アッシュルバニパルの図書館

アッシュルバニパルの図書館：古代メソポタミアの知識の宝庫

アッシュルバニパルの図書館は、紀元前7世紀にアッシリア帝国の王アッシュルバニパルによってニネヴェ（現在のイラク北部）に建設されました。この図書館は、古代メソポタミアの知識を集積した、当時としては他に類を見ない規模を誇るものでした。

発見の経緯

図書館の存在が再び明らかになったのは19世紀のことです。イギリスの考古学者オースティン・ヘンリー・レヤードとその助手ホルムズド・ラッサムによって、ニネヴェの遺跡から数多くの粘土板が発見されました。これらの粘土板は、アッシュルバニパル王とセンナケリブ王の宮殿跡から出土しましたが、残念なことに、発掘記録が十分に整理されていなかったため、それぞれのコレクションを完全に区別することは困難になっています。

収蔵品の内容

アッシュルバニパルは軍事的な才能だけでなく、学問への深い関心を持っていました。彼は帝国内の各地に書記を派遣し、文書の収集と複製を命じました。その結果、図書館にはシュメール語、アッカド語など、様々な言語で書かれた3万点以上の粘土板や断片が集められました。

収蔵品は多岐にわたり、文学作品、宗教文書、科学的記録、歴史的記録などが含まれています。特に有名なのは、古代メソポタミアの英雄ギルガメシュの冒険を描いた『ギルガメシュ叙事詩』です。また、創世神話『エヌマ・エリシュ』、原初の人アダパの物語、ニップルの貧者の物語なども重要な文学作品として知られています。

図書館には、法律、行政、経済に関する文書も収蔵されていました。これらの文書は、当時の社会構造や生活様式を知る上で貴重な情報源となります。さらに、アッシュルバニパルは占いに強い関心を持ち、占いに関する文書も多数収集しました。これらの文書は、王権の維持や国家の安寧のために重要な役割を果たしたと考えられています。

粘土板の分類と管理

粘土板は、内容に応じて分類され、異なる部屋に保管されていました。金融取引に関する記録は四角形の粘土板に、農業に関する情報は円形の粘土板に記録されるなど、形状にも工夫が凝らされていました。また、粘土板には内容を示す標題や最初の数語が記されており、検索が容易になるように工夫されていました。

図書館の終焉と遺産

紀元前612年、ニネヴェはバビロニア、スキタイ、メディアの連合軍によって破壊され、アッシュルバニパルの宮殿も炎に包まれました。この火災によって、粘土板の一部は焼成され、結果的に保存状態が向上しましたが、蝋板などに書かれていた文書は失われたと考えられています。

現在、発見された粘土板の大部分は大英博物館に収蔵されており、アッシュルバニパル図書館プロジェクトによって目録の作成が進められています。このプロジェクトでは、粘土板の翻字、翻訳、高精細画像の作成などが行われ、古代メソポタミアの知識をより多くの人々が利用できるように公開されています。

アッシュルバニパルの図書館は、古代世界の知識を集積した貴重な遺産です。この図書館の研究を通じて、私たちは古代メソポタミアの人々の文化、思想、生活を知り、人類の歴史に対する理解を深めることができます。

重要な粘土板と円筒

アゼカフ碑文
エサルハドンとテュロスのバアルとの条約
ニムルドの粘土板 (K.3751)
サルゴン2世の角柱A
アンミ・ツァドカの金星粘土板
ギルガメシュ叙事詩
エヌマ・エリシュ
ラッサム円筒形碑文
* K.3364

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