アゼルバイジャンの歴史

アゼルバイジャンの歴史：古代から現代まで

アゼルバイジャン共和国の歴史は、古くからカフカス地方に根付く様々な勢力や文化の交錯によって形作られてきました。その歴史は、現在の国境を越え、隣接するイラン領アゼルバイジャン（アーザルバーイジャーン）地方とも深く関わり合っています。

古代から中世まで

現在のクラ川北部の地域は、古代にはカフカス・アルバニア王国という独自の国家が存在していました。この王国はクラ川以北（シルバン）、クラ川・アラス川挟地（アラン）、カスピ海沿岸地域（ムガン）といった複数の地域から構成され、それぞれ独自の性格を持っていました。これらの地域は、メディア王国滅亡後のアトロパテネ王国、サーサーン朝、ウマイヤ朝、アッバース朝といったイラン系やアラブ系の王朝による支配を受けながらも、カフカス・アルバニア王国やシルバン・シャー朝といった先住民勢力の支配下で繁栄を続け、カバラ、シャマハ、ガンジャ、バイラカンなどの商業都市が栄えました。アトロパテネ王国は紀元前4世紀から紀元前3世紀にかけて存在し、「アゼルバイジャン」という名称の語源にもなっています。

13世紀から17世紀まで

13世紀にはモンゴル帝国の支配下に入り、イルハン国が成立しました。アランとムガンにはモンゴルのオルド（軍集団）が置かれ、モンゴル遊牧民が定住するようになりました。このモンゴルの支配は、ティムール朝時代を通じて、当地住民のトルコ化を進める要因となりました。15世紀後半にはサファヴィー朝が興隆し、アゼルバイジャン地域を統一、支配下に置きました。サファヴィー朝はアゼルバイジャンをアラス川を境にカラバグとシルバンの二管区に分割して統治しました。サファヴィー朝の下では養蚕が奨励され、アゼルバイジャンは世界有数の養蚕地域として発展しました。しかし1720年代以降は、オスマン帝国とロシア帝国の勢力拡大の野心により、アゼルバイジャンは国際的な争奪の舞台となります。アフシャール朝のナーディル・シャーとの対立も激化し、タリシュ・ハン国といった独立勢力も台頭しました。カージャール朝時代になると、クーバ、カラバグ、シェッキといった独立傾向の強い地域が出現し、独自の民族文化を形成しました。

18世紀から19世紀まで

18世紀以降、ロシア帝国はカスピ海方面への進出を強め、19世紀にはイランとの間で本格的な紛争が発生しました。1813年のゴレスターン条約と1828年のトルコマンチャーイ条約によって、アゼルバイジャン北部はロシア帝国に併合され、ロシア領アゼルバイジャンとイラン領アゼルバイジャンという南北に分かれた状態となりました。ロシア帝国はカフカース総督府を通じてアゼルバイジャンに対し植民地政策を敷き、住民を抑圧しました。しかし、1870年の農奴解放を契機に、資本主義的な発展が始まり、鉄道や石油産業を軸とした産業化が進展しました。特にバクーは石油産業の中心地として発展し、1901年には世界最大の産油地となりました。産業化と民族意識の高まりは、石油労働者を中心とした労働運動や、労資対立の激化を引き起こしました。

20世紀

1917年のロシア革命後、アゼルバイジャンでは民族主義政党であるムサーワート党を中心とした民族ソビエトが形成され、ザカフカース特別委員会による臨時政府が設置されました。しかし、ボリシェビキの勢力拡大や内戦により、バクー・コミューンが樹立されるなど、混乱が続きました。1918年5月には、ムサーワート党によってアゼルバイジャン民主共和国が独立を宣言されました。これはイスラム世界初の共和国でしたが、ナゴルノ・カラバフ問題をめぐりアルメニア第一共和国と戦争状態に突入し、1920年に赤軍の侵攻を受け滅亡しました。その後、アゼルバイジャンはザカフカース社会主義連邦ソビエト共和国の一部となりましたが、1936年にはアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国としてソビエト連邦の構成共和国となりました。第二次世界大戦中は、ドイツとの石油貿易が重要な位置を占めていましたが、1941年の独ソ戦開始以降、バクーはドイツ軍の攻撃目標となりました。しかし、スターリングラード攻防戦でのドイツ軍の敗北により、バクーへの侵攻は阻止されました。1991年8月30日、ソビエト連邦の崩壊に伴い、アゼルバイジャンは独立を宣言し、現在に至っています。

21世紀

現在のアゼルバイジャン共和国は、ソビエト連邦崩壊後の独立国家として、独自の道を歩んでいます。ナゴルノ・カラバフ問題など、歴史的課題を抱えながらも、経済発展や国際関係の構築に努めています。

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