はやとの風

特急「はやとの風」とは

「はやとの風」は、かつて九州旅客[[鉄道]]（JR九州）が、吉松駅と鹿児島中央駅の間を肥薩線、日豊本線、鹿児島本線を経由して運行していた特急列車です。この列車は、2003年に始まった南九州観光開発委員会の「地域に合った観光列車を作ろう」というアイデアから生まれました。また、本項では、「はやとの風」に併結し、吉松駅で分割・連結を行い、人吉駅まで乗り入れていた臨時特急「人吉はやとの風」についても解説します。

誕生と変遷

2004年3月13日、九州新幹線鹿児島ルートの一部開業に合わせて、霧島方面への観光列車として運行を開始しました。当初は専用車両の予備がなく臨時列車として運行されていましたが、2006年3月からは予備車が確保されたことで定期列車となりました。しかし、2018年3月17日のダイヤ改正で定期運行は廃止され、再び臨時列車としての運行に戻りました。近年、JR九州は南九州で多くの観光列車を走らせていますが、「はやとの風」はその先駆けとなる列車でした。

肥薩線全体で見ると、八代駅と吉松駅の間では、2000年まで吉都線へ直通する急行「えびの」が運行されていました。また、八代駅と人吉駅の間では、2016年3月まで特急「くまがわ」と「九州横断特急」が運行していました。しかし、吉松駅より南の区間では、1978年に急行「やたけ」が快速に格下げされて以来、優等列車の運行がありませんでした。「はやとの風」は、肥薩線の吉松駅以南では、26年ぶりの優等列車運行となったのです。

また、2006年12月13日からは、人吉駅と鹿児島中央駅を直通する「人吉はやとの風」が運行されました。これは、2006年10月から2007年3月にかけて行われた「長崎vs熊本キャンペーン」に伴うものでした。「人吉はやとの風」は、2日間で1往復するダイヤで、1日目は人吉駅行き、2日目は鹿児島中央駅行きが運行されていました。吉松駅と鹿児島中央駅の間は、定期列車の「はやとの風」に併結して運行されていました。キャンペーン終了後も時折運行されていましたが、2007年11月に運行予定だった列車が、定期の「はやとの風」が踏切事故を起こした影響で運行中止となり、それ以降は設定されていません。

2022年9月23日から運行を開始した「ふたつ星4047」への改造に伴い、2022年3月21日をもって運行を終了しました。

運行概要

「はやとの風」は、吉松駅と鹿児島中央駅の間で、土曜・休日および長期休暇期間中に1日2往復運行されていました。特急列車でありながらワンマン運転で、車掌が乗務する場合もありましたが、乗務しない場合は客室乗務員が車内改札を行っていました。吉松駅発鹿児島中央駅行きの列車が下り列車で、列車番号は8021Dから8024Dでした。

運行ダイヤは、速達性よりも観光面を重視したものでした。

1903年（明治36年）の肥薩線開業時に建てられた木造駅舎が残る大隅横川駅と嘉例川駅では、全列車が約5分間停車しました。
竜ケ水駅から鹿児島駅の間では、桜島が一望できる区間を徐行運転しました。
日豊本線では、隼人駅と鹿児島駅のみに停車し、その他の駅では列車交換のため運転停車する場合がありました。

「人吉はやとの風」は、「はやとの風2・3号」に連結して運行されていました。

停車駅

吉松駅 - 栗野駅 - 大隅横川駅 - 霧島温泉駅 - 嘉例川駅 - 隼人駅 - 鹿児島駅 - 鹿児島中央駅

「人吉はやとの風」の人吉駅 - 吉松駅間は各駅に停車していました。

使用車両・編成

普通列車用のキハ40系気動車を特急仕様に改造した、キハ147 1045とキハ47 8092の2両が専用車両でした。通常はキハ47 8092を1号車、キハ147 1045を2号車としていました。車両の検査時には、1両を検査に出し、残った1両と指宿枕崎線の特急「指宿のたまて箱」仕様のキハ140 2066を連結して運行していました。車両は全て普通車です。

改造にあたっては、内燃機関や台車などは変更されていません。最高運転速度は95km/hのままでしたが、種車には高出力エンジン搭載車両が選定されました。その後、「指宿のたまて箱」で使用されているキハ47の改造車と同様に、上下振動を低減するため、加速度センサーにより検知された上下振動加速度をもとに制御装置が減衰力指令値を計算し、可変減衰上下動ダンパーにその指令値を送り、減衰力を可変させて上下振動を抑制する装置が搭載されました。車体には、4つの加速度センサーと制御装置が搭載されました。

運行開始当初は、キハ147 1045（1号車）とキハ140 2066（2号車）の2両編成で、予備車両がなかったため、検査や故障時には運休していました。ほぼ毎日運転していましたが、臨時列車扱いでした。2006年にキハ47 8092が加わると、これを1号車とし、従来1号車だったキハ147 1045は向きを変えて2号車に変更されました。2号車だったキハ140 2066は予備車となり、「はやとの風」の臨時列車扱いは解除され、多客時には3両で運行するようになりました。キハ140 2066は単行運転が可能だったため、「人吉はやとの風」にも使用されていました。

