アンスコ (アメリカ合衆国の企業)

アンスコ：アメリカの歴史あるカメラ・フィルムメーカー

アンスコ（Ansco）は、かつてアメリカ合衆国ニューヨークに拠点を置いていた写真機および写真フィルムの製造・販売会社であり、そのブランド名です。前身のアンソニー時代を除き、カメラメーカーとしては高級機をあまり製造しませんでしたが、かつてはアメリカ合衆国で第2位のフィルムメーカーでした。

アンスコの歴史

前史：スコービル

1802年、スコービル（Scoville Co.）は、写真発明以前から錠前を含む真鍮加工業を営んでおり、その後、様々な木製カメラを製造するようになり、アメリカ最古のカメラメーカーとなりました。

前史：アンソニー

創業者のエドワード・アンソニー（Edward Anthony）は、大学卒業後、土木技師として働きながら、余暇にサミュエル・モールスからダゲレオタイプの技術を学びました。

1841年：エドワード・アンソニーがニューヨークに写真スタジオを開設しました。
1842年：写真スタジオの副業として、カメラメーカー「E・アンソニー（E. Anthony & Co.）」を設立しました。
1852年：エドワード・アンソニーの兄が参加し、「E & HT アンソニー（E & HT Anthony & Co）」に社名を変更しました。
1870年：高級木製カメラ「アンソニー（Anthony）」を発売し、写真館にあるプロ用木製カメラの代名詞となりました。また、透明セルロイドをベースとする写真フィルムを発明し、コダックとの間で特許訴訟になっていたハンニバル・グッドウィン（Hannibal Goodwin）を支援しました。

アンスコへ

1902年：アンソニーとスコービル & アダムス（Scoville & Adams）が合併し、「アンソニー & スコービル（Anthony & Scoville）」となりました。
1907年：「アンスコ（Ansco）」に改名しました。
1914年3月27日：グッドウィンに対しコダックから500万ドルの賠償金が支払われましたが、すでにグッドウィンは亡くなっており、この賠償金はアンスコが受け取りました。
1928年：アグフア（現在のアグフア・ゲバルト）と合併し、「アグフアアンスコ（Agfa-Ansco）」となりました。
1943年：アグフアのアンスコ部門・ブランドとなりました。
1963年：GAFフィルムとなり、アンスコのブランドが消滅しました。

アンスコのカメラ製品

初期には自社製造の高級木製カメラで有名でしたが、アグフアとの合併後は、アグフア・ゲバルト、ミノルタ（現コニカミノルタ）、リコー、チノンなどからのOEM供給が中心となり、大衆向けの製品が多くなりました。日本国内の代理店はシュリロ貿易（現シュリロトレーディング）でしたが、駒村商会でも取り扱いがありました。

120フィルム使用カメラ

アンスコ2号：アンスコ0号をベースに、120フィルムを使用する6×9cm判カメラ。
スピーデックス（Speedex）（1946年頃発売）：6×6cm判カメラ。距離計は搭載されていません。
アンスコオートマチックレフレックスF3.5（Ansco Automatic reflex/3.5）（1947年発売）：6×6cm判の二眼レフカメラ。ウォレンサック製のアンスコアナスチグマット83mmF3.5またはヴェロスチグマット83mmF3.5レンズを搭載。描写の良いレンズで、プロも使用できる高級機でした。初期型はフィルム巻き上げとシャッターセットが連動していませんでしたが、後に改良されました。フィルム装填は赤窓式、フィルム巻き止めはセミオートマット。

127フィルム使用カメラ

アンスコ0号：127フィルムを使用する「アンスコ・ヴェスト」と呼ばれるカメラ。ヴェスト・ポケット・コダックの追随品ですが、比較的安価なモデルにもラピッド・レクチリニアレンズを搭載。
カデットII（Cadet II）
カデットレフレックス（Cadet Reflex）（1959年発売）：4×4cm判の二眼レフカメラ型ですが、マット面はなく、機能的にはボックスカメラに近い。

135フィルム使用カメラ

アンスコメモ（Ansco Memo）（1925年発売）：35mmフィルムを使用する初期の24×18mm（ハーフ）判カメラ。木製ボディで、シネマットF6.3レンズ、アイレックスのエバーセット式シャッターを搭載。発売と同時に、現像タンク、プロジェクター、引き伸ばし機なども用意され、システムカメラとしても初期の製品です。
リージェント（Regent）：135フィルムを使用。アグフア製ゾリネッテ（Solinette）のOEM。距離計はなく、テッサー型3群4枚のゾリナー（Solinar）50mmF3.5レンズを搭載。
スーパーリージェント（Super Regent）：135フィルムを使用。アグフアのスーパーゾリネッテ（Super Solinette）のOEM。ファインダーに連動距離計を内蔵。レンズはテッサー型3群4枚のゾリナー（Solinar）50mmF3.5。
アンスコメモIIオートマチック（Ansco Memo II）（1963年発売）：135フィルムを使用。24×18mm判（ハーフ判）。リコーのオートハーフゾーンフォーカスのOEM。

616フィルム使用カメラ

クリッパー（Clipper）：616フィルムを使用。
フラッシュクリッパー（Flash Clipper）：616フィルムを使用。
クリッパースペシャル（Clipper Special）：616フィルムを使用。

620フィルム使用カメラ

パンダ（Panda）（1939年発売）：620フィルムを使用する二眼レフカメラ型だが、マット面はなく、機能的にはボックスカメラに近い。
アンスコフレックス（Anscoflex）：620フィルムを使用する6×6cm判カメラ。エナメル仕上げの金属ボディで、特徴的なスライド式の前面保護カバー兼ファインダーフードを備えています。二眼レフカメラ型ですが、マット面はなく、ボックスカメラに近い初級機です。デザインはレイモンド・ローウィ。エバーセット式シャッターを搭載。
アンスコフレックスII（Anscoflex II）（1954年発売）：アンスコフレックスの改良型で、クローズアップとY1フィルターが組み込まれています。

写真乾板使用カメラ

アンソニースタジオカメラ（1870年発売）：写真乾板を使用する約25×35cm判の大型カメラ。写真館にあるプロ用木製カメラの代名詞となりました。

フィルム製品

アンスコは、リバーサルフィルムのアンスコクロームで知られています。

参考文献

北野邦雄『現代カメラ新書No.3、世界の珍品カメラ』朝日ソノラマ
『クラシックカメラ専科』朝日ソノラマ
『クラシックカメラ専科No.38、プラクチカマウント』朝日ソノラマ

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