アレクサンドル・メリク＝パシャーエフ

アレクサンドル・シャミーリエヴィチ・メリク＝パシャーエフ（1905年 - 1964年）は、ソビエト連邦で活躍した著名な指揮者であり、作曲家でもありました。アルメニア系の出自を持ち、その才能はソ連人民芸術家の称号（1951年）に裏打ちされています。本名はメリク＝パシャーヤンといいました。

生涯とキャリア

メリク＝パシャーエフは、グルジアのティフリス（現在のトビリシ）で生まれました。音楽家としての道を歩み始め、トビリシ音楽院でニコライ・チェレプニンに師事した後、レニングラード音楽院に進みました。そこでは、アレクサンドル・ガウクに指揮法を、ウラディーミル・シチェルバチョフに作曲を学び、1930年に卒業しました。

1923年から1931年までトビリシ歌劇場の指揮者を務め、その才能を開花させました。1931年からはボリショイ劇場に活動の拠点を移し、指揮者として重要な役割を担いました。1953年から1963年までの10年間は、音楽監督としてボリショイ劇場の芸術面を統括し、その国際的な評価を高めることに貢献しました。彼のリーダーシップのもと、ボリショイ・オペラは数々の海外公演を成功させ、ソ連の音楽文化を世界に広めました。

また、1933年から1934年にかけては、モスクワ音楽院附属オペラ劇場の音楽監督も務め、若手音楽家の育成にも尽力しました。1938年には、全ソ指揮者コンクールで第2位に入賞し、その実力を改めて示しました（ちなみに、この時の第1位はエフゲニー・ムラヴィンスキーでした）。

1942年には、チャイコフスキーのオペラ『チェレヴィチキ』、翌1943年にはロッシーニのオペラ『ウィリアム・テル』の演出によって、スターリン賞第1席を受賞しています。これは、彼の芸術に対する国家的な評価を示すものでした。

レパートリーと録音

メリク＝パシャーエフは、幅広いレパートリーを持っていましたが、特にジュゼッペ・ヴェルディを敬愛していました。少年時代からヴェルディの音楽に親しみ、オペラ『アイーダ』はモノラルとステレオの両方で録音を残しています。また、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団とのヴェルディのレクイエムの録音も、彼の代表的な業績の一つです。

作曲家として

指揮者としての活動が中心でしたが、作曲家としても才能を発揮しました。レールモントフの原作に基づくオペラ『ペチョーリン』、シェイクスピア原作の『十二夜』、交響曲ハ短調、プーシキンやエレンブルグの詩につけた歌曲などを作曲しています。

1964年、モスクワで生涯を閉じ、ノヴォデヴィチ墓地に埋葬されました。

主要な録音

以下は、メリク＝パシャーエフがボリショイ劇場管弦楽団・合唱団を指揮したソ連録音（メロディア）の主なものです。

グリンカ：オペラ『イヴァン・スサーニン』（1947年）
チャイコフスキー：オペラ『チェレヴィチキ』（1948年）
チャイコフスキー：オペラ『スペードの女王』（1949-1952年)
アントン・ルビンシテイン：オペラ『悪魔』（1950年）
ボロディン：オペラ『イーゴリ公』（1952年）
ヴェルディ：オペラ『アイーダ』（1953年（モノラル）および1961年（ステレオ）の2種）
プロコフィエフ：オペラ『戦争と平和』（1961年）
ムソルグスキー：『ボリス・ゴドゥノフ』（1962年）

オペラ以外の録音

チャイコフスキー：交響曲第6番 ロ短調 Op.74 「悲愴」（1956年（1960年？））
ヴェルディ：レクイエム（1960年）
* フランツ・シューベルト：交響曲第7番 ロ短調 D759『未完成』（1962年）



メリク＝パシャーエフの録音は、彼の卓越した指揮技術と音楽性を今に伝える貴重な遺産です。

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