アゼナルコ

アゼナルコ（畦鳴子）

アゼナルコ（学名: Carex dimorpholepis）は、カヤツリグサ科スゲ属に分類される多年草です。水田の畦や湿地帯に生育し、細長い小穂を垂れ下げる姿が特徴的です。和名は、この小穂を鳴子に見立て、畦に生えることに由来します。

形態・生態

根茎は短く、匍匐茎は出しません。
草丈は40～80cm程度。
根元には褐色から赤みを帯びた鞘があり、わずかに糸網が見られます。
葉は直立し、幅は4～10mmで、全体に粉を帯びたような緑色をしています。
花茎は立ち上がり、先端はやや垂れ下がります。
小穂は花茎の先端近くに数個、間隔を置いて付き、それぞれ細い柄で垂れ下がります。小穂の基部からは葉状の苞が伸び、最も下の苞は花序よりも長く、斜めに立ち上がって先端が下を向きます。
小穂は円柱形で、長さは3～6cm。頂小穂は先端側の約半分が雌花、根元側の半分が雄花である雌雄性です。その他の小穂はすべて雌性です。
頂小穂が雌雄性である点は、アゼナルコを識別する上で重要な特徴となります。雄花部は雌花部の半分以下の太さで、雌花の付け根で急に太くなるのが特徴です。
小穂は全体的に淡い緑色で、成熟するとやや黄色みを帯びます。
果胞は楕円形でやや扁平、表面には細かい突起が密生しています。
鱗片は果胞よりも短く、先端がくぼんで芒が大きく突き出ているため、小穂を見ると細かいトゲが並んでいるように見えます。

分布と生育環境

アゼナルコは、中国、台湾、インドネシア、そして日本（本州から琉球列島）に分布しています。

湿地に生育し、かつては水田周辺でゴウソやタチスゲと共によく見られました。近年、圃場整備などにより水田周辺での個体数は減少傾向にありますが、様々な湿地的環境で見られる普通種です。河原に出現することもあります。

類似種との識別

アゼナルコはアゼスゲ節に分類され、形態的に類似した種としてツクシナルコが挙げられます。ツクシナルコは常緑性で深緑色の葉に枯れ葉が混じるため、外観は大きく異なります。また、鱗片に芒がほとんどないこと、果胞にはっきりとした脈がある点も識別ポイントです。

ゴウソもよく見られる種ですが、小穂の特徴から容易に判別できます。ヒメゴウソはゴウソよりも小さいものの、株はむしろ大きく、アゼナルコにやや似ています。ヒメゴウソは頂小穂が雄性であること、果胞が白っぽい緑色であることなどで見分けることができます。

タチスゲも同様の環境に出現しますが、細部の特徴がヒメゴウソに似ています。タチスゲは名前の通り、小穂が垂れ下がることはありません。

アズマナルコもやや似ていますが、山地の水気のある場所に出現することが多く、穂は棒状というより紐状に垂れます。根元に柔らかく厚い鞘を持つ点が特徴です。

他にも、湿地に生え、細長い穂を垂らすスゲはいくつかありますが、頂小穂が雄雌性である点がアゼナルコの重要な識別ポイントとなります。ただし、ツクシナルコやヒメゴウソなどにも頂小穂が雄雌性になる場合があるため、注意が必要です。

参考文献

北村四郎ほか『原色日本植物図鑑 草本編 3 (単子葉類)』（改定49刷）保育社〈保育社の原色図鑑〉、1987年。ISBN 4-586-30017-5。 
勝山輝男『日本のスゲ』文一総合出版〈ネイチャーガイド〉、2005年。ISBN 4-8299-0170-5。 

外部リンク

Carex dimorpholepis Steud. - Germplasm Resources Information Network (GRIN) (英語)
Carex dimorpholepis - National Center for Biotechnology Information（NCBI） (英語)
Carex dimorpholepis - Encyclopedia of Life (英語)
アゼナルコスゲ - 植物雑学事典 (岡山理科大学生物地球学部)
アゼナルコ - カヤツリグサ科植物図鑑 (岡山理科大学生物地球学部)
* スゲ(水辺) - 植物形態学 (福岡教育大学教育学部)

もう一度検索