アルゴス (ギリシャ)

アルゴス：古代ギリシアの栄光と歴史を今に伝える都市

アルゴスは、ギリシャ共和国ペロポネソス地方の北東部に位置する都市で、約2万5000人の人々が暮らしています。古代ギリシア時代には都市国家として栄え、アルゴリス地方の中心地でした。現在ではアルゴリダ県アルゴス＝ミキネス市に属し、その中心地区となっています。

アルゴスの名の由来

アルゴスという地名は、アルゴリス、アルゴリダ、アルゲイアなど、さまざまな名で知られています。この地に住む人々は「アルゲイオイ」と呼ばれていました。伝統的な俗説では、この名前はギリシャ神話に登場する百眼の巨人アルゴスに由来するとされています。しかし、比較言語学的には、インド・ヨーロッパ祖語の「arg-（光る、輝く）」を語源とする形容詞「argós（ちらちら光る、動きの速い）」に由来し、「明るく輝く」という意味を持つと考えられています。神話上の巨人アルゴスとの関連は、後付けである可能性が高いです。

地理的特徴

アルゴスはペロポネソス半島の北東部、アルゴリコス湾の奥から約6km内陸に位置します。ペロポネソス地方東北部最大の都市コリントスと、同地方の首府トリポリのほぼ中間に位置し、コリントスからは南南西約40km、トリポリからは東北東約35kmの距離にあります。また、東南約10kmには歴史的な港湾都市ナフプリオがあり、アルゴリダ県の県都はナフプリオに置かれています。

現在のアルゴスは、古代のアルゴスと同じ場所に位置しており、市街地には劇場やアゴラ、浴場などの遺跡が残っています。かつては周辺地域を含めて自治体アルゴス市を形成していましたが、2010年の地方制度改革により、ミキネス市などと合併し、アルゴス＝ミキネス市の一部となりました。

アルゴスは、アルゴリコス湾の湾奥に広がるアルゴス平野の中心に位置しています。この地域はミケーネ文明が栄えた場所であり、アルゴスの北約10kmにはミケーネの遺跡、東南約7.5kmにはティリンスの遺跡があります。市街の西には標高267mの丘があり、古代にはアクロポリスとして利用され、中世にはヴェネツィア人によってラリッサ城が築かれました。

歴史

アルゴスの歴史は古く、新石器時代には既に人が居住していました。アルゴスからミケーネに向かって約8.3kmの場所には新石器時代の居住区があり、その近くにはヘーラーを祀った聖域がありました。ミケーネ文明の時代には重要な集落として発展し、肥沃なアルゴス平野の中心に位置していたため、早くから人が居住しました。

紀元前7世紀には、アルゴスは南東のスパルタとペロポネソス地域の覇権を争い、紀元前669-668年頃のヒュッシアイの戦いでスパルタに勝利し、全盛期を迎えました。当時の僭主フェイドンは、度量衡の統一や重装歩兵を用いた戦術の導入など、多くの革新をギリシアにもたらしました。フェイドンは、オリンピア競技祭の主催者としての地位を奪い、自身が主催者となったこともあります。しかし、紀元前494年のセペイアの戦いでスパルタに大敗し、覇権を失いました。

古典期以降のアルゴスは、他の都市に対して孤立主義的な姿勢を強めました。ペルシア戦争では中立を貫き、その後の影響力を縮小させました。ペロポネソス戦争では、アテネの弱体化に伴い、スパルタに対抗するため、周辺都市と同盟を結びましたが、紀元前418年のマンティネイアの戦いで敗北し、内紛に陥りました。その後、コリントス戦争で短期間連合を組みましたが、分裂し、ギリシア情勢に大きな影響を与えることはありませんでした。マケドニアのフィリッポス2世とアレクサンドロス大王によるギリシア制圧後も破壊を免れましたが、紀元前272年にはエピロス王ピュロスの攻撃を受けました。

中世には、ラリッサの丘にラリッサ城が建てられました。アルゴスは、十字軍、ヴェネツィア共和国、オスマン帝国の支配下を経験し、1821年のギリシャ独立戦争が始まると、一時的に「アルゴス執政政府」が設立されましたが、最終的にはギリシャ王国に合流しました。

現代のアルゴス

現在、アルゴスの遺跡は観光名所として人気があり、多くの観光客が訪れます。この地域の主要産業は農業で、特に柑橘系の果物の収穫が盛んです。オリーブも重要な産物です。

アルゴスは、ペロポネソス半島を縦断する幹線交通路に位置しており、コリントスからトリポリを経由してカラマタへ続く重要な交通の要衝となっています。鉄道網も整備されており、ギリシャ国鉄のアルゴス駅があります。

文化・観光

アルゴスはギリシア神話の主要な舞台の一つでもあります。半神の英雄ペルセウスは、アルゴスの王女ダナエーとゼウスの間に生まれた子であり、メドゥーサを退治し、アンドロメダーを妻に迎えた後、アルゴスに帰国して王になったと伝えられています。

アルゴスの考古学博物館には、劇場やアゴラなどの主要な遺跡から発掘された出土品が展示されています。また、レルナ遺跡からの出土品も収蔵されています。

アルゴスは、古代ギリシアの歴史と神話が息づく、魅力的な都市です。

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