イオアニス・メタクサス

イオアニス・メタクサス：ギリシャの軍人、政治家、そして独裁者

イオアニス・メタクサス（1871年4月12日 - 1941年1月29日）は、ギリシャ王国の政治家であり、軍人でした。首相としてギリシャを統治し、その生涯は激動の時代を映し出しています。

軍人としてのキャリア

1871年、イタキ島で生まれたメタクサスは、軍人の道を選びました。1897年の希土戦争で初陣を飾り、テッサロニキ戦線に従軍。その後、ドイツ留学を経て参謀本部に加わり、ギリシャ陸軍の近代化に貢献しました。1913年には参謀長に任命され、将官に昇進しています。

第一次世界大戦が勃発すると、王党派であったメタクサスは、コンスタンティノス1世国王を補佐し、参戦に強く反対しました。しかし、連合国支持派の首相、エレフテリオス・ヴェニゼロスとの対立が激化。ヴェニゼロスはガリポリ戦役への協力を拒否されると辞任し、政局は混乱します。1915年の選挙で勝利したヴェニゼロスは軍を動員しましたが、国王によって命令は取り消されました。この結果、軍や民衆の間に国王への不満が高まり、1916年にはヴェニゼロス派が反乱を起こしました。ヴェニゼロス派は連合国の支援を受け、国土の大部分を制圧し、ギリシャは連合国側として参戦しました。1917年には国王は亡命し、ヴェニゼロスは臨時政府の首相として、同盟国への宣戦布告を行いました。

政治家としての台頭と独裁

メタクサスは国王と共にギリシャを離れ、1920年まで海外で過ごしました。1922年に君主制が廃止されると、政治家としての道を歩み始め、自由言論党を創設しました。1935年に王政が復活し、ゲオルギオス2世が即位すると、政治的混乱の中でメタクサスの立場が大きく変化します。

1935年の総選挙では、左右両派の対立が激化し、さらにギリシャ共産党が議席を獲得するなど、国内は不安定な状況でした。この状況を受け、国王は当時陸軍相であった反共主義者のメタクサスを暫定的な首相に任命しました。1936年6月になると、国内の不安は増大し、メタクサスは非常事態宣言を発令。議会を停止し、憲法を無期限に無効化しました。そして同年8月には、独裁者として権力を確立しました。野党を非合法化し、その指導者たちを逮捕。15,000人以上を投獄または国外追放しました。言論も規制されましたが、それまでの不安定な政治体制に不満を持っていた国民からは、1938年のクレタ島での暴動を除き、大規模な抗議運動は起こりませんでした。

メタクサスは、労働者の賃上げや労働条件の改善、農民の借金モラトリアムを実施し、社会不安の解消を試みましたが、効果は限定的でした。国民は次第に左傾化しましたが、独裁政権への反抗には至りませんでした。

第二次世界大戦と最期

外交面において、メタクサスは複雑な状況に直面しました。国内統制のためにファシズムの手法を真似ながらも、伝統的な友好国であるイギリスとの関係を維持しようとしました。1939年に第二次世界大戦が始まると、メタクサスは中立を維持しようとしましたが、ムッソリーニ率いるイタリアは、ギリシャがイギリスに傾くのを恐れ、1940年にギリシャ国内におけるイタリア軍の自由行動権を要求する最後通牒を突きつけました。

10月28日、メタクサスはこれを拒否し、イタリアはギリシャに宣戦布告。メタクサスは巧みな防御戦術を展開し、イタリア軍の進撃を食い止め、イギリス軍の支援を得てアルバニア国境にまで戦線を押し戻すことに成功しました。しかし、戦いの最中の1941年1月29日、メタクサスは咽頭癌が悪化しアテネで死去しました。その後、アレクサンドロス・コリジスが後を継ぎましたが、ナチス・ドイツ軍の侵攻の前に自殺。4月29日にはアテネが占領され、国王と政府は海外に亡命しました。

関連項目

八月四日体制
ギリシャ内戦
バルカン戦線 (第二次世界大戦)
デモティキ

外部リンク

* メタクサス・プロジェクト

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