指宿のたまて箱

指宿のたまて箱（いぶすきのたまてばこ）は、九州旅客鉄道（JR九州）が鹿児島中央駅と指宿駅の間を結ぶ特急列車です。愛称は「いぶたま」として親しまれています。この列車は、九州[[新幹線]]の全線開業に合わせて2011年3月13日に運行を開始し、指宿枕崎線初の定期特急列車となりました。また、日本最南端を走る特急列車としても知られています。

概要

「指宿のたまて箱」は、新幹線の開業効果を沿線外にも広げることを目的に導入された観光列車です。運行開始当初は、特別快速「なのはなDX」の代替として登場しました。平日昼間には、指宿市役所の職員が沿線や駅ホームで手を振って歓迎する姿が見られます。

列車名の由来は、薩摩半島の最南端に位置する長崎鼻周辺に伝わる浦島太郎伝説の玉手箱にちなんだものです。この伝説が、列車にユニークな愛称「いぶたま」を与えることになりました。

運行概況

「指宿のたまて箱」は、日中に3往復運行しており、所要時間は約55分です。全席指定席で、2両編成の際はワンマン運転、3両編成の際は車掌が乗務します。客室乗務員が乗務し、検札や車内販売、観光案内などを行います。指宿駅以南の枕崎駅までは運行していません。

停車駅

鹿児島中央駅 - 指宿駅

2024年 3月16日のダイヤ改正で、途中の喜入駅への停車がなくなり、ノンストップ運転となりました。

使用車両

通常は、キハ47形気動車を改造した2両編成で運行されます。繁忙期には、キハ140形を1両増結した3両編成で運行されることもあります。車両には、レールの継ぎ目による振動を低減する可変減衰上下動ダンパが採用されています。これは、車体に搭載された加速度センサーと制御装置によって、振動を検知しダンパの減衰力を調整するものです。

デザイン

車両のデザインは、水戸岡鋭治氏が担当しました。外観は、海側が白色、山側が黒色に塗り分けられており、印象的です。車内には、リクライニングシートやコンパートメント席、ソファー席、海向きの1人掛け席など、様々なタイプの座席が用意されています。子供用のキッズチェアや、保護者向けのソファー席も設置されています。また、ドアが開く際には、玉手箱の煙をイメージしたミストが噴射される演出も特徴的です。

予備車両として、かつて「はやとの風」で使用されていたキハ140形が、塗装変更やミスト装置の取り付けなどの改造を施されて使用されています。専用車両が検査に入る際には、予備車両と組み合わせて運行されます。

快速「なのはな」・特別快速「なのはなDX」

「指宿のたまて箱」の前身となる列車として、快速「なのはな」がありました。1992年 7月15日に運転を開始し、西鹿児島駅（当時） - 山川駅間で運行されました。その後、2004年3月13日には、日中の4往復が指定席車両を連結した特別快速「なのはなDX」となりました。

停車駅

* 快速「なのはな」
鹿児島中央駅 - 郡元駅 - 南鹿児島駅 - 宇宿駅 - 谷山駅 - 慈眼寺駅 - 坂之上駅 - （五位野駅） - 平川駅 - 瀬々串駅 - 喜入駅 - 〈薩摩今和泉駅〉 - 〔宮ヶ浜駅〕 - 〈二月田駅〉 - 指宿駅 - 山川駅

（）は一部列車のみ停車
〔〕は「なのはなDX」の一部列車のみ停車
〈〉は「なのはな」「なのはなDX」ともに一部列車のみ停車

「なのはな」はキハ200系気動車、「なのはなDX」はキハ200形とキハ220形が使用されていました。キハ220形は、検査時や特定日には「なのはな」として運転されていました。キハ220-1102は、後に熊本車両センターに転出し、事業用車に改造されました。

指宿枕崎線 優等列車沿革

指宿枕崎線では、過去に様々な優等列車が運行されていました。

鹿児島県対宮崎県の連絡列車「錦江」

1960年に準急「錦江」が西鹿児島駅 - 山川駅間で運行を開始しました。その後、1961年に山川駅 - 宮崎駅間に区間が変更されました。1966年には急行列車に格上げされましたが、1980年には指宿枕崎線への乗り入れが終了し、快速列車に格下げされました。

指宿枕崎線の観光特急として

2011年3月12日に「なのはなDX」が廃止され、代替として「指宿のたまて箱」が運行を開始しました。2012年には、予備車・増結車としてキハ140形が加わり3両体制となりました。

2014年には、線路への土砂流入により脱線事故が発生しましたが、その後運転を再開しました。2020年には、新型コロナウイルス感染症の影響で一時運休となりました。

2021年3月13日からは臨時列車化されましたが、毎日運転されています。2022年には、博多ー門司港間での特別運行も実施されました。2024年 3月16日には、喜入駅への停車を取りやめ、ノンストップ運転となりました。

これらの歴史を経て、「指宿のたまて箱」は現在も多くの人に愛される観光特急として活躍しています。

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