同一であることが判明し、一時はレオポルトの作品であるという説が定着しました。しかし、1992年にチロルのシュタムス修道院で発見された楽譜から、エトムント・アンゲラーが1770年頃に作曲したものであるという説が有力となりました。アンゲラーの活動や、木製玩具の製造地であるベルヒテスガーデンが近いことなどから、現在ではアンゲラーの作品として広く受け入れられています。

楽器編成

パルセッリの写本には、弦楽器としてヴァイオリン、ヴィオラ、バス（通奏低音）が指定されています。現在ではヴィオラを除いた弦楽四重奏で演奏されることが多いですが、当時のスタイルを考慮すると、チェロも加えた編成であると考えられます。また、通奏低音にはチェロの他、フォルテピアノが用いられた可能性も指摘されています。

おもちゃの楽器としては、カッコウ、ウズラ、ラッパ、太鼓、ガラガラ、雌鳥の笛（ナイチンゲール）、トライアングルが指定されています。これらの楽器が曲に独特の彩りを加えています。

曲の構成

この交響曲は、全3楽章で構成されています。演奏時間は約10分程度です。

第1楽章：アレグロ
ハ長調、4分の4拍子、ソナタ形式で書かれています。

第2楽章：メヌエット - トリオ
ハ長調 - ヘ長調、4分の3拍子、三部形式で書かれています。

第3楽章：フィナーレ：アレグロ・モデラート - アレグロ - プレスト
ハ長調、8分の3拍子。
アレグロ・モデラートから始まり、アレグロ、プレストとテンポが変化し、おもちゃの楽器が増えていくことで、賑やかに終結します。

出版

当初、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作品として出版されましたが、現在ではエトムント・アンゲラーの作品として出版されています。

その他

この曲は、子供たちが実際におもちゃの楽器を演奏することもあり、教育的な側面も持ち合わせています。また、その親しみやすい旋律から、幅広い世代に愛されています。

参考文献

志鳥栄八郎「世界の名曲とレコード クラシック編 上巻 増補改訂版」(1974年 誠文堂新光社)

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