キティホーク級航空母艦

キティホーク級航空母艦は、アメリカ海軍が運用した航空母艦の艦級です。フォレスタル級の発展型として設計され、4隻が建造されました。この艦級は、アメリカ海軍における最後の通常動力型空母として知られています。

来歴

第二次世界大戦後、アメリカ海軍は、核戦略の一翼を担うべく、次世代の大型空母を志向しました。1948年度計画の超大型空母「ユナイテッド・ステーツ」は建造中止となりましたが、その後の朝鮮戦争勃発を背景に、1952年度計画からフォレスタル級の建造が開始されました。しかし、フォレスタル級は設計最終段階でのアングルド・デッキ化など、改善の余地が多くありました。また、A3Dスカイウォーリア（後のA-3）の配備により、将来の航空機大型化に対応するために設けていた余裕も、ほぼ使い果たされる見込みでした。

このため、1954年1月には改良設計案CVA 1/54が作成されました。当初はCVA-62および63から導入予定でしたが、CVA-62は予算の都合でフォレスタル級4番艦「インディペンデンス」として建造されました。CVA 1/54は大型かつ高価になると予想されたため、順次改訂案が作成されました。CVA 5/54の設計案を基に、SCB-127が設計され、1954年10月に主要諸元が決定しました。これに基づき、SCB-127A計画艦として1956年度予算で「キティホーク」、1957年度予算で「コンステレーション」が建造されました。

その後、アメリカ海軍は原子力空母を志向するようになり、1958年度予算で「エンタープライズ」が建造されました。これによりキティホーク級の建造は一時中断しましたが、エンタープライズのコスト高騰により、原子力空母の建造が遅れました。1961年度予算では、核動力化を断念し、キティホーク級3番艦「アメリカ」が建造されました。1963年度には、次期原子力空母のために開発された技術を導入した発展型1隻の建造が認可され、「ジョン・F・ケネディ」となりました。この艦は、アメリカが建造した最後の通常動力空母となりました。

設計

キティホーク級の設計は、基本的にはフォレスタル級の小改正型です。しかし、航空運用機能の強化に対応するため、艦橋構造物（アイランド）が艦尾側に移動し、外見上の識別点となりました。また、艦対空ミサイルの搭載に対応して電測兵装が強化され、ラティス構造の本格的な後檣が設置されました。主檣はフォレスタル級と同様に起倒式です。SCB-127C計画艦「ケネディ」では、電測兵装への影響を軽減するため、煙突を外側に傾斜させています。

フォレスタル級では艦砲を設置するために両舷にスポンソンがありましたが、前方スポンソンが航洋性に悪影響を及ぼすことが指摘されたため、キティホーク級では後部スポンソンのみが設置されました。「アメリカ」にはソナーを収容するためのバウ・ドームが設けられ、錨の装備要領が変更されました。「ケネディ」でもソナーの搭載が予定されましたが、実際には搭載されませんでした。

機関

機関はフォレスタル級後期建造艦とほぼ同一仕様ですが、ボイラーはフォスター・ホイーラー式が採用されました。8基のボイラーで蒸気圧1,200lbf/in2 (84kgf/cm2)、温度950°F (510°C)の蒸気を発生させ、蒸気タービンで4軸の推進器を駆動し、機関出力は280,000馬力でした。

電源として、ネームシップは1,500キロワットのタービン発電機8基（後に750キロワット2基追加）、1,000キロワットのディーゼル発電機3基を搭載していました。「ケネディ」では、2,500キロワットのタービン発電機6基、1,500キロワットのディーゼル発電機2基に変更されました。

能力

航空運用機能

キティホーク級では、航空艤装のレイアウトが大きく変更されました。

発着艦設備

全通飛行甲板は、初期建造艦で長さ319.1メートル×幅72.5メートル、「ケネディ」では313.3メートル×幅72.8メートルでした。カタパルトは、初期建造艦2隻ではC-13（90メートル長）4基でしたが、「アメリカ」「ケネディ」では1基が94.5メートル長のC13-1に変更されました。

飛行甲板はアングルド・デッキで、着艦帯は11度の角度が付けられています。「ケネディ」の着艦帯は227メートル長でした。アレスティング・ギアはMk.7-3制動索5索型として設計されましたが、後に4索型に変更されました。

キティホーク級では、飛行甲板のレイアウト変更により、カタパルト射出と着艦帯への着艦をより安全に並行して実施できるようになりました。

格納・補給

格納庫は、初期建造艦で長さ225.6メートル×幅30.8メートル、クリアランスは7.62メートルでした。「ケネディ」では209.7メートル×幅32.3メートルに変更されました。

エレベーター配置も大きく変更され、フォレスタル級では左舷1基、右舷艦橋前に1基、艦橋後方に2基だったものが、右舷艦橋前に2基、後方に1基、左舷側も艦尾側に移動されました。この配置は、以降のアメリカ空母でも踏襲されました。エレベーターの大きさは、初期2隻で21.3または25.9メートル長×15.8メートル幅でしたが、「アメリカ」「ケネディ」では25.9メートル長に統一されました。

航空機用補給品として、「コンステレーション」は航空用ガソリン93,384米ガロン (353,500L)、ジェット燃料1,837,512米ガロン (6,955,740L)、弾薬1,800トンを搭載できました。「アメリカ」は航空用ガソリン50,658米ガロン (191,760L)・ジェット燃料1,172,768米ガロン (4,439,410L)でした。ジェット機化に伴い航空ガソリンの搭載は不要となり、ガソリンタンクは廃止されました。その後は航空燃料搭載量として5,882トン（「ケネディ」は5,919トン）が示されています。

