アイマーク人

アイマーク人

アイマーク人（英語: Aimak または Aymaq、ペルシャ語: ایماق）は、中央アジア、主にアフガニスタン西部から中央部にかけて、そして隣接するイランのホラーサーン州に居住する、ペルシア語を話す遊牧または半遊牧の生活を営む人々の集団です。その起源は主にイラン系に遡りますが、一部にはモンゴル系の集団も含まれており、多様な背景を持つ人々によって構成されています。

名称の由来

「アイマーク」という語は、モンゴル語で「部族」や「放牧領域」、さらには遊牧民が共同で利用する「遊牧地」といった意味を持っています。歴史的には、モンゴル帝国の拡大に伴ってこの地域にもたらされた言葉と考えられています。この語の起源を巡っては、言語学的・歴史的な証拠に乏しいものの、イランの古い伝説に登場する半神の王に結びつけようとする説も存在しますが、これは一般的には根拠に乏しい見方とされています。

部族構成と分類

アイマーク人はしばしば「チャハール・アイマーク」、すなわち「四つのアイマーク」として知られる主要な部族連合を形成しています。「チャハール」はペルシャ語で数字の「四」を意味し、具体的にはゴール州の主な住民であるタイマーニー族、フィールーズクーヒー族、ジャムシーディー族、そしてタイムリ族を指すことが多いです。ただし、この四部族の構成には異説もあり、アイマーク・ハザーリー族を含める見方や、タイムリ族をタヒリ族、ズリ族、マレキ族、ミシュマスト族などと共に「小アイマーク」や「その他のアイマーク」（Aimaq-e diga）として区別することもあります。

アイマーク人は、その起源に基づいて大きく二つのグループに分類することができます。一つはタイマーニー族、フィールーズクーヒー族、ジャムシーディー族といった、主にイラン系を起源とする集団です。彼らはアフガニスタンにおいて、伝統的な黒いテントで暮らすことが多く、自らをタジク人であると認識することもあります。アフガニスタンにおけるアイマーク族の大多数はこのイラン系の三つの支族であるとされています。

もう一つはタイムリ族やアイマーク・ハザーリー族で、彼らはモンゴル系を起源とする集団と考えられています。彼らは伝統的なゲル（移動式住居）に住んでおり、身体的な特徴や住居形態からそのモンゴル系のルーツがうかがえます。このように、アイマーク人は単一の民族ではなく、複数の起源を持つ集団の総称として理解されています。

分布と人口

アイマーク人の総人口については、調査によって推定値に大きな幅があり、25万人から200万人に及ぶとも言われています。アフガニスタンの国勢調査においては、文化や言語にある程度の近接性が見られるタジク人とまとめて分類されることもあります。

彼らの主な居住地はアフガニスタン西部から中央部にかけて広がり、特にゴール州では人口の多数派を占めています。また、ヘラート州やバードギース州の西部にも多く、ファラー州、ファーリヤーブ州、ジョウズジャーン州、サーレポル州など、より東部の地域にも一定数のコミュニティが存在します。イランでは、主に国境に近いホラーサーン州に居住しています。

言語と宗教

アイマーク人が話す言語は、ペルシャ語のアイマーク方言です。この方言も地域によっていくつかの下位方言に分かれており、それぞれの地域で独自のアクセントや語彙が見られます。ただし、アフガニスタン南部に位置するタイマーニー族の一部や、イランのマレキ地区に居住するアイマーク人の中には、隣接する民族の影響を受けてパシュトー語を話す人々もいます。

宗教面では、隣接するハザーラ人の多くがシーア派イスラム教を信仰しているのとは対照的に、アイマーク人のほとんどはスンナ派イスラム教徒です。この宗教的な違いは、彼らの文化や社会構造において重要な要素となっています。

アイマーク人は、その遊牧・半遊牧という生活様式、多様な起源を持つ部族構成、独自の言語（方言）、そしてスンナ派イスラム教信仰といった特徴を持つ、アフガニスタンおよびイランにおける重要な集団の一つです。彼らは歴史的にこの地域の交易路や遊牧地を移動しながら暮らしており、それぞれの部族が固有の文化や伝統を守り続けています。

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