やまと (沈黙の艦隊)

『沈黙の艦隊』に登場する原子力潜水艦「やまと」

かわぐちかいじの漫画『沈黙の艦隊』に登場する「やまと」は、物語の鍵を握る架空の原子力潜水艦です。当初はアメリカ海軍第7艦隊に所属し、「シーバット」のコードネームを与えられていました。艦長は、海上自衛隊の潜水艦「やまなみ」の艦長であった海江田四郎。彼は後に「やまと」を率いて独立を宣言し、自らを元首とする独立国家「やまと」を樹立します。

概要

「やまと」は、日本初の攻撃型原子力潜水艦（SSN）として、日米両国の最先端技術を結集して建造されました。作中では世界最強の潜水艦と位置づけられています。その建造には、秘められた経緯がありました。

物語の中では、国産原子力潜水艦建造計画、通称「5号計画」が存在しましたが、原子力船「むつ」の事故によって計画は頓挫していました。しかし、影の総理と呼ばれた海原大悟らの主導により、32億ドルもの巨費を投じて極秘裏に建造されたのが、この「やまと」でした。

原子力潜水艦の保有に対する国民の合意形成が難しい状況下での建造であったため、就役にあたっては、所属を海上自衛隊ではなくアメリカ海軍第7艦隊とし、乗組員に自衛官を搭乗させることで技術的なノウハウを習得することを目的としました。

コードネームである「シーバット（SeaBat）」は、イソップ寓話になぞらえたもので、日米どちらにも属さない中途半端な存在を意味する蔑称として使われました。しかし、艦長の海江田は、音を頼りに戦う潜水艦にとってふさわしい艦名だと意に介しませんでした。

物語中では、シーウルフ級原潜「キング」と「アレキサンダー」との戦闘において、「やまと」の水測長が「コウモリの耳はオオカミより上ですよ」と発言する場面があります。

物語の当初は、各国政府や軍関係者が「シーバット」という名称を使用していましたが、海江田が「やまと」の名を公表してからは、乗組員の間でのみ使用されるようになりました。その後、アメリカが「やまと」の独立をアメリカ海軍所属潜水艦から外す形で認めてからは、「やまと」という名称が一般的に使われるようになりました。これは、「やまと」の独立を認めずにアメリカ海軍所属潜水艦「シーバット」のままにしておくと、同艦がソ連海軍と交戦した場合に米ソ間で戦争が起こる危険を回避するための政治的な工作でもありました。

作中での行動

「やまと」の乗組員は、海上自衛隊の通常動力型（ディーゼル）潜水艦「やまなみ」の乗組員で構成されていました。彼らは、ソ連原潜の脅威と自分たちの死を知らせるために、犬吠埼沖で「やまなみ」をソ連のヴィクター級原潜「ロマノフ」に衝突させ、圧潰沈没事故を装うというシナリオを描きました。その後、1ヶ月間はアメリカのロサンゼルス級原潜「フェニックス」で訓練を受け、優秀な成績を収めました。

しかし、試験航海中に逃亡し、独立を宣言。「独立国家やまと」を名乗ります。この最強の原潜を沈めるため、米ソ両海軍が幾度となく戦いを挑みますが、海江田艦長の卓越した操艦技術と、経験豊富な乗組員の力によって、その全てを撃沈、あるいは戦闘不能に陥れ、退けました。

ニューヨーク入港後、海江田が国連総会に出席するために不在となった際、アメリカのキティホーク級航空母艦「ジョン・F・ケネディ」の艦載ヘリコプターから発射された対艦ミサイルを受け、大破、沈没しました。しかし、乗組員の適切な退艦行動と、トラファルガー級原潜「タービュレント」による救助活動によって、全員が生還しました。また、原子炉の緊急停止に成功した結果、ニューヨーク湾の放射能汚染は防がれました。

「やまと」との戦いで被害を受けた艦

「やまと」との戦闘で多数の艦艇が被害を受けました。その中には、ミンダナオ海溝でのアメリカのロサンゼルス級原潜「ニューヨーク」や、モルッカ海峡での「ダラス」、「シカゴ」、「カンザス」、「ヒューストン」、「デンバー」、「リトルロック」などが含まれます。沖縄沖ではソ連のアルファ級原潜「レッド・スコルピオン」やキンダ型巡洋艦「グローズヌイ」、ソヴレメンヌイ級駆逐艦「オスモトリテルヌイ」、コムソモレッツ・ウクライヌイ級駆逐艦「プロヴォルヌイ」、キンダ型巡洋艦「ヴァリャーグ」などが被害を受けています。

太平洋ではアメリカのミッドウェイ級通常空母「ミッドウェイ」（アニメ版では原子力空母「エンタープライズ」）、アイオワ級戦艦「ニュージャージー」（アニメ版では原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」）などが沈没しています。

この他にも、タイコンデロガ級イージスミサイル巡洋艦「ヨークタウン」やリーヒ級ミサイル巡洋艦「デイル」、スプルーアンス級ミサイル駆逐艦など多数の艦艇が損傷を受けています。北極海ではシーウルフ級原潜「キング」と「アレキサンダー」が「やまと」と交戦しています。

ニューヨーク沖では、タイコンデロガ級巡洋艦「ユエ・シティ」、カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦「サウスカロライナ」、タイコンデロガ級巡洋艦「チョーシン」、ベルナップ級ミサイル巡洋艦「フォックス」、ニミッツ級原子力空母「エイブラハム・リンカーン」、ヴァージニア級原子力ミサイル巡洋艦「アーカンソー」、ベルナップ級ミサイル巡洋艦「ビドル」「ホーン」、スプルーアンス級駆逐艦「ハリー・W・ヒル」「エリオット」「フレッチャー」、ニミッツ級原子力空母「セオドア・ルーズベルト」、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「タイコンデロガ」「ゲティスバーグ」「ハーベイ」、スプルーアンス級フリゲート型駆逐艦「レフトウィッチ」「オブライエン」、キティホーク級通常空母「ジョン・F・ケネディ」などが「やまと」と交戦しています。

「沈黙の艦隊」所属艦

「やまと」の理念に共鳴し、「沈黙の艦隊」に加わった潜水艦には、トラファルガー級原潜「タービュレント」、リュビ級原潜「エムロード」、アルファ級原潜「3番艦（艦名不明）」、チャーリーI型原潜（艦名不明）、漢級原潜（艦名不明）などが存在します。

もう一度検索