アブドル・ハク

アブドル・ハクの生涯：アフガニスタンの激動と英雄の死

アブドル・ハク（Abdul Haq、1958年4月13日 - 2001年10月26日）は、アフガニスタンの激動の時代を駆け抜けたムジャーヒディーン司令官であり、政治家でした。ソ連・アフガン戦争での勇敢な戦いぶりで知られ、その後のアフガニスタンの政治情勢にも深く関わりました。彼の生涯は、アフガニスタンの近現代史における重要な出来事と密接に結びついています。

生い立ちと家系

アブドル・ハクは、ナンガルハール州出身のパシュトゥーン人で、ギルザイ部族連合アフマドザイ部族の裕福な名家に生まれました。彼の家系はザーヒル・シャー国王とも親交があり、父方の曽祖父ワズィール・アルサラー・ハーンは1869年にアフガニスタンの外務大臣を務めるなど、政治的にも影響力のある家柄でした。また、従兄弟のヒダーヤト・アルサラーは世界銀行の理事を務め、後にカルザイ政権の副大統領に就任しています。アブドル・ハク自身は庶子であったため家督を継ぎませんでしたが、その血筋はアフガニスタンの歴史に深く刻まれています。

教育面では、マドラサで学んだ後、8歳からリセに進学し、パシュトゥー語、ダリー語、英語を自由に操る教養を身につけました。

ムジャーヒディーンとしての活動

1977年、アブドル・ハクはグルブッディーン・ヘクマティヤール率いるイスラム党（ヘクマティヤール派）に参加し、当時の共産主義政権に対する武力闘争に身を投じました。その後、ムハンマド・ユーヌス・ハーリスのイスラム党（ハーリス派）に転じ、ソ連・アフガン戦争ではカーブル地域のムジャーヒディーンを率いる司令官として活躍しました。数々の戦闘でその勇猛さと指揮能力を発揮し、アフガニスタン全土で指導的な立場を得るに至りました。伝えられるところによると、彼は戦場で12回も負傷し、片足を失ったため、常に馬に乗って戦場を駆け巡ったとされています。また、戦傷治療のため日本を訪れたこともありました。

戦後の活動と死

ソ連軍撤退後、アブドル・ハクは1998年に国際連合の和平調停者に就任し、アフガニスタンの平和構築に貢献しようとしました。しかし、2001年10月、ターリバーンに対抗するパシュトゥーン人勢力を復活させるため、アメリカの支援を受け、数百人の支持者とともにローガル州に潜入しました。しかし、潜入からわずか2日後、2001年10月26日に逮捕され、処刑されてしまいました。ガーディアンの報道によると、彼の逮捕は二重スパイによる裏切りが原因であるとされています。また、CIAが彼の能力を過信し、十分な支援を行わなかったという批判も彼の死後、多く報道されました。

ガーディアンは追悼記事で、アブドル・ハクを「有能な指揮官」と評し、「汎民族的ロヤ・ジルガを主導する能力がある数少ない指導者の一人」と称えました。彼の死は、アフガニスタンの将来にとって大きな損失であったと言えるでしょう。

アブドル・ハクは、アフガニスタンの複雑な歴史の中で、その勇気と指導力で人々に希望を与えた英雄として記憶されています。

参考文献

Kaplan, Robert D. Soldiers of God: With the Mujahidin in Afghanistan. Boston: Houghton Mifflin Company, 1990. ISBN 0-395-52132-7

外部リンク

Abdul Haq Foundation
* Afghan Warrior: The Life and Death of Abdul Haq, BBC Four

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