個艦戦闘機能

レーダーは、高角測定用AN/SPS-8、対空捜索用AN/SPS-37Aに加え、テリア艦対空ミサイル用に3次元式AN/SPS-39が搭載されました。「アメリカ」では高角測定レーダーをAN/SPS-30、対空捜索レーダーをAN/SPS-43Aに更新し、初期建造艦も後に同様に換装されました。「ケネディ」ではAN/SPS-43Aが搭載されましたが、高角測定レーダーは省かれ、3次元レーダーはAN/SPS-48となりました。また、他の3隻の3次元レーダーはAN/SPS-52に更新され、AN/SPS-43AもAN/SPS-49に更新されました。

SLEP改修時に高角測定レーダーは廃止され、3次元レーダーはAN/SPS-48E、対空捜索レーダーはAN/SPS-49(V)5に更新され、低空警戒用にMk.23 TASも搭載されました。また、海軍戦術情報システム（NTDS）の更新も行われました。

「アメリカ」と「ケネディ」にはAN/SQS-23探信儀の搭載が予定されましたが、コスト削減のため、「ケネディ」には実際には搭載されませんでした。「アメリカ」の装備も1981年に撤去されました。

兵装として、当初は艦砲を搭載予定でしたが、対空兵器としてテリア艦対空ミサイル（SAM）を搭載するよう設計が変更されました。艦尾両舷のスポンソンにMk.10連装ミサイル発射機（右舷側はmod.3、左舷側はmod.4）が設置され、それぞれ40発のミサイルを収容しました。艦橋構造物上には、これらを誘導するAN/SPG-55追尾レーダーが設置されました。「アメリカ」はSM-1ERと共用性のあるシステムを搭載しました。

「ケネディ」はテリアミサイルを搭載せず竣工し、1969年にシースパローBPDMS（個艦防空ミサイル）を搭載し、同ミサイルを搭載した最初の米空母となりました。1970年代後半から、他の3隻もテリア発射機を撤去し、シースパローIBPDMS（Mk.29発射機）に更新しました。1980年の「アメリカ」を皮切りにファランクスCIWSの搭載が開始され、「ケネディ」も同年中に、「キティホーク」と「コンステレーション」も1984年以降に順次搭載しました。

運用史

「キティホーク」と「コンステレーション」はSLEPプログラムで改修されました。「アメリカ」は改修が数年後になる予定でしたが、予算カットにより1996年に退役しました。

「キティホーク」は「ジョージ・ワシントン」と交代し、2008年5月28日に日本での最後の任務を終え、横須賀基地を出港しました。同年8月にはアメリカ本土に配備され、翌2009年1月に退役しました。

登場作品

映画

『2012』: 「ジョン・F・ケネディ」が登場。巨大津波に飲み込まれ、ワシントンD.C.のホワイトハウスを破壊します。
『サンドストーム』: 「キティホーク」が登場。中東情勢緊迫化を受け、イスラエル沿岸部に展開します。

漫画・アニメ

『続・戦国自衛隊』: 「キティホーク」が登場。第7艦隊所属艦として、北朝鮮に対処するため朝鮮半島へ向かいます。
『沈黙の艦隊』: 「ジョン・F・ケネディ」が登場。原子力潜水艦「やまと」と衝突し、損傷します。また、「アメリカ」を旗艦とする艦隊が北極海に展開したことが語られています。
『ルパン三世ルパンVS複製人間』: 「コンステレーション」が登場。拘束された次元大介と石川五ェ門が連行され、尋問されます。

小説

『サムライ戦艦「大和」』: 「キティホーク」が登場。太平洋戦争末期にタイムスリップし、日本海軍に制圧されます。
『真･日本艦隊』: 「ジョン・F・ケネディ」が登場。日本に貸与され、海上自衛軍の空母「あかぎ」として運用されます。
『ダンシング・ウィズ・トムキャット』: 「キティホーク」が登場。退役後、日本が購入し、警備護衛艦「飛鷹」として運用されます。
『地球0年』: 「コンステレーション」が登場。第三次世界大戦勃発により横須賀港から緊急出港しますが、被爆・撃沈されます。
『超時空大海戦』: 「キティホーク」「コンステレーション」「ジョン・F・ケネディ」が登場。台湾に横流しされ、台湾海軍の空母として運用されます。
『天空の富嶽』: 「キティホーク」が登場。中国海軍の潜水艦に奇襲され大破します。

ゲーム

『エースコンバットシリーズ』
『エースコンバット04 シャッタードスカイ』: エルジア共和国海軍の空母「ジオフォン」として登場。CGモデルはキティホーク級です。
『エースコンバット3D クロスランブル』: クーデター軍の空母として「キネアー級航空母艦」が登場します。
『マブラヴ』: 「ジョン・F・ケネディ」が登場。バビロン災害で座礁し、後にBETAの襲撃に遭い全滅します。
『鋼鉄の咆哮シリーズ』: 船体および艦橋が登場。原子炉搭載型として登場します。
* 『紺碧の艦隊2 ADVANCE』: アメリカの空母として登場。搭載機数が多く、高性能です。

脚注

注釈

(注釈の内容は省略)

出典

(出典の内容は省略)

参考文献

(参考文献の内容は省略)

キティホーク級航空母艦