アウグル

アウグル（Augur）は、古代ローマにおいて、鳥の動きや鳴き声などの自然現象を観察し、神々の意思を解釈する役割を担った公職です。日本語では「鳥卜官」「卜鳥官」「鳥占官」などと訳され、時には「神官」とも呼ばれます。執政官や法務官などの政務官とは異なり、終身制であったことが特徴です。

アウグルの役割

アウグルの主な役割は、鳥の行動を観察し、その解釈を通じて神の意向を示すことでした。これは単なる宗教的な儀式に留まらず、戦争や商業といった国家の重要な意思決定にも影響を与えました。アウグルの判断は、ローマ社会における重要な指針となり、その権威は非常に大きいものでした。

観測所と観測方法

アウグルの観測所は、ローマ市内を見渡せるカピトリヌスの丘に設けられていました。当初は簡素な小屋があるのみでしたが、彼らはリトゥウスと呼ばれる杖を持ち、トガを頭に被り、南東を向いて鳥を観察しました。観測範囲は、恐らくウィア・サクラを中心線として市内を左右に分け、木を用いて区切られていたと考えられています。

アウグルの選出方法

共和政ローマ初期の頃、アウグルの後任者は前任者の指名によって決定され、事実上パトリキ（貴族）がその地位を独占していました。しかし、紀元前300年に制定されたオグルニウス法により、定員が4人から9人に拡大され、そのうち5人はプレブス（平民）出身者から選出されることになりました。これにより、アウグルの選出に変化が生まれました。

さらに紀元前104年には、護民官グナエウス・ドミティウス・アヘノバルブスによって、17トリブスの選挙によって後継者を選出する法（Lex Domitia de sacerdotiis）が成立しました。これにより、コッレギウム（組合）が作成したリストから選挙で選ばれる形式へと移行しました。その後、紀元前81年にはルキウス・コルネリウス・スッラによって、定員が15人に増員され、ドミティウス法は一時的に取り消されましたが、紀元前63年には護民官ティトゥス・ラビエヌスによって再びドミティウス法が復活しました。

アウグルの歴史的経緯

アウグルの制度は、ローマ建国以前から存在していたとされています。伝説によると、ローマの建国者であるロームルスとレムス兄弟は、どちらが新しい街に名前をつけるかを鳥占いで決めたとされています。

2代目ヌマ・ポンピリウス王は、神々からの知らせとして注意を払うべき自然現象を、鳥占いによって決定しました。また、5代目タルクィニウス・プリスクス王は、ロームルスが定めた3つのケントゥリアの他に、新たな部隊を創設しようとしましたが、アウグルのアットゥス・ナウィウスがこれに反対しました。アットゥスは奇跡を起こし、その結果アウグルの地位が向上し、重要な決定は全て鳥占いで決定されるようになりました。

参考文献

ティトゥス・リウィウス『ローマ建国史』
Giovanni Rotondi (1912). Leges publicae populi romani. Società Editrice Libraria
T. R. S. Broughton (1951). The Magistrates of the Roman Republic Vol.1. American Philological Association
T. R. S. Broughton (1952). The Magistrates of the Roman Republic Vol.2. American Philological Association
L. Richardson, Jr. (1978). “Honos et Virtvs and the Sacra Via”. American Journal of Archaeology ly (The University of Chicago Press) 82 (2): 240-246. JSTOR 504499.

関連項目

就任式 - 英仏語を始めとする欧米語でアウグルを語源とする。
最高神祇官
共和政ローマ鳥卜官一覧

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