アルチャル

アルチャル：モンゴル帝国の勇将、金朝との戦いにおける功績

アルチャル（生没年不詳）は、モンゴル帝国に仕えた将軍であり、拓跋氏の出身です。『元史』では按札児(ànzháér)と表記されます。

生涯

アルチャルがどのような経緯でモンゴル帝国に仕えるようになったのかは不明ですが、チンギス・カンの目に留まり、金朝との戦いに起用されるようになりました。第一次金朝遠征において、チンギス・カンは金朝領各地で金軍を破り、略奪を行い、モンゴル帝国に有利な条件で講和を結びました。その後、金朝方面に駐屯するモンゴル軍の指揮権は、「四駿」の一人であるムカリに委ねられます。ムカリの配下には、コンギラト部、イキレス部、マングト部、ウルウト部といった帝国左翼の有力部族や、漢人、契丹人、女真人などの現地徴発兵が集められました。この軍勢の「先鋒」として、ココ・ブカ、ボロト、セウニデイ、ブルガイ・バアトルと共に、アルチャルが「五部将」の一人として抜擢されたのです。

1219年、河中府を降伏させたムカリ軍は一度北へ帰還しますが、アルチャルが「前鋒総帥」として平陽に駐屯していたため、アルチャルの威名を恐れた金軍は、北上するムカリ軍に手出しできなかったと伝えられています。

1222年、河北一帯の制圧を終えたムカリは、陝西方面への進出を計画し、その道中の要衝である河中府を石天応に守らせました。しかし、石天応は金朝の侯小叔による奇襲を受け、敗北。河中府を失ったムカリ軍は、敵中に孤立する危機的状況に陥ります。この時、アルチャルは再び河中府を急襲し、「斬首数万級、逃れた者は僅か数十人」という大勝利を挙げ、河中府を奪還しました。これにより、ムカリ軍は無事に退却することができたのです。この「河中府の戦い」は当時非常に有名であり、『金史』や『元史』など、複数の史書に言及されています。

河中府の戦いの後、1223年にムカリが亡くなると、アルチャルはその後を継いだボオルに引き続き仕えました。1230年には、ボオルの衛州攻囲に加わりますが、金軍の奇襲を受け、妻の奴丹氏が捕虜となってしまいます。金の皇帝は、アルチャルを寝返らせるために奴丹氏を利用しようとしましたが、奴丹氏はこれに応じませんでした。奴丹氏は、アルチャルの説得を受け入れたと見せかけ、モンゴル軍の下に帰還することに成功し、第2代皇帝オゴデイから厚く褒賞を受けました。その後、アルチャルはオゴデイ自らが率いる本隊に従軍し、潞州・鳳翔攻略に加わり、対金朝遠征における最大の激戦となった三峰山の戦いでも活躍しました。

三峰山の戦いの翌年（1232年）、オゴデイ率いる本隊は北へ帰還しましたが、テムデイ・コルチの下で、アルチャル軍は引き続き開封攻囲に加わりました（開封攻囲戦）。城中の民はアルチャルの旗を見て、「アルチャルの妻は勇と義に溢れた女性である。ましてやその夫はより優れた人物であろう」と語り合ったと伝えられています。1234年に金朝が完全に滅亡すると、アルチャルは自らが駐屯する平陽に投下領を与えられ、その後間もなく亡くなりました。

アルチャルには、忙漢と拙赤哥という2人の息子がいました。拙赤哥は李璮の乱鎮圧の際に若くして戦死しましたが、忙漢はナヤンの乱やカイドゥの乱討伐などで活躍し、1311年まで存命しました。

タンマチ「五部将」

アルチャル
ボロト
セウニデイ
ブルガイ・バアトル
* ココ・ブカ
※ブルガイ・バアトルは後にケレイテイと交替。

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