なは (列車)

寝台特急「なは」：京阪神と九州を結んだブルートレインの記憶

「なは」は、かつて西日本旅客鉄道（JR西日本）と九州旅客鉄道（JR九州）が、京都駅 - 熊本駅間を東海道本線・山陽本線・鹿児島本線経由で運行していた寝台特急列車です。2008年3月14日の運行をもって、「あかつき」とともに惜しまれつつ廃止されました。

ここでは、「なは」の歴史を紐解きながら、京阪神と鹿児島本線沿線を結んだ夜行列車の沿革についてもご紹介します。

「なは」の誕生から終焉まで

「なは」のルーツは、1965年に運行を開始した京都 - 博多・長崎間の昼行特急「かもめ」に遡ります。そのうち、京都 - 西鹿児島（現在の鹿児島中央）間を運行していた編成が、1968年10月に「なは」として分離・独立し、大阪 - 西鹿児島間を結ぶ昼行特急として運行を開始しました。当初はキハ82系気動車が使用され、大阪 - 小倉間では日豊本線経由の「日向」と併結運転を行っていました。1973年10月には485系電車に置き換えられ、単独での運行となりました。

1975年3月、山陽新幹線が全線開通すると、「なは」は昼行特急から夜行寝台特急へと生まれ変わりました。使用車両も583系寝台電車に変更され、新大阪（一時期は京都） - 西鹿児島間を結ぶ夜行列車として新たな歴史を刻み始めます。

1984年2月からは、24系客車が導入され、京阪神と鹿児島本線沿線を結ぶ「関西ブルートレイン」の一員として親しまれるようになりました。

2004年3月、九州新幹線の一部開業に伴い、並行する在来線が第三セクターの肥薩おれんじ鉄道に移管されたため、「なは」の終着駅は熊本に変更されました。さらに2005年10月には、「あかつき」との併結運転が開始され、発着駅が新大阪から京都に変更されました。これにより、運転区間は実質的に延長されることになりました。

しかし、利用客の減少には抗えず、2008年3月14日の運行をもって「なは」は廃止。1965年の運行開始から42年半、特急「なは」としては39年半の歴史に幕を閉じました。これにより、京阪神と九州を結ぶ定期夜行特急列車は姿を消すこととなりました。

「なは」という列車名の由来

「なは」という列車名は、琉球新報が1967年に沖縄の日本復帰を願い、「本土に沖縄の名前の列車を走らせよう」というキャンペーンで公募したことがきっかけで誕生しました。県内外から寄せられた5,211通の応募の中から、国鉄の列車愛称選考会によって「なは」「おきなわ」「しゅり」「でいご」「ひめゆり」の5つの候補が選ばれ、最終的に「なは」が選ばれました。当時アメリカの占領下にあった沖縄の那覇市に由来する列車名でしたが、鹿児島港で船に乗り継ぐことで関西方面から沖縄へのアクセスを担う役割も担っていました。

晩年の「なは」の運行

廃止直前の「なは」は、「あかつき」と京都 - 鳥栖間で併結運転を行っていました。列車番号は全区間を通して変わらず、下りが31、上りが32でした。

停車駅は以下の通りでした。

京都駅 - 新大阪駅 - 大阪駅 - 三ノ宮駅 - 姫路駅 - 岡山駅 - 倉敷駅 - 福山駅 - （尾道駅） - （三原駅） - （新山口駅） - （宇部駅） - （厚狭駅） - 下関駅 - 門司駅 - 小倉駅 - 黒崎駅 - 博多駅 - 鳥栖駅 - 久留米駅 - 大牟田駅 - 熊本駅

※尾道駅・三原駅は下り列車のみ停車

※新山口駅・宇部駅・厚狭駅は上り列車のみ停車

※上り・下り列車は広島駅・徳山駅に運転停車

牽引機関車は、京都 - 下関間がJR西日本下関地域鉄道部下関車両管理室（当時）所属のEF66形、下関 - 熊本間は、大分鉄道事業部大分車両センターの機関車が使用され、下関 - 門司間はEF81形400番台、門司 - 熊本間はED76形が牽引していました。

「なは」の歴史と沿線の優等列車

「なは」の登場以前にも、京阪神と九州を結ぶ様々な優等列車が存在しました。戦後間もない1951年には、大阪 - 博多間に臨時夜行急行列車が運行を開始し、その後「げんかい」と命名され定期列車となりました。1950年代から1960年代にかけては、「天草」「玄海」「桜島」「ひのくに」「しろやま」など、様々な列車が運行され、京阪神と九州各地を結んでいました。

山陽新幹線の開業後も、「なは」は寝台特急としてその役割を果たし続けましたが、時代の流れには逆らえず、2008年に姿を消しました。「なは」の廃止は、京阪神と九州を結ぶブルートレインの歴史に、一つの終止符を打つ出来事でした。

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