アクチノマイシン

アクチノマイシン：抗がん作用を持つ抗生物質

アクチノマイシンは、放線菌の一種であるストレプトマイセス属が生産するポリペプチド系の抗生物質です。別名ダクチノマイシンとも呼ばれ、ペプチド配列の違いにより20種類以上の異性体が存在します。中でもアクチノマイシンDは、研究用試薬や抗がん剤として広く利用されており、商品名コスメゲンとして知られています。

歴史と発見

アクチノマイシンは、1940年にセルマン・ワクスマンとH・ボイド・ウッドラフによって発見されました。放線菌の培養液から発見された最初の抗生物質であり、当初はアクチノマイシンAとBの2種類が知られていました。しかし、その後、多くの類似物質がストレプトマイセス属の様々な菌株から発見され、その構造や性質に関する研究が盛んに行われました。中でも、ストレプトマイセス・パルブルスから得られるアクチノマイシンDは、ほぼ単一の成分からなるため、全合成法が開発され、現在でも主要なアクチノマイシンとして扱われています。1964年には、アメリカ食品医薬品局によって医薬品としての承認を受けています。

構造と作用機序

アクチノマイシンは、アクチノシンという色素に環状ペプチドが2つ結合した独特の構造をしています。アクチノマイシンDの場合、この環状ペプチドはL-トレオニン、D-バリン、L-プロリン、サルコシン、メチルバリンの5つのアミノ酸から構成されています。

アクチノマイシンの抗がん作用は、DNAへの結合による多段階の作用機序に基づきます。まず、アクチノマイシンはDNAの二本鎖に結合し、DNA複製や転写に関与する酵素の機能を阻害します。特に、DNAのグアニン塩基に結合することでDNA依存性RNAポリメラーゼの活性を阻害し、転写を抑制します。さらに、フリーラジカルの生成やトポイソメラーゼIIの阻害を通して細胞傷害性を高め、抗がん効果を発揮します。高濃度では、DNA依存性DNAポリメラーゼも阻害し、DNA複製そのものを抑制することもあります。

効能と用途

アクチノマイシンは強力な抗がん作用を示しますが、同時に強い毒性も持っています。そのため、単剤療法として広く用いられることは少なく、主に小児がん治療における多剤併用療法の一部として使用されます。主な適応疾患には、ウイルムス腫瘍、絨毛上皮腫、破壊性胞状奇胎、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、腎芽腫などの小児悪性固形腫瘍が含まれます。

まとめ

アクチノマイシンは、抗がん作用を持つ最初の抗生物質として発見され、その独特の構造と作用機序から、医学研究において重要な役割を果たしてきました。現在でも、小児がん治療に重要な位置を占めていますが、その強い毒性のため、使用には慎重な検討が必要です。今後の研究によって、より安全で効果的な抗がん剤の開発に繋がる可能性も期待されています。

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