イギリス海軍予備員

イギリス海軍予備員 (Royal Naval Reserve: RNR) の歴史と役割

イギリス海軍予備員（RNR）は、イギリス海軍の志願兵による予備役部隊です。1859年の創設以来、イギリス海軍の重要な支えとして、数々の紛争や戦争においてその力を発揮してきました。本稿では、RNRの歴史、組織、著名なメンバー、そしてその役割の変遷について詳細に解説します。

RNRの創設と初期の活動

RNRは、当初はプロの商船船員や漁船乗組員を対象とした予備役制度として設立されました。1903年に設立されたイギリス海軍志願予備員（RNVR）とは異なる性質を持ち、兵員のみで構成されていました。しかし1862年には士官の訓練と補充も含まれるようになり、独特の階級章を着用するようになりました。

主要港には訓練船が配置され、海員は年間1ヶ月間の訓練を受けました。士官は、艦隊の大型艦で1年間の乗艦訓練を行い、実戦経験を積みました。RNRは、海軍本部と商務省の共同管理下に置かれ、海軍予備員司令官が作戦指揮を執っていました。1910年にはトロール船部門が設立され、漁師を対象とした掃海艇運用訓練も行われるようになりました。

ボーア戦争や義和団の乱など、数々の紛争においてRNRは活躍し、その専門技術と航海術は高く評価されました。第一次世界大戦前には、多くのRNR士官が正規海軍士官に転身しています。

第一次世界大戦におけるRNR

第一次世界大戦勃発時、RNRは3万人の将兵を擁していました。多くの将兵が駆逐艦、潜水艦、特設巡洋艦などに乗り組み、激戦を経験しました。RNR（T）部隊の漁師たちはトロール船を掃海艇として運用し、機雷掃討作戦に従事しました。また、航空隊に所属して航空機や飛行船に搭乗する者もいました。沿岸防備や塹壕戦に参加した将兵も少なくありませんでした。

RNRは数の上ではRNやRNVRに劣りましたが、12個のヴィクトリア十字章を受章するなど、卓越した戦功を挙げました。

第二次世界大戦におけるRNR

第二次世界大戦においても、RNRは重要な役割を果たしました。RNR士官は駆逐艦、フリゲート、潜水艦など様々な艦艇で勤務し、護送船団の指揮官を務める者もいました。再び多くの戦功を挙げ、4個のヴィクトリア十字章を受章しています。

第二次世界大戦当時、RNVRは士官の主要な供給源となっていましたが、RNRは兵士の供給源としては衰えていました。RNVRのメンバーは特徴的な袖章を着用していたため、「ウェイビー・ネイビー」と呼ばれていました。

RNVRとの統合以後

1958年、RNRはRNVRと統合されました。100年以上にわたる歴史を持つ独立した予備役組織としてのRNRは、その役割を終えました。統合後も、RNRはイギリス海軍の重要な一部として、様々な任務に就き続けています。しかし、防衛計画の見直しに伴い、組織規模の増減や任務の変更を繰り返しました。

近年では、フルタイム予備員としてアフガニスタンや中東など、世界各地に派遣され、実戦任務に就く将兵も増加しています。制服の特別な標識も廃止されました。

RNRの組織と著名なメンバー

現在のRNRは14の組織と6つの付属組織から成り立っています。訓練施設は、HMSスコティア（ロサイス）など、各地に点在しています。大学海軍ユニットもRNRの一部です。

RNRには、多くの著名人が所属していました。サー・アーネスト・シャックルトン、チャールズ・ライトーラーなど、探検家やタイタニックの乗組員も含まれています。

RNVRと著名なメンバー

RNVRにも、多くの著名人が所属していました。ライオネル・クラブ、A・J・クローニン、サー・ローレンス・オリヴィエ、イアン・フレミングなどがその例です。架空の人物では、ジェームズ・ボンドもRNVR中佐として知られています。

イギリス連邦諸国の海軍予備員

RNRと同様の組織は、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなど、イギリス連邦諸国にも存在しています。

まとめ

イギリス海軍予備員は、長きにわたりイギリス海軍の重要な一部として、その役割を果たしてきました。これからも、その伝統と経験を活かし、イギリス海軍の防衛に貢献していくことでしょう。

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