ファーリヤーブ州

ファーリヤーブ州：アフガニスタン北部の要衝

アフガニスタン北部に位置するファーリヤーブ州は、肥沃な土地と多様な民族構成を持つ地域です。その地理的な特徴、歴史、そして近年における紛争状況について詳しく解説します。

地理

ファーリヤーブ州は、日本の四国よりも広い面積を有し、その地形は多様性に富んでいます。州の北部には、カラクム砂漠から続く砂漠地帯が広がり、南部にはヒンドゥークシュ山脈の山岳地帯が広がっています。この山岳地帯から流れ出す河川が、カイサール、アルマール、マイーマナなどの盆地や谷を形成しています。また、州の東部には、ビルチラーグからダウラターバードにかけて長い谷が伸びています。

歴史

古代

4世紀頃、ファーリヤーブ州はクシャーノ・サーサーン朝の支配下にあり、マイーマナでは当時の銀貨が発見されています。この地域は、古代から様々な文化が交錯する場所でした。

近代

18世紀には、アフマド・シャー・ドゥッラーニーによってマイーマナが占領されました。その後、19世紀にはウズベク人のアミールが支配する独立都市となり、周辺の勢力による侵攻を退けました。しかし、1884年にはアブドゥッラフマーン・ハーンによって占領され、アフガニスタンの支配下に入りました。

冷戦時代

1950年頃にはマイーマナ州と呼ばれていましたが、1964年に現在のファーリヤーブ州に改称されました。冷戦終結後、ソ連軍撤退後のアフガニスタンでは、各地で民兵組織が台頭し、ファーリヤーブ州もその影響を受けました。

冷戦終結後

1990年代初頭、共産党政権崩壊後、各地で勢力を伸ばしたドスタム将軍は、ファーリヤーブ州を含む北部地域を支配下に置きました。その後、ターリバーンが台頭し、アフガニスタンは内戦状態に突入しました。

1996年、ターリバーンはドスタムやイスラーム統一党と協力し、ファーリヤーブ州周辺地域を制圧しましたが、その後ドスタムとの関係が悪化し、激しい戦闘が繰り広げられました。1997年にはターリバーンが一時的にマザーリシャリーフを占領しましたが、ドスタムが復帰し、ターリバーンを撃退しました。しかし、1998年にはターリバーンが再び攻勢を強め、ドスタムの支配地域は崩壊しました。この時期、ファーリヤーブ州では民族浄化の疑いのある事件も発生し、住民は大きな被害を受けました。

アメリカ同時多発テロ事件以降

2001年のアメリカ同時多発テロ事件後、アメリカ軍がアフガニスタンに侵攻し、ドスタムは北部同盟に加盟してターリバーンを駆逐しました。しかし、その後もドスタムと他の勢力との間で小競り合いが続き、ファーリヤーブ州の治安は不安定な状態が続きました。

2004年にはドスタムが州都マイーマナを一時的に占拠し、混乱を引き起こしました。2005年には、ドスタムが参謀総長に任命されましたが、軍閥解体の動きは続き、治安は依然として不安定でした。

2007年以降、戦争は激化し、ファーリヤーブ州でもターリバーンによる攻撃が頻発するようになりました。2008年には食料価格の高騰や難民問題も発生し、住民の生活はさらに困難を極めました。

2009年以降、大統領選挙が行われる一方で、ターリバーンとの戦闘も継続し、州内の治安は悪化の一途を辿りました。2011年には、中国[[石油天然気集団]]がファーリヤーブ州で石油開発を開始しましたが、治安の悪化により、開発が停滞する状況が続きました。2012年には、ノルウェー軍が治安権限をアフガニスタン軍に移譲しましたが、アフガニスタン軍の士気は低く、治安は改善されませんでした。

2014年以降、ドスタムは第一副大統領となり、ターリバーンとの戦闘を指揮しましたが、依然として状況は好転しませんでした。2015年には、イスラム国（ISIL-K）が台頭し、アフガニスタン国内の治安はさらに悪化しました。

2016年には、ドスタムが元知事を拉致監禁し、性的暴行を加えた事件が発生し、国際的な非難を浴びました。この事件後、ドスタムはトルコに逃亡しました。2017年にはドスタム派と政府軍の間で銃撃戦が起こり、抗議活動や暴動が相次ぎました。

2018年には、ターリバーンによる攻撃が激化し、州内の多くの地域がターリバーンの支配下に入りました。2019年にも戦闘は続き、多くの死傷者が出ました。2021年3月には、アフガニスタン治安部隊とターリバーンの戦闘が激化し、アルマール郡では郡警察長官がターリバーンに寝返るという事態も発生しました。同年6月には、複数の地区がターリバーンに制圧され、ファーリヤーブ州は危機的な状況に陥りました。

行政区分

ファーリヤーブ州は、州都マイーマナ市と13の郡で構成されています。

アルマール郡
アンドホイ郡
ビルチラーグ郡
ダウラターバード郡
グルジーワーン郡
ハーニ・チャールバーグ郡
フワージャ・サブズ・ポーシ・ワリー郡
コーヒスターン郡
パシュトゥーン・コート郡
カラムクル郡
カイサール郡
クルガーン郡
シーリーン・タガーブ郡

産業

ファーリヤーブ州は農業が盛んで、特に小麦や大麦、グレープフルーツの生産が盛んです。また、トウモロコシも多く生産されています。

鉱業においては、州内には油田が確認されており、石油開発も行われましたが、内戦により開発は停滞しています。

交通

州内には、アジアハイウェイ76号線が走り、ヘラートやカブールと繋がっています。また、アンドフボイからはトルクメニスタンと繋がる鉄道が建設中です。

治安

ファーリヤーブ州では、近年、自爆テロやIED攻撃などの事件が多発しており、治安は非常に不安定です。2006年には、ムハンマド風刺漫画掲載問題に対するデモが暴徒化し、ISAF基地が襲撃される事件も発生しました。その他、外国人誘拐事件やISAF軍の車列に対する攻撃、モスクでの自爆テロなど、多くの事件が発生しており、市民の生活は脅かされています。

住民

ファーリヤーブ州には、ウズベク人、パシュトゥーン人、タジク人、トルクメン人など、多様な民族が居住しています。特にウズベク人が多く、人口の半分以上を占めています。言語は、ウズベク語が最も多く話されており、次いでダリー語、パシュトゥー語が話されています。

主な出身者

アブドゥル・マリク

まとめ

ファーリヤーブ州は、豊かな農業地帯であり、多様な民族が暮らす地域ですが、歴史的に様々な勢力が交錯し、近年ではターリバーンとの戦闘が激化しています。その地理的特徴、歴史的背景、社会情勢を踏まえ、今後の平和と安定に向けた取り組みが求められています。

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