アルヴィス・カー・アンド・エンジニアリング・カンパニー

アルヴィス・カー・アンド・エンジニアリング：英国自動車史に輝く名門の興亡

1919年、TGジョン・アンド・カンパニーとして創業したアルヴィスは、当初据置型エンジンやキャブレターなどを製造していました。しかし、設立者のTGジョンがジェフリー・ド・フレヴィルに依頼した4気筒エンジンの開発をきっかけに、その名は大きく躍進します。このエンジンはアルミニウム製ピストンと圧力潤滑を採用するなど、当時としては画期的な技術でした。社名「Alvis」は、アルミニウムとラテン語の「vis（強い）」を組み合わせたものとされていますが、真相は定かではありません。

最初の乗用車「10/30HP」は、高い品質と性能で瞬く間に名声を獲得。その後、1921年には社名をアルヴィス・カー・アンド・エンジニアリング・カンパニー・リミテッドに変更し、コヴェントリーに移転します。デイムラー出身のGT・スミス＝クラークやWM・ダンといった優秀な技術者たちの加入により、アルヴィスは更なる発展を遂げます。スミス＝クラークとダンは長年にわたって協働し、数々の名車を世に送り出しました。

アルヴィスを代表するモデルの一つに「12/50HP」があります。サイドバルブエンジンから改良を重ね、OHVエンジンを搭載したこの車は、1932年まで生産され、現在でも高い評価を受けており、ビンテージカーとして多くの愛好家に支持されています。現在、全生産量の約1割に当たる数百台が、大切に保存されています。また、1927年に生産された6気筒エンジン搭載の「14.75HP」は、その後も改良が重ねられ、長年にわたって生産されたアルヴィス車の基礎となりました。

アルヴィスは、独立懸架や前輪駆動といった革新的な技術にも積極的に取り組み、1933年には世界で初めてシンクロメッシュトランスミッションの開発にも成功しました。前輪駆動モデルは1928年から1930年にかけて生産され、時代の先端を行く技術力を示しました。1930年代から1940年代にかけては、スミス＝クラークの設計による「Speed 20」、「Speed 25」、「4.3リットル」などが生産されました。これらの車のコーチワークは、クロス・アンド・エリス、チャールズワース、バンデン・プラといった著名なコーチビルダーによって手がけられました。

第二次世界大戦勃発により、1939年から1946年にかけて乗用車の生産は一時中断されましたが、航空機エンジンや軍用車両の生産は継続されました。戦後、アルヴィスは戦前の設計を基にした「TA 14」などを生産しましたが、スミス＝クラークの退任後、ダンが設計を引き継ぎました。1950年には新型の6気筒3リットルエンジンが発表され、これは会社が生産を終了するまで使用されました。当時、天才的なデザイナーとして知られたアレック・イシゴニスも1952年から1955年にかけてアルヴィスで働き、V型8気筒エンジンの設計にも携わりましたが、コスト高のため生産には至りませんでした。

アルヴィス車のボディ製作は、初期はバーミンガムのH・J・ミュリナーが行っていましたが、1955年からはスイスのヘルマン・グラバーに委託されるようになり、高級感あふれるスペシャルボディも提供されました。1965年にはローバーがアルヴィスの資本を握ることになりますが、その後ブリティッシュ・レイランドに経営権が移転し、乗用車の生産は1967年に終了しました。その後は軍用車両の生産に特化しました。

1981年にはユナイテッド・サイエンティフィック・ホールディングスに買収され、社名はアルヴィスplcに変更されました。アルヴィスの工場跡地は現在ショッピングセンターとして利用されており、その地名は「アルヴィス・リテール・パーク」として、かつての栄光を今に伝えています。2009年にはレッド・トライアングル社がアルヴィスの自動車商標を取得し、2010年から往年のモデルのハンドメイドによる生産・販売を再開、日本でも販売が開始されています。アルヴィスは、その技術力と伝統を受け継ぎ、現代においても自動車史に名を残す存在として生き続けているのです。

主な車種（乗用車）

10/30HP
12/50HP
14.75HP
Speed 20
Speed 25
4.3リットル
TA 14

主な車種（軍用車両）

FV601 サラディン
FV603 サラセン
FV101 スコーピオン
FV106 サムソン
Alvis Stalwart
* Alvis Stormer

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