「人吉はやとの風」が運休になった事故の際には、「はやとの風」の専用車両が1両しか運行できなくなったため、2号車（当時は全車自由席）に普通列車用のキハ40系を充当し、2号車には乗車券のみで乗車可能とする措置が取られました。

2011年3月12日のダイヤ改正で「指宿のたまて箱」が運行を開始すると、キハ140 2066は「はやとの風」と「指宿のたまて箱」の共通予備車となりました。

2012年3月には、「指宿のたまて箱」仕様に改装されたため、「はやとの風」仕様の車両は運行開始当初の2両に戻りました。

運行開始以来、1号車を指定席、2号車を自由席として運行していましたが、2015年3月14日のダイヤ改正に伴い、2号車の大半も指定席に変更され、自由席は2号車の8席と1・2号車のフリースペースのみとなりました。2021年12月25日の運転再開以降は、自由席はなくなり全車指定席となっています。

外観・内装

車体は、ロイヤルブラック一色に塗装されていました。キハ40系気動車の暖地型を改造したため、デッキはなく、他の近郊型気動車と同様に、窓は開閉可能でした。内装には難燃木材が使用され、温かみのある雰囲気でした。後から改造されたキハ47 8092の内装は、登場時から運用されていた車両に比べて明るい色調の素材が使用されていました。

車内は、既存の座席を全て撤去し、フリーストップ式のリクライニングシートを設置。トイレの新設や、エアコンの変更（独立型のバス用クーラーから、屋上集中型への変更）なども行われました。車両中央には、コモンスペースとして展望席が設置されていました。

1号車にはサービスコーナーがあり、オリジナルの記念品や沿線の名産品などが販売されていました。また、この特急列車の誕生を記念して発売開始された駅弁「百年の旅物語かれい川」も販売されていました。

「はやとの風」（吉都線）平日チャーター補助制度

吉都線の利用促進のため、宮崎県は「平日チャーター補助制度」を実施していました。宮崎県内および鹿児島県湧水町の団体・旅行会社が「はやとの風」専用車両を平日に貸し切り、団体専用列車を運行する場合に補助金が交付されていました。

沿革

2004年（平成16年）3月13日：九州新幹線鹿児島ルート開業に合わせて運行開始。この時点では専用編成が2両（キハ147 1045・キハ140 2066）のみだったため、ほぼ毎日運転していたが、臨時列車の扱いだった。
2006年（平成18年）
1月21日：キハ47 8092が専用車両に加わり、それまで使用されていたキハ140 2066は予備車・臨時列車用とされる。
3月18日：定期列車に格上げ。
12月13日：「人吉はやとの風」運行開始。「人吉はやとの風」には予備車のキハ140 2066が充当された。
2007年（平成19年）10月29日：肥薩線での踏切事故の影響により専用車両が1両しか走行できなくなったため、11月に運行予定だった「人吉はやとの風」は運行中止。以降「人吉はやとの風」の設定はない。また定期列車の「はやとの風」は車両の修理が完了するまで、残った専用車1両を1号車（指定席）、普通列車用の車両を2号車（自由席）とし、2号車には乗車券のみで乗車可能の措置が取られた。
2012年（平成24年）3月19日：キハ140 2066は「指宿のたまて箱」用に再改造され、2両体制に戻る。これ以降、専用車両2両のどちらかが検査等で運転できない場合、この「指宿のたまて箱」用予備車を用いて運転される事もあった。
2015年（平成27年）3月14日：2号車の大半の座席を指定席に変更。
2018年（平成30年）3月17日：定期運行を廃止し、土曜・休日および多客期運転の臨時列車となる。
2020年（令和2年）
5月2日 - 5月6日：新型コロナウイルス感染症対策として、JR九州管内の特急列車全便運休の方針により、期間中の「はやとの風」を全便運休。
8月18日：新型コロナウイルスの感染拡大と令和2年7月豪雨の被害で八代 - 吉松間の不通を受け、9月19日から翌年12月19日まで運休することを発表。
2021年（令和3年）
11月26日：使用車両を2022年秋運行開始予定の「ふたつ星4047」に改造するため、2021年度内で運行を終了することを発表。
11月30日：運行終了日を2022年3月21日と発表。
12月25日：1年3ヶ月ぶりに運行を再開。運転再開にあたって、全車指定席に変更されている。
2022年（令和4年）3月21日：「ふたつ星4047」への改造に伴い、運行を終了。

脚注

注釈

出典

関連項目

やたけ：西鹿児島駅 - 吉松駅間を運行していた急行・快速列車。

外部リンク

JR九州の列車たち 特急 はやとの風 - 九州旅客[[鉄道]]（インターネットアーカイブ）

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