アイナメ

アイナメについて

アイナメ（鮎魚女、鮎並、愛魚女）は、学名Hexagrammos otakiiといい、アイナメ科に分類される魚の一種です。日本沿岸の比較的塩分濃度の低い岩礁域に広く生息する底生魚であり、食用として利用されています。「アブラメ」などの別名で呼ばれることもあります。

名称の由来

種小名の「otakii」は、本種の記載者の一人であるD.S.ジョーダンの教え子、大瀧圭之介氏に献名されたものです。大瀧氏が東京の市場で購入し、ジョーダンに送った4尾のアイナメが、本種の記載に用いられました。

属名の「Hexagrammos」は、古代ギリシア語の「ἑξα-（hexa-）＝6の-」と「γράμμα（grámma）＝文字・サイン」に由来し、側線が6本あるように見えることに因んでいます（実際には5本）。この特徴から、中国名は大瀧六線魚と呼ばれています。

特徴

アイナメは全長30～40cmほどで、60cmを超える個体もいます。カサゴ、メバル、カジカなどと同じカサゴ目に分類されますが、ひれの棘条が発達しないこと、背びれが1つに繋がっていること、体高が高いこと、鱗が細かいことなどが特徴です。これらの特徴は、クジメやホッケなど他のアイナメ科の魚にも共通しています。

体色は生息環境によって様々で、黄色、赤褐色、紫褐色などが見られます。繁殖期のオスには黄色の婚姻色が現れます。近縁種のクジメとは、尾びれが三角形に角ばっていることで区別できます。また、アイナメの側線は体側中央だけでなく、背びれ、腹びれ、尻びれの根もとに計5本ありますが、クジメの側線は体側の1本のみです。

分布

アイナメは南西諸島と太平洋側の一部を除く日本各地の沿岸に生息し、日本以外では朝鮮半島と黄海沿岸にも分布しています。

生態

アイナメは昼行性で、岩礁帯やテトラポッド、防波堤などの陰に潜み、小魚や甲殻類、多毛類などを捕食します。産卵期は秋から冬で、オスは岩陰などにメスを誘い込んで産卵させます。オスは巣に次々と複数のメスを誘い込むため、卵は緑褐色や赤紫色の大きな卵塊となります。産卵後もオスは卵のそばに残り、外敵から卵塊を守ります。孵化した稚魚は岩礁の周辺を泳ぎ回りながら成長し、全長5cmを超えると親魚と同じように底生生活に移ります。

地方名

アイナメは地域によって様々な呼び名で親しまれています。北海道や東北地方では「アブラコ」、関西地方では「アブラメ」、宮城県では「ネウ」（根魚の意）、広島県では「モミダネウシナイ」（籾種失いの意）などと呼ばれています。その他にも、アブラウオ、ツムギ、シジョといった呼び名があります。

利用

漁獲

アイナメは底引き網、刺し網、籠漁などで漁獲されます。防波堤や岩場からの釣り魚としても人気があり、特に「ブラクリ」という特殊な錘を使った釣りが一般的です。釣り餌にはゴカイ、オキアミ、エビなどが用いられ、外道としてカサゴなどが釣れることもあります。北海道や関西では投げ釣りの対象魚としても人気が高く、針にかかった際の力強い引きは「首振りダンス」とも呼ばれています。ソフトルアーやワーム系のルアーを用いた釣りも楽しまれています。

食材

アイナメは晩秋から春にかけての寒い時期が旬で、特に晩秋から冬が最盛期です。身は脂肪の多い白身で、「アブラメ」と呼ばれる所以です。季節によっては寄生虫がいることがあるため、刺身などの生食には注意が必要ですが、適切に処理されていれば問題なく食べられます。小骨が多いため、骨切りがなされることもあります。刺身、煮付け、から揚げ、潮汁、焼き物、味噌汁、干物、みりん漬け、粕漬けなど、様々な調理法で美味しくいただけます。

関連項目

魚の一覧
探り釣り
* ヘチ釣り

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