アルマニャック家

アルマニャック家（Maison d'Armagnac）は、960年にアルマニャック伯ベルナール1世によって創始された、フランスの由緒ある貴族の家系です。14世紀から15世紀にかけて、その歴史の中で重要な役割を果たしました。

勢力拡大と王家との関係

13世紀末、アルマニャック家は政治的に大きな力を持っていたわけではありませんでした。しかし、フランス南西部を支配していたトゥールーズ伯家がアルビジョア十字軍でフランス王家に敗北した後、在地貴族であるコマンジュ伯やフォワ伯、アルブレ家などが勢力を拡大する中で、アルマニャック家も台頭してきました。

14世紀初頭には、ロデーズ伯領を獲得したことで、アルマニャック家は有力領主の仲間入りを果たしました。これらのガスコーニュ地方の所領を通じて、貴族の中で勢力を拡大し、フランス王家とも関係を深めていきました。婚姻関係を通じて、王家と親密な関係を築く一方で、15世紀には王家との距離を置き、フランスの封建制度における論争で重要な役割を果たすようになります。

独立の試みと断絶

14世紀から15世紀にかけて、アルマニャック家はシャロレー、ラ＝マルシュ、パルディアック、カストルなどの伯領、そして後に公領となるヌムールやカルラデなどを相続しました。しかし、15世紀にはフランス王家との対立が深まり、独立の気運を高めました。これに対して、フランス王ルイ11世は武力でこの独立の動きを鎮圧し、アルマニャック家は再び勢力を回復することなく、16世紀には断絶しました。

アルマニャック家の中で最も有名なのは、ベルナール7世です。彼は百年戦争において、アルマニャック派の指導者として、ブルゴーニュ派と激しく対立しました。

起源

アルマニャック家は、8世紀または9世紀に現れたガスコーニュ公家から分かれた家系です。ガスコーニュ公ガルシア2世・サンチェスが930年に亡くなった際、公領は3人の息子に分割相続されました。そのうち、フェザンサック伯ギヨームがアルマニャック伯領を切り離し、息子であるベルナール1世に与えたのがアルマニャック家の始まりです。ベルナール1世の息子であるベルナール2世は、母親からビスケー伯位を継承しましたが、アキテーヌ公ギヨーム8世によって剥奪されました。1140年には兄系のフェザンサック伯家が断絶し、弟系のアルマニャック家がこれを相続することになります。

ロデーズ伯領の継承

13世紀末から14世紀初頭にかけて、アルマニャック伯家はロデーズ伯領を婚姻を通じて継承しました。ジャン1世とジャン2世の父子は、フランス王家との関係をさらに深めることになりました。

ジャン1世の娘ジャンヌはベリー公ジャン1世と結婚し、その娘ボンヌは従兄であるアルマニャック伯ベルナール7世と結婚しました。さらに、ベルナール7世とボンヌの娘ボンヌはオルレアン公シャルルと結婚しました。1407年にオルレアン公ルイ（シャルルの父）がブルゴーニュ派に暗殺されると、ベルナール7世は反ブルゴーニュ派の指導者となり、アルマニャック派が誕生しました。

アルマニャック派とブルゴーニュ派の対立

1407年のオルレアン公ルイの暗殺から1435年のアラスの和約までの間、アルマニャック家はイングランドと同盟していたブルゴーニュ派と対立しました。アルマニャック派はフランスの武装勢力の代表的な存在でした。

王家からの独立闘争と終焉

14世紀から15世紀初めにかけては王家に従っていましたが、次第に王家からの独立を求めるようになりました。アルマニャック家は百年戦争での役割から、他の貴族よりも多くの権利を得るべきだと考えていました。しかし、ルイ11世は彼らの思惑よりもはるかに好戦的な王でした。

15世紀末、アルマニャック家は独立した権利（貨幣の鋳造など）を主張するようになり、ルイ11世の怒りを買いました。1473年、アルマニャック伯ジャン5世は、アルビ司教ジャン・ジュフロワ率いるフランス軍によってレクトゥールで包囲され殺害されました。ジャン5世は妻ジャンヌ・ド・フォワの目の前で殺害され、財産は略奪され、焼き払われました。妻ジャンヌは宝石を奪われ、妊娠7ヶ月であったにも関わらず、ビュゼ＝シュル＝タルヌの城に投獄され、中絶薬を飲まされて死産しました。その後、1476年2月にジャンヌも亡くなりました。

ヌムール公ジャックとジャン5世の両名は、ルイ11世の復讐の標的となりました。ジャックとジャン5世は、アルマニャック伯ベルナール7世の男系孫3人のうちの2人でした。唯一残った男系子孫はフェザンサゲ子爵シャルル1世でした。シャルルは1425年生まれで、1497年6月3日に後継者なく72歳で亡くなりました。シャルルはルイ11世によって13年間も牢獄に監禁されていました。ルイ11世によってアルマニャック家が断絶させられた後、アラン1世・ダルブレがアルマニャック伯領を占領しました。

アルマニャック家は、その歴史の中で数々のドラマを生み出し、フランス史に深く刻まれた名門貴族でした。

参考文献

Dunbabin, Jean, France in the making, 843-1180, Oxford University Press, 2000.
Knecht, Robert, The Valois: Kings of France 1328-1589, Hambledon Continuum, 2007.

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