アーニー・ラッド

アーニー・ラッド：フットボールとプロレスの巨星

アーニー・ラッド（1938年11月28日 - 2007年3月10日）は、アメリカンフットボールとプロレスの両分野で活躍した伝説的なアスリートです。ルイジアナ州レイビル出身のアフリカ系アメリカ人である彼は、恵まれた体格と類まれな才能で、それぞれの競技で輝かしい成功を収めました。その圧倒的な存在感から、プロレス界では「黒い毒グモ」という異名で知られました。

アメフト界での活躍

高校時代からアメリカンフットボールに打ち込んだラッドは、グランブリング州立大学に進学し、その才能を開花させます。1961年にはAFLドラフトでサンディエゴ・チャージャーズに入団。リーグ随一の巨漢として、チームのAFLチャンピオンシップゲーム3回出場に貢献し、1963年にはAFLチャンピオンの栄冠を掴みました。チャージャーズ時代には、ロン・ネリー、ビル・ハドソン、アール・フェイソンらと共に「恐怖の4人組」と呼ばれ、リーグを代表するディフェンスラインを形成しました。

その後、ヒューストン・オイラーズ、カンザスシティ・チーフスと移籍を繰り返しながらも、その圧倒的な存在感を示し続けました。チーフスではバック・ブキャナンと強力なタッグを組み、プロフットボール史上最大のディフェンシブタックルコンビとして活躍。4年連続でAFLオールスターにも選出されるなど、輝かしいキャリアを築き上げました。ボストン・ペイトリオッツのセンター、ジョン・モリスは、ラッドと対峙した際に、その巨体ゆえに後方のラインバッカーやゴールポストが見えなかったと証言しています。1981年にはサンディエゴ・チャージャーズ殿堂入りを果たしました。

プロレス界での活躍

アメフト選手として活躍する傍ら、1963年にはプロレスラーとしてデビュー。恵まれた体格と運動能力を活かし、スーパーヘビー級のベビーフェイスとして瞬く間に人気を博します。WWA（ロサンゼルス）を主戦場に、フレッド・ブラッシーやザ・デストロイヤーらと激闘を繰り広げ、1964年にはエドワード・カーペンティアとのタッグでWWA世界タッグ王座初代王者に輝きました。

デビュー間もない1964年には、ルー・テーズのNWA世界ヘビー級王座に挑戦。時間切れ引き分けという結果に終わりましたが、その実力は既にトップクラスであることを証明しました。翌年にはNWAテキサス・ヘビー級王座を獲得するなど、各地でタイトルを獲得。WWWFではボボ・ブラジルとタッグを組み、ジェリー・グラハム&ルーク・グラハムやキラー・コワルスキーといった強豪たちと対戦しました。AWAではバーン・ガニアと組んで、ラリー・ヘニング&ハーリー・レイスのAWA世界タッグ王座にも挑戦するなど、全米各地の主要団体で活躍しました。

1968年にはヒールに転向し、ブルーノ・サンマルチノのWWWF世界ヘビー級王座にも挑戦。膝の負傷により1969年にアメフトを引退すると、プロレスに専念。1970年代以降は、アンドレ・ザ・ジャイアントやブルーザー・ブロディのように、特定の団体に所属せず、フリーエージェントとして全米各地を転戦。NWA、AWA、WWWF、WWA、NWFなど主要団体でトップレスラーとして活躍し、数々のタイトルを獲得しました。

日本にも1970年に初来日し、ロッキー・ジョンソンとのタッグでNWAタッグリーグ戦に出場。優勝候補として期待されましたが、チームワークに課題を残し決勝進出とはなりませんでした。1974年にはアントニオ猪木と対戦し、カウンターキックで猪木からフォールを奪うなど、激しい試合を繰り広げました。

WWWFでは常連ヒールとして、ブルーノ・サンマルチノ、ペドロ・モラレス、ボブ・バックランドといった歴代王者に幾度も挑戦。イワン・コロフやスーパースター・ビリー・グラハムらと共闘し、アンドレ・ザ・ジャイアントとの巨人対決も人気を博しました。ボボ・ブラジルとの黒人レスラー同士の抗争も話題を呼びました。

1980年代に入ると、地元ルイジアナを拠点に活動。MSWAを主戦場に、1980年にはブルーザー・ブロディと組んでNWAセントラル・ステーツ・タッグ王座を獲得。同年には全日本プロレスにも来日し、ジャイアント馬場&ジャンボ鶴田のインターナショナル・タッグ王座に挑戦しました。

古傷の膝の悪化により1986年に引退。その後はWWFでカラー・コメンテーターを務め、ベビーフェイスとして活躍しました。晩年は牧師として活動し、1995年にはWWE殿堂入りを果たしました。2007年3月10日、結腸癌のため68歳で死去。生前、ジョージ・W・ブッシュ大統領とも親交があったことで知られています。

得意技と獲得タイトル

ラッドは、カウンターキック（スパイダーキック）、ネック・ハンギング・ツリー、ショルダー・ブロック、ドロップキックなど、多彩な技を駆使しました。特に、スリーパーホールドを受けた際に、長い腕を激しく振り回すアクションは、巨大なクモの断末魔のようだと評され、観客を魅了しました。

彼は、WWA世界タッグ王座、NWAテキサス・ヘビー級王座、NWAアメリカス・ヘビー級王座、NWF世界ヘビー級王座、WWA世界ヘビー級王座など、数々のタイトルを獲得。WWE殿堂、WCW殿堂、NWA殿堂入りを果たすなど、プロレス界に大きな足跡を残しました。

アーニー・ラッドは、アメリカンフットボールとプロレスの両分野で卓越した才能を発揮した稀有な存在でした。その圧倒的な存在感、そして人間味あふれるキャラクターは、多くのファンに長く記憶されています。

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