イタリア国鉄ETR600電車

イタリア国鉄ETR600電車：高速鉄道の進化

イタリア国鉄ETR600電車（ETR 600）は、フランスのアルストム社が開発したペンドリーノシリーズに属する高速鉄道車両です。この車両は、車体傾斜式を採用しており、カーブ区間でも高速走行を可能にしています。ペンドリーノシリーズの第3世代として、2005年から開発が開始され、従来のモデルからデザインやサービス設備が大幅に刷新されています。特に、旅客へのブランド戦略を重視した外観と内装の改善が特徴的です。

性能と特徴

ETR600は、ほぼ同型のETR610（Cisalpino Due）とは異なり、スイスやドイツへの乗り入れに対応した電気方式や信号方式には対応していません。しかし、動力装置や機器の信頼性を高めるため、冗長性が向上しており、インターオペラビリティ（相互運用性）を管理する新しい規則に準拠して製造されています。2007年からは試験走行が開始され、その性能が確認されました。

編成は7両（M+M+T'+T+T+M+M）で構成され、MMTの3両1ユニットとして運用されます。M車にはコンバータ/インバータ（CI）と主電動機が2台搭載されており、T車には集電装置と主変圧器が搭載されています。1台のCIが2台の主電動機を制御するシステムを採用しています。また、ヨーロッパ技術仕様書（TSI）で規定されたアベイラビリティ（可用性）を満たすため、電動車1両が故障しても運行に支障がないように設計されています。さらに、編成中の4台の補助電源装置のうち2台が故障した場合でも、7台のバッテリーでバックアップするシステムが備えられています。車体傾斜機構は電気油圧システムで台車内に組み込まれており、集電装置は台車とリンクすることで、傾斜時にも位置が補正される仕組みになっています。

車体は、アルミダブルスキン構造を採用しており、衝突事故時の乗客への被害を最小限に抑える構造となっています。この構造もTSIの基準を満たしています。冷房装置は、トンネル通過時の気圧変化に対応するため、屋根上に2台搭載されています。通信システムには、ヨーロッパ標準のGSM-Rが採用され、車内伝送にはW-LANが使用されています。

運用

2008年12月の冬ダイヤ改正で、ミラノ・ボローニャ間の高速新線が開業した際に、ETR600が投入され、運行が開始されました。それまで速達サービスを担っていたETR485とともに、「フレッチャルジェント」（銀の矢）という愛称が与えられました。最高速度300km/hで、ユーロスター・イタリア・アルタ・ヴェロチタ（Eurostar Italia Alta Velocità）の最速達列車として運用されているETR500「フレッチャロッサ」（赤い矢）とともに、イタリアの主要都市間を結ぶ高速輸送を担っています。また、中国鉄路高速のCRH5は、このETR600をベースに車幅を拡張し、5列座席としたモデルです。

事故

2023年12月10日、ボローニャ＝アンコーナ線（Bologna–Ancona railway）のファエンツァ付近で、ETR600型第7編成が信号待ちをしていたカラバッジョに追突する事故が発生しました。

まとめ

イタリア国鉄ETR600電車は、その先進的な技術と快適性で、イタリアの高速鉄道輸送を支える重要な役割を担っています。ペンドリーノシリーズの進化を体現する車両として、今後もその活躍が期待されます。

ギャラリー

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脚注・参考文献

外部リンク：アルストム社による新型ペンドリーノの紹介
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