イブラヒム・トラオレ (政治家)

イブラヒム・トラオレ：ブルキナファソの暫定大統領

イブラヒム・トラオレ（Ibrahim Traoré, 1988年3月14日 - ）は、ブルキナファソの軍人であり、同国の暫定大統領です。2022年9月30日に発生したクーデターを指揮し、当時の暫定大統領ポール＝アンリ・サンダオゴ・ダミバを辞任に追い込みました。2024年5月26日には、さらに5年間の暫定大統領に選出されています。

生涯

前半生

1988年にムフン県ボンドクイで生まれ、初等教育を受けた後、ボボ・ディウラッソの高校に通い、ワガドゥグー大学（ジョゼフ・キ＝ゼルボ大学）で学びました。

2010年にブルキナファソ軍に入隊し、徐々に昇格を続け、2014年に中尉、2020年に大尉となりました。2014年には国連軍の一員として、マリ共和国にMINUSMAの兵士として派遣されています。

権力を手にするまで

ブルキナファソ国内での反乱鎮圧にも従事し、2022年1月のクーデターでは、ポール＝アンリ・サンダオゴ・ダミバ率いる反乱軍として参戦。「安全保障と復権のための愛国運動」軍政をもたらした陸軍将校グループの一員としてクーデターを成功させました。2022年3月からは、カヤの砲兵連隊長を務めています。

2019年に創設された対テロ部隊「コブラ」特殊部隊との関係については議論がありますが、BBC、アルジャジーラなどの情報源は、彼がこの部隊に所属していたことがあると報道しています。一方で、ニュース誌Jeune Afriqueは、彼が「コブラ」と関係したことはないと報じています。

2022年1月のクーデターの支持者の多くは、ジハード主義者の反乱を封じ込められないダミバの政治運営に不満を抱いていました。トラオレは、ダミバにジハード主義者の反乱を抑えるよう「再注力」させようとしたものの、彼の野望が目標から逸れていたため、最終的に彼を打倒することを選んだと主張しています。状況に対する不満は、前線で反乱軍と戦った若い将校の間で特に高かったとされています。

2022年9月30日にクーデターが勃発したとき、トラオレはまだ大尉の階級にありました。この作戦は「コブラ」ユニットの全面協力によって実行され、クーデターの直後、トラオレは自らを「安全と回復のための愛国運動」の新代表であると宣言しました。

暫定大統領として

2022年10月6日、トラオレはダミバを辞任に追い込み、国外追放させました。同時に、自身が「国家元首、軍の最高責任者」として暫定大統領の地位に就き、2024年7月に民主的な選挙を実施することを約束しました。

2023年2月、トラオレ政権は、ブルキナファソの反政府勢力との戦闘を支援していたフランス軍をブルキナファソから追放しました。その後、トラオレは「win-winのパートナーシップを望んでいるので、他の地平線に目を向けたい」と述べ、ブルキナファソの国際的パートナーシップの多様化を支持しました。

トラオレ政府はマリ共和国との連邦の創設への支持を表明し、両国でギニアを招待しました。この3カ国はいずれも軍の統治下にあり、連邦創設が実現すれば軍事クーデターによる軍事政権が支配する最大の国となる可能性があります。

2023年4月には、反政府勢力が攻撃を加速しているとして、軍を支援するよう住民の「総動員」を宣言しました。2023年5月、トラオレは2024年に予定されている民政の回復に疑問を呈し、反政府勢力を押し戻し治安状況が改善されない限り民主選挙は実施できないと語りました。2024年5月、治安悪化を理由に民政移行は2029年7月に延期され、トラオレは移行時のいかなる選挙にも立候補できるよう明言されました。

ロシアとの関係

ロイター通信やニューヨーク・タイムズによると、トラオレは反仏・親ロシア的な見解を表明していたことから、ロシアの傭兵組織ワグネル・グループとの関係が疑われていました。トラオレが首都ワガドゥグーに入ると、支持者たちは歓声を上げ、中にはロシア国旗を振っている者もいました。

ガーナ政府は、トラオレがクーデター後にワグネル・グループと協力し始め、ジハード主義の反乱軍に対して傭兵を参加させたと主張しました。これに対し、トラオレは「我々のワグネルはVDP（国土防衛義勇軍）」であると否定しました。

2023年7月、ロシア・アフリカ首脳会議後、トラオレは自国の国民はロシアを支持していると述べ、1992年に閉鎖されたロシア大使館の再開を決定したことを伝えました。

ル・モンド紙は、「トラオレ政権は当面の間、ジハード主義者との戦いに自国の軍隊を使うことを好んでいるようだ」とし、ワグネルに助けを求めていないとの見方を報道しています。

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