アリー・ザイヌルアービディーン

アリー・イブン・フサイン・ザイヌルアービディーン：シーア派第四代イマーム

アリー・イブン・フサイン（658年1月4日 - 713年10月20日）は、シーア派における第4代イマームであり、預言者ムハンマドの曾孫にあたります。彼はフサイン・イブン・アリーの子であり、「ザイヌルアービディーン」（崇拝者の宝飾）という尊称で知られています。また、「イマーム・サッジャード」とも呼ばれています。

生い立ちと家系

658年、アリー・イブン・フサインはマディーナで誕生しました。父は、シーア派ムスリムが第3代イマームと認めるフサイン・イブン・アリーです。また、アリーの母はサーサーン朝ペルシアの末帝ヤズデギルド3世の娘シャフルバヌーであるという伝承がシーア派には存在します。この伝承から、アリーは「イブン・アル＝ヒラヤタイン（最良の二つの息子）」とも呼ばれます。「最良の二つ」とは、アラブのクライシュ族と、非アラブのペルシア人、特にサーサーン朝を指します。

シーア派の伝承によれば、シャフルバヌーは捕虜としてマディーナへ連行され、当時の正統カリフ・ウマルは彼女を売却しようとしました。しかし、アリー・イブン＝アビー＝ターリブは、彼女にムスリムのいずれかを夫として選ばせ、婚資を公金で賄うことを提案し、ウマルも同意しました。彼女が選んだのがアリーの息子のフサインであり、アリー・ザイヌルアービディーンを生んだ直後に亡くなったとされています。祖父アリー・ブン・アビー＝ターリブが亡くなった時、アリー・ザイヌルアービディーンは2歳ほどでした。

アリー・ザイヌルアービディーンは、生涯で11人の息子と4人の娘をもうけました。

学問への献身

アリー・ザイヌルアービディーンは、生涯を学問に捧げ、預言者のハディースとシャリーア（イスラーム法）の権威となりました。『サヒーファ・アッ＝サッジャーディーヤ』（「お家（預言者ムハンマド家）の規矩」）は、シーア派においてクルアーン、『ナフジュ・アル＝バラーガ』に次いで重要な書物であり、その情報源はアリー・ザイヌルアービディーンであるとされています。また、サイード・イブン・ジュバイルをはじめ、多くからの支持者を得ていました。

敬虔な信徒として

シーア派ムスリムは、アリー・ザイヌルアービディーンの高潔な人格と敬虔さを高く評価し、「ザイヌルアービディーン」という称号は生前から使われていたと考えられています。

カルバラーの戦いとその後

カルバラーの戦いにおいて、父フサインをはじめ、アリー・ザイヌルアービディーンの家族の多くが命を落としました。アリー自身は病弱であったため戦いに参加せず、生き残りましたが、ウマイヤ朝の捕虜としてダマスクスへ連行され、カリフ・ヤズィード1世の虜囚として過ごしました。数年後に釈放され、マディーナへ戻ると、学者・師として静かな人生を送りました。

20年間、食事を供されるたびに涙を流したと伝えられています。ある時、従僕が理由を尋ねると、アリーは「預言者ヤークーブは12人の息子を授かったが、神はその1人を失わせた。ヤークーブは嘆き悲しみ、目は白く濁り、髪は灰色に変わり、背は曲がってしまった。それでも息子は残されていたのだ。私には父、兄弟、叔父など17人もの縁者が惨たらしく殺されたのだ。どうして私の悲しみが終わるだろうか？」と答えたとされています。

死没とその後

アリー・ザイヌルアービディーンは、ヒジュラ暦94/95年（西暦712-714年）にマディーナで亡くなりました。死因は、カリフ・ワリード・イブン・アブドゥルマリク・イブン・マルワーンによる毒殺であるという説もあります。遺体は、マディーナのジャンナトゥル・バキー墓地に埋葬されました。

アリー・ザイヌルアービディーンの後継者をめぐっては、シーア派の分派が生じました。イマーム派（十二イマーム派やイスマーイール派）はムハンマド・バーキルを後継者と認めましたが、一部の人々はザイド・ブン・アリーを支持し、ザイド派を形成しました。

誕生に関する伝承

ザイヌル・アービディーンは、ペルシアの姫君とイマーム・ホセインの間に生まれたという伝承があります。十二イマーム派シーア派が国教となったサファヴィー朝期以降、この伝承はより定着しました。神学者マジュリスィーは、この伝説に関する様々な伝承を紹介しています。

これらの伝承は、ザイヌル・アービディーンの出自にまつわる物語として、シーア派の信仰と歴史の中で重要な役割を果たしています。

アリー・イブン・フサイン・ザイヌルアービディーンは、その生涯を通して、シーア派の信仰と精神性に深い影響を与え、今もなお多くの信徒から敬愛されています。

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