アーニー・ロス

アーニー・ロス。その名は、プロレス史に燦然と輝く、カリスマ的マネージャーとして刻まれている。1929年オハイオ州カントンに生まれた彼は、ラジオのディスクジョッキーとして培った卓越した話術を武器に、1960年代初頭、プロレス界へと足を踏み入れる。

当初はJ・ウェリントン・ラドクリフやミスター・クリーンといったリングネームで活動していたロスだが、持ち前の才能と巧みな話術で徐々に頭角を現していく。ジョニー・バレンド&マグニフィセント・モーリスのマネージャーを務め、彼らとのタッグマッチにすら出場するなど、枠にとらわれない活躍を見せた。デトロイト時代には、アブドーラ・ファルークの名でザ・シークのマネージャーも務めたという経歴も持つ。

そして、彼のキャリアに大きな転機が訪れる。ニューヨークのWWWF（後のWWF）で、彼は「偉大なるレスリングの魔術師」ザ・グランド・ウィザード・オブ・レスリングとして生まれ変わったのだ。このリングネームで、彼は数々のスターレスラーを率い、WWFを代表するヒールマネージャーとしての地位を確固たるものにしていく。

彼のマネージメント下にあったレスラーは、錚々たる顔ぶれを誇る。シーク、キラー・コワルスキー、アーニー・ラッド、ブラックジャック・マリガン、スタン・スタージャック、ボビー・ダンカン、ブルーザー・ブロディ、そしてスーパースター・ビリー・グラハムなど、その名前を聞けばプロレスファンなら誰もが知るレジェンドたちが名を連ねる。

中でも、ビリー・グラハムとの関係は特に有名だ。ロスはグラハムを巧みに操り、1977年4月30日には、ブルーノ・サンマルチノを破り、WWWFヘビー級王座獲得という快挙をもたらした。この成功は、ロスのマネージャーとしての力量を決定的に証明するものとなった。

しかし、ロスの華々しいキャリアは、突然の幕切れを迎える。NWAからWWFに移籍してきたポール・オーンドーフのマネージャーを務めることが決まっていた矢先、1983年10月12日、心臓発作により54歳の若さでこの世を去ったのだ。ビンス・マクマホン・ジュニアによるWWF全米進出計画が始まる直前の出来事だった。

彼の死は、プロレス界に衝撃を与えた。多くのレスラー、そしてファンが、その早すぎる死を悼んだ。しかし、ロスの功績は決して忘れられることはない。1995年、彼はWWF殿堂入りを果たし、その名を永遠にプロレスの歴史に刻み込んだのだ。サージェント・スローターがインダクターを務めたこの栄誉は、彼の偉大な業績を後世に伝える、最高の証と言えるだろう。

巧みな話術と、レスラーを操る戦略家としての才能。そして、時に冷酷で、時にユーモラスなキャラクター。アーニー・ロス、ザ・グランド・ウィザードは、まさにプロレスマネージャーの理想像と言える存在だった。彼の活躍は、多くのプロレスファンに今も語り継がれ、伝説として生き続けている。